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サーニャ「もっとみんなと仲良くなりたい…」

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) :2012/11/18(日) 02:22:36.62 ID:kvwXeYNc0



    ※劇場版終了後の設定になるんで、一応ネタバレ注意





    まだ薄暗い中、目が覚める。
    時計を見ると、午前4時を過ぎた所だった。
    普段なら、夜間哨戒の任務を終えて基地に戻ってくる頃。
    夜型の生活サイクルにすっかり慣れてしまって、体内時計がズレてしまっているみたい。
    坂本少佐なら、もう起き出して朝の訓練をしているのかもしれないけど。

    ここはサン・トロン基地。
    ミーナ中佐の宣言によって501統合戦闘航空団を再結成した私たちは、
    ライン川にほど近いこの基地へ、しばらく身を寄せることになった。
    "カールスラントでネウロイの動きあり" と聞いたバルクホルン大尉は、
    すぐにでも祖国へ飛んで行きたがっていたけれど、
    前回のネウロイの攻撃の被害は想像以上に大きく、
    さらに通信妨害によって基地間の連携がガタガタになってしまい、
    未だに連絡が取れない部隊も少なくないという混乱が続いている。
    現在の私たちは、通信網が回復するまで身動きが取れない状態だった。

    ベッドから降りてカーテンを開くと、朝日がうっすらと姿を現し始めた空の上に、
    こちらへ向かって飛んでくる一つの人影が見えた。


    「ハイデマリーさん…」


    すっかり目が覚めてしまっていた私は、彼女を迎えに行くことにした。


2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) :2012/11/18(日) 02:40:32.71 ID:kvwXeYNc0


    真っ暗なハンガーでハイデマリーさんを待っていると、
    私に気づいた彼女は、微笑んでこちらに手を振った。


    「おはようございます、ハイデマリーさん」

    「おはようございます、サーニャさん。 わざわざ迎えに来てくれたんですか?」

    「目が覚めてしまって…」

    「職業病、ですね」


    ふふ、とハイデマリーさんは笑った。


    ハイデマリー・W・シュナウファー少佐。
    世界でも最高のナイトウィッチと呼ばれる、夜間戦闘のスペシャリスト。
    以前から、魔道アンテナによる通信でたびたび話す機会があり、
    今回、サン・トロン基地に滞在していた彼女と合同でネウロイと戦った。
    一度会ってみたいとは思っていたけど、思いがけない形でそれが果たされたことになる。


    「せっかくですから、朝食まで少しお話しませんか?」


    手馴れた様子でストライカーを脱ぎ、格納すると、ハイデマリーさんが言った。


    「それじゃ、よかったら私の部屋で…」

    「では、お言葉に甘えて」


3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) :2012/11/18(日) 03:09:23.67 ID:kvwXeYNc0


    ウィッチでも、やっぱり夜間飛行は体が冷える。
    食堂に寄ってから、暖かいお茶を淹れることにした。


    「ありがとうございます。 サーニャさん」

    「リーネさんなら、もっとおいしいお茶を淹れられるんですが…」

    「リーネさん?」

    「リネット・ビショップ軍曹です。 リーネさんの淹れてくれる紅茶は、とてもおいしくて…
     お菓子作りもお得意なんです」

    「そうなんですか。 そういえば彼女は、ブリタニア出身でしたね」


    そんなことを話しながら、部屋まで戻ってきた。
    ドアを開き、ハイデマリーさんを招き入れる。


    「お邪魔します」

    「なんにもないですけど…」


    部屋の中は、簡素なベッドに小さなテーブルと椅子が2つ。
    少し大きめの収納棚と、


    「…あれは?」

    「ニャーペン…いえ、ネコペンギンです」

    「…かわいいですね」

    「抱きますか?」

    「是非」


    彼女にニャーペンを手渡し、椅子を勧める。


    「…いいですね。 暖かいです」


    ニャーペンを抱きしめて、お茶を飲みながら、そんなことを言う。
    暖かいのは、お茶なのかニャーペンなのか少し気になったけれど、
    とても幸せそうなのでそっとしておくことにした。


5 :◆DGmY9eMi.E [sage]:2012/11/18(日) 03:47:28.06 ID:kvwXeYNc0


    「サーニャさん、部屋のベッドは体に合いませんか?」


    しばらくして、
    お茶をすっかり空にしたハイデマリーさんが、こちらを見て言った。


    「いえ、そんなことないです」

    「そうですか。 あまり良く眠れていないみたいなので」

    「ベッドのせいじゃありません。
     さっき言った通り、夜型のくせがなかなか抜けなくて…」


    体内時計の管理はナイトウィッチにとって重要な仕事だけど、
    私は、生活リズムの調整がちょっと苦手だった。
    そのせいで、訓練中やミーティング中に居眠りをしてしまうこともあって、
    坂本少佐やバルクホルン大尉によく怒られていたっけ…


    「…そうですか。 それならよかった」


    「それより、ここに来てからハイデマリーさんに夜間哨戒をまかせっきりで、
     なんだか悪い気がします」

    「それは気にしないでください。
     元々、この基地ではそれが私の仕事ですから」


    ファンファファンファファーンファーン ファンファファファファファファーン


    起床ラッパが鳴った。
    外を見ると、すっかり明るくなっている。


    「起床時間ですね。
     そろそろ私は部屋に戻って、今夜の夜間哨戒に備えます」

    「あ…ごめんなさい、こんな時間になってしまって。
     ハイデマリーさん、疲れているのに…」

    「いいえ、私もサーニャさんとお話したかったですから。
     指揮系統が回復すれば、501の皆さんとはしばらくお別れになってしまうでしょうし…」

    「できれば、平和な世界でゆっくりお話したかったです」

    「本当に…いつか、そんな世界が来るといいですね。 お茶、ご馳走様でした」


6 : ◆DGmY9eMi.E [sage]:2012/11/18(日) 04:18:43.79 ID:kvwXeYNc0


    部屋を出ようとドアの前に立ったハイデマリーさんが、
    ふと立ち止まってこちらを振り向いた。


    「…サーニャさん」

    「? どうしたんですか?」

    「ミーナ中佐が、サーニャさんのことを気にかけていました。
     いつもサーニャさんに夜間哨戒を任せてしまっていて、そのせいで他の皆と話す機会が減ってしまっている。
     本当は、サーニャさんも寂しいんじゃないか、と」

    「………」

    「これはナイトウィッチの宿命のようなものですが…
     この基地に居る間は、サーニャさんがそれに縛られる必要はありません。
     普段話していない方と、お話してみるのもいいと思います」

    「…ハイデマリーさん。 ありがとうございます」

    「いい一日を。 サーニャさん」


    それだけ言い残すと、今度こそ彼女は部屋を出て行った。
    ドアが閉まってから 『お疲れ様でした』 と 『おやすみなさい』 を言い忘れたことに気がつく。


    『ハイデマリーさん、夜間哨戒お疲れ様でした。
     おやすみなさい。 それから、ありがとう』


    …501の皆とは、これで三度目の集合になる。
    これまでの戦いの中で、私にとって501のみんなは信頼できる仲間になっていて。
    本当は戦いは苦手だけど、みんなと一緒なら、どんな敵が相手でも怖くなっていた。
    でも確かに、ミーナ中佐やハイデマリーさんが言った通り、
    一緒に過ごした時間に比べて、みんなと話す機会が少なかったと思う。
    それは、きっとナイトウィッチだからというだけじゃなくて、
    私が積極的にみんなと話そうとしなかったから…


    『…みんなと、もっと仲良くなりたい』


    今日は、今まで話す機会の少なかった人と、話してみよう…


7 : ◆DGmY9eMi.E [sage]:2012/11/18(日) 04:49:47.88 ID:kvwXeYNc0



    AM6:30



    朝食をとりに、食堂にやってきた。


    「あっ、サーニャちゃん。 おはよー!」


    割烹着を着た芳佳ちゃんが、みんなに配膳しながら元気よく挨拶してくれる。
    それに気がつくと、芳佳ちゃんと一緒にお皿を運んでいるリーネさん、
    左奥に座っているミーナ中佐とバルクホルン大尉、
    その向かいに座っている坂本少佐とペリーヌさんも挨拶してくれた。
    私も、みんなに向かって挨拶を返す。


    「おはようございます」

    「おはようございますッ! サーニャ・V・リトヴャク中尉ッ!!」


    ガタッ!
    と、大きな音を立てて立ち上がりながら、下座に座っていた黒髪の少女が背筋をピンと伸ばして立ち上がる。
    …ちょっと驚いた。



    彼女は、服部静夏軍曹。

    ヘルウェティアへ留学する芳佳ちゃんの随行員として移動の途中、
    ガリアでネウロイの襲撃に遭って、彼女も501と合流した。
    結局、芳佳ちゃんは留学を中止してストライクウィッチーズに復隊してしまったので、
    服部さんもこの基地についてくる形になったみたい。
    …なぜか、ものすごく緊張しているみたいに見える。


    「うー…ハットリぃ、朝からでかい声出すなよぉ…」

    「うにゃー」


    目をこすりながら、シャーリーさんがルッキーニちゃんの手を引いて食堂に入ってきた。
    二人とも、とても眠そうだった。


    「す、すみません! …おはようございます。
     シャーロット・E・イェーガー大尉。 フランチェスカ・ルッキーニ少尉」

    「
はっはっは! 元気がいいのは結構なことだ!
     お前たちも眠そうにしてないで、少しは見習った方がいいぞ」


    坂本少佐も、しばらくはサン・トロン基地に滞在するみたい。
    なんでも、ライン川を強引に遡上させた大和を海に戻せなくなったとか。
    無茶の甲斐あって大和は大きな戦果を挙げていたけど、
    もうちょっと後先を考えて欲しい、って
    ミーナ中佐は頭を抱えてたっけ…


8 : ◆DGmY9eMi.E [sage]:2012/11/18(日) 05:34:54.04 ID:kvwXeYNc0

    「あれ? サーニャ、エイラはどうしたんだ?」


    左手前の椅子にルッキーニちゃんと座りながら、シャーリーさんが不思議そうな顔をする。


    「サーニャちゃん一人って、珍しいですよね」


    リーネさんも不思議な顔をする。
    …というより、服部さん以外の全員が、
    まるで "履こうとした靴の片方が見つからない" という感じの表情をしていた。
    そういえば、私が朝食に顔を出す時は、いつもエイラが迎えに来てくれてたんだった。


    「まだ寝てるのかも…」

    「まったく! エイラもか! この隊には寝起きの悪い者が多すぎるぞ!」

    「そうね…普段だったら、少しぐらいの遅れは問題ないのだけれど。
     今回は501の簡単なミーティングを兼ねているから、揃わないのは困るわね」


    バルクホルン大尉は憤慨した様子で、ミーナ中佐は困っている。 何だか懐かしい光景だった。
    でも実際、今の私たちは、言ってみれば居候の身分に近い。
    本来のミーナ中佐の性格であれば、食事をしながら重要なミーティングなんてしないはず。
    たぶん、ブリーフィングルームは一日中混乱状態で、私たちが使える状態じゃないってこと。


    「私、エイラを呼んできます」

    「お願いね。 …トゥルーデも」

    「…仕方ない。 ここを借りている客分としては、こんなことで時間を取るわけにいかないからな。
     氷水を浴びせてでもたたき起こして来よう」


    …少しハルトマンさんが心配になったけど、
    私は私でエイラの部屋で向かうことにした。
    少し強めにドアをノックする。


    「エイラ? エイラ、寝てるの? 起きて」

    「ウ、ウーン…サーニャ? ちょッと、待ッて…」


    部屋からくぐもった声と、ごそごそと着替える音がかすかに聞こえてきて、
    それから少しすると、軍服に着替えたエイラが顔を出した。


    「おはよう、エイラ。 今日の朝食はミーティングも一緒にするからって、ミーナ中佐が呼んでるわ」

    「ウン…」


    エイラはふらふらしながら歩き出した。
    …なんだか、まだ半分寝ているみたいだけど、大丈夫かしら…?
    考えてみれば、私に付き合って夜間哨戒に出ることが多いし、
    環境が変わったこともあって、エイラも疲れてるのかも…


9 : ◆DGmY9eMi.E [sage]:2012/11/18(日) 06:01:59.06 ID:kvwXeYNc0


    食堂に戻ると、バルクホルン大尉の隣でハルトマンさんがテーブルに突っ伏して眠っていた。


    「…ミーティングと言っても、こいつは戦闘のこと以外は耳の耳から左の耳に聞き流すからな。
     結局私が処理することになるんだ。 起きていても寝ていても変わらん」


    結局、起こすのを諦めて、担いで食堂まで連れてきたみたいだった。
    私とエイラが席に着くと、ミーナ中佐はまた頭を抱えながらも、
    今後の方針について簡潔な説明を行った。
    それによると、麻痺した通信系等が回復するまで、一週間はかかり、
    501に正式な辞令が出るのはそれ以降になるということだった。
    それまでは、サン・トロン基地と協力体制の上ネウロイの残党への警戒。
    訓練は、通常通り行う…ということ。


    「…エイラ、ちゃんと聞いてた?」

    「ウン…ナンテコトナイッテ…」


    半分閉じた目で、あらぬ方向を見ながら納豆をそのまま食むエイラ。
    …後でちゃんと説明しておこう。

    あ、そういえば…
    せっかくだから、誰かに話しかけてみようかな?

    誰と話そう…


    >>10



10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/11/18(日) 06:34:56.08 ID:pE4c7yYd0

    話の中でちょくちょく名前が挙がってるのでリーネちゃんから


11 : ◆DGmY9eMi.E [sage]:2012/11/18(日) 20:23:40.69 ID:kvwXeYNc0


    そういえば、リーネさんとはあまり会話したことがなかった気がする。
    話してみたいけど、なんて話しかければいいかな…
    迷いながらリーネさんを見つめていると、視線に気がついた彼女の方から話しかけてきた。


    「サーニャちゃん、どうかしました?」


    …えっと、どうしよう。


    「…あの…おいしいですね、このお茶」


    言葉が見つからなくて、特に意味のないことを言ってしまう。
    おいしいのは本当なんだけれど。


    「ふふ、ありがとう。 これはペリーヌさんのシャトーでとれたハーブティーなんですよ」

    「レモングラス。 消化を助ける作用があるので、食後に最適のハーブティーですわ」


    そういえば、リーネさんはペリーヌさんと一緒にガリア復興のお手伝いをしているんだっけ。
    そのペリーヌさんは、自分の給金をほとんど復興費用に当てたり、戦災孤児の保護をしているみたいだし…
    私は自分のことで精一杯なのに、二人ともすごい…
    なんてことを考えていると、会話が途切れてしまった。
    普段話さない人と話すのって、難しい…


12 : ◆DGmY9eMi.E [sage]:2012/11/18(日) 20:54:07.59 ID:kvwXeYNc0

    食事が済むと、エイラはそのままテーブルで眠ってしまったので、部屋まで送っていくことにした。
    なんだか、いつもと立場が逆のような気がする。
    昼間はエイラに迷惑をかけっぱなしだったかも…感謝しなきゃ。

    午前の訓練まではまだ時間があるけど、どうしようかな…
    と、考えながらあてどなく歩いていると、



    「さーにゃん!」



    「きゃっ」


    突然誰かに後ろから抱きつかれた。
    驚いて振り向くと、いたずらっぽい顔をしたハルトマンさんがそこにいた。
    さっきまでの姿が信じられないくらい元気いっぱいだ。


    「おはようございます、ハルトマンさん」

    「おはよ、さーにゃん。 なんか、昼間に会うの珍しいねー」


    ハルトマンさんとは、以前から結構話すことが多かったけど、やっぱり夜に会うことが多かった。
    こんな風に、私が一人でいる所に突然現れることが多かったんだけど…
    悩みを聞いてくれたり、心配してくれているんだと思う。


    「ところでさ。 さっきリーネに何か言いたいみたいだったけど、何か用事でもあったの?」

    「起きてたんですか?」


    どう見ても完全に寝ていたように見えたんだけど…
    ハルトマンさんは、時々信じられないくらい鋭い。


    「リーネさんに何か、ってわけじゃないんですが…」


13 : ◆DGmY9eMi.E [sage]:2012/11/18(日) 21:30:02.39 ID:kvwXeYNc0

    「なるほど。 ハイデマリーがねー」


    結局、今朝からの流れを一通り説明してしまった。
    なんだか、恥ずかしい相談をした気がするけど、
    ハルトマンさんは笑わずに聞いてくれた。
    腕組をして、うんうんうなづいているかと思ったら、


    「そうだね。 普段話をしない人と会話するのは難しいよ。
     お互いに気を使っちゃうし、相手にどこまで歩み寄っていいのかわからないから。
     だからって、そこで終わりにして、自分から距離を作っちゃいけない。
     何度も話すことで打ち解けてきて、相手だって心を開いてくれるはず」

    「もう一つ大事なことは、人間関係は一対一のものじゃない、ってことだ。
     相手には他に仲のいい相手もいるかもしれない。
     でもそれは、ポジティブに考えれば、友達の友達は友達ってこと。
     元々仲のいい友達を通せば、人間関係を広げやすいってことさ」


    唐突に口を開き、一気にまくしたてた。


    「…にしし。 これ、人の受け売りで、私の言葉じゃないんだけどね。
     私も、人付き合いがそんなに得意なわけじゃないからさ」


    そうは思わないけど…
    つまり、誰かと何度も話していれば仲良くなる…
    誰かと仲良くなれば、その相手の友達とも自然と仲良くなる…
    そういうことかな?


    「この隊にはさ、さーにゃんを嫌いな人なんて誰もいないよ。
     だから、変に構えずに、気楽に話しかければいいんじゃないかな?
     私が言えるのは、そんなとこかな」

    「ありがとうございます。 ハルトマンさん。
     …ところで、さっきのは誰の言葉なんですか?」

    「ああ、あれは昔の私の仲間で…


     伯爵…えっと…クルピンスキーっていう人の言葉なんだけど」

    聞き覚えのある名前だった。
    確か…


    「その方なら、知っています。
     ここに来る前にお世話になった、502部隊で…」

    「あ! そうだよ、さーにゃんとエイラって、502にいたんじゃん!
     うわ、懐かしいなー! 詳しく聞かせてよ! ロスマンは…」


14 : ◆DGmY9eMi.E [sage]:2012/11/18(日) 21:37:17.05 ID:kvwXeYNc0


    「こら、ハルトマン!」


    そこに、肩をいからせながらバルクホルン大尉がやってきた。


    「貴様、こんなところで油を売っていたのか!
     先ほどのミーティング、全く聞いていなかっただろう!
     少しはカールスラント軍人としての自覚を持ったらどうだ!
     次は我らが祖国のための戦いとなるのかもしれんのだぞ!
     これから改めて詳細な打ち合わせを…」

    「うわ、やっばーい。 ごめんさーにゃん、私逃げる。
     今度また、じっくり話を聞かせてね!」


    それだけ言い残すと、ハルトマンさんは疾風のように走り去って行った。
    その後を、バルクホルン大尉が追いかけていく。
    気がつくと、そこには呆然と立ち尽くす私一人になっていた。

    気がつけば、午前中の訓練の時間になっている。
    今日は射撃訓練だ。
    …ハルトマンさんから貰ったアドバイス、忘れないようにしよう。



    訓練場へ向かう道すがら、同じ方向へ向かって歩いていく人を見つけた。
    あそこにいるのは…


    >>15



15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/11/18(日) 21:46:38.39 ID:ZXS7iT2Ao

    坂本さんとペリーヌさん

    2人がダメならペリーヌさんで


16 : ◆DGmY9eMi.E [sage]:2012/11/18(日) 23:49:20.14 ID:kvwXeYNc0

    「坂本少佐、ペリーヌさん。 これから訓練ですか?」

    「おお、サーニャか。 お前も訓練か?
     ペリーヌが久しぶりに射撃訓練を見て欲しいというのでな」


    何も考えずに声をかけてから、しまった、と思った。
    …ペリーヌさんが坂本少佐に対して、どういう感情を持っているのか、私にもわかる。
    久しぶりの再開で、少佐と話すことを楽しみにしていたはず。
    ペリーヌさんは、落ち着かない様子で私と少佐を交互に見ている…


    「今の私に飛行訓練は無理だが、基礎体力と剣術、射撃の訓練は、今でも欠かしたことはない」


    …面倒見のいい少佐の性格から考えると、
    このままの流れだと 『お前も一緒にどうだ?』 と言い出す気がする。
    それはきっと、ペリーヌさんの望むところではないと思う…


    「私っ、先に行きますね。 少佐とペリーヌさんも、頑張ってください」

    「おっ? おお」


    強引に話を中断して、その場を立ち去ることにした。
    変に思われたかも…


    「…どうしたんだろう、急に慌てて」

    (…サーニャさん、すみません…)


17 : ◆DGmY9eMi.E [sage]:2012/11/19(月) 00:15:33.06 ID:Mofu6qf50



    訓練場には、既に何人か集まっていた。



    芳佳ちゃんに、ライフルの使い方を教えるリーネさん。
    バルクホルン大尉に、小言を言われながらMG42の調整をしているハルトマンさん。

    私が訓練場に入ると、間をおかずにシャーリーさんが入ってきた。
    ルッキーニちゃんはいないみたい…またどこかで昼寝でもしているのかしら?

    ミーナ中佐は、たぶん今頃通信班への指揮で手一杯。
    エイラはまだ来ていないみたい…まだ寝ているのかな。
    …さらに、よく見ると、なんだか目を輝かせた様子てみんなを見つめている服部さん。

    私はどうしようかな…


    >>18



18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/19(月) 00:33:37.59 ID:PMACSFnJ0

    シャーリーの所へ


19 : ◆DGmY9eMi.E [sage]:2012/11/19(月) 01:02:12.92 ID:Mofu6qf50


    シャーリーさんに声をかけてみることにした。


    「シャーリーさん。 ルッキーニちゃんは一緒じゃないんですか?」

    「ああ。 あいつ、訓練嫌いだからなぁ…多分どっかで寝てるんだろ。
     サーニャの方こそ、相棒はどうしたんだ?」

    「たぶん、エイラも寝ているんだと思います。
     一昨日、私とハイデマリーさんに付き合って夜間哨戒に出ていたから…」


    考えてみれば、ガリアでの戦いの疲れが残ったままの夜間哨戒。
    ナイトウィッチでも辛いのに、魔導針を持たないエイラには負担が大きかったんだと思う。


    「そうかぁ。 なんか、昼間にサーニャが一人っていうのは新鮮だよ」

    「あの、よかったら、訓練…一緒にどうですか?」

    「おっ、いいね。 一人でやるより張り合いあるしな!」


20 : ◆DGmY9eMi.E [sage]:2012/11/19(月) 01:53:00.71 ID:Mofu6qf50

    「お? MG42か。
     ま、さすがにここでフリーガー・ハマーをぶっ放すわけにはいかないもんな」


    そう言いながら、シャーリーさんは愛用のBARを引っ張り出した。
    射撃体勢を取ると、的に向かってリズミカルに弾を撃ち込んでいく。
    私もそれにならって、MG42を構えた。

    意外…と言うのは失礼だけど、シャーリーさんは、訓練や任務にはかなり真面目な方だ。
    与えられたメニューはしっかり消化するし、召集がかかれば一番に駆けつける。
    だけど、それ以外の時間は、自分の好きなことに思いっきり費やす。
    仕事もプライベートも楽しむ、オンオフの切り替えの早いリベリオンの人の気質が良く現れていると思う。


    「ふー…こんなもんか。
     しかし、サーニャがMG42使ってるとこあんまり見ないけど、結構使い慣れてるね」

    「定期的に射撃訓練はしています。
     シャーリーさんたちとは違う時間になってしまうことが多いけど…」


    MG42は、501でも愛用者が多い銃で、エイラも使っている。
    場合によっては、フリーガー・ハマーが使えない状況も考えられるから、一応扱えるようにはしてある。
    …とはいえ、的に正確に集弾させているシャーリーさんと比べると、見劣りしてしまうけど。


    「サーニャ、しばらくは夜間哨戒任務ないのかい?」

    「はい。 この基地の正式なナイトウィッチはハイデマリーさんだから…」

    「シュナウファーかぁ。 なんか、サーニャに似てるよな。
     やっぱ、同じナイトウィッチだと雰囲気も似てくるもんなのかな?」


    そうなのかな?
    自分ではよくわからないけど…


    「ま、訓練も終わったし、あたしはストライカーの整備でもしてくるよ。
     しばらくはサーニャと話す機会も増えそうだね。 じゃ、またな!」


    パパっと後片付けを済ませると、ひらひらと手を振ってシャーリーさんは訓練場を出て行った。
    他のみんなも、各々訓練を終えて引き上げていく。
    とりあえず、私も戻ろう…


21 : ◆DGmY9eMi.E [sage]:2012/11/19(月) 02:09:27.63 ID:Mofu6qf50


    基地に戻ると、簡単に昼食を済ませた。
    人の出入りが激しくて、のんびり食べていると迷惑になりそうだったから。
    食後、訓練までの時間は、みんなで集まってお茶を飲むことが多かったけど、
    この状況じゃ、そういうわけにもいかないと思う。
    みんなはどうしてるのかな?
    これからどうしようか…


    1、自室で休む
    2、談話室に行ってみる
    3、ハンガーへ行ってみる
    4、もう一度食堂へ行ってみる
    5、基地の周りを散策する


    >>22


22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/11/19(月) 02:42:58.47 ID:KFJPRiwMo

    5ばん


23 : ◆DGmY9eMi.E [sage]:2012/11/19(月) 23:54:03.74 ID:Mofu6qf50


    天気もいいし、少し基地の周りを散歩してみよう。
    私は裏手の緑地帯へ向かって歩いていった。

    この辺りは、ひと気がなくて静か。
    木々が風にざわめいていて、涼しげな空気が漂っている。
    なんだかホッとする…


    「むにゃむにゃむにゃ…」


    ぼーっとしていると、どこからか、猫のような声が聞こえてきた。
    辺りを見回してみると、少し背の高い木の枝の上で眠る、ルッキーニちゃんの姿を見つけた。
    こんなところにいたんだ…

    それにしても、よく落ちないなぁ…と、いつも感心する。
    少しでも寝返りを打てば、地面にまっさかさまだと思うんだけど…
    そんなことを考えながらルッキーニちゃんの寝顔を眺めていると、彼女が目を覚ました。


    「…んにゃ? あれ…サーニャ?」

    「あ、ごめんなさい。 起こしてしまったかしら?」

    「ううん。 そんなことないよー」


    そう言うと、ルッキーニちゃんはするりと枝にぶら下がり、
    そのまま華麗に地面に飛び降りた。 寝起きとは思えない軽業だ。


    「おなかすいちゃってさー。 サーニャはもう食べたの?」

    「ええ。 でも、もう二時を過ぎているから、食堂に誰もいないかも…」


24 : ◆DGmY9eMi.E [sage]:2012/11/20(火) 00:24:56.57 ID:6soMsrpX0

    「えー! そんなぁ…ゴハン食べれないの? あたし死んじゃうよ…」


    絶望的な顔をしたルッキーニちゃんが座り込むと、お腹の虫が盛大に鳴く。
    なんだかかわいそうになってきた…


    「…簡単なものでよければ、私が作ってあげようか?」

    「えっ、ほんと? やったーい!」


    ルッキーニちゃんはガバッと起き上がると、私の手を取った。
    そのまま食堂へと引きずられていく…



    ………



    「あまり時間がないから、簡単なものでいい?」

    「うん! サーニャ、よろしくー!」


    この時間にあまり重いものを食べると、午後の飛行訓練に差し支えそうだし…シチーを作ろう。
    スープ料理なら、満腹感もあるし。


    「ごっはんー♪ ごっはんー♪」


    上機嫌のルッキーニちゃんの歌を聴きながら、キャベツを刻む。
    ザワークラウトがあればよかったんだけど、さすがにこの基地にはなかった。
    沸騰した鍋に切った野菜と肉を入れていく。


    「なんだルッキーニ、ここにいたのか」

    「あ、シャーリー! どったのこんな時間に食堂に」

    「そりゃあたしのセリフだろ。 あたしはお前の声が聞こえたから来てみただけさ」

    「あたしはー、サーニャにゴハン作ってもらうんだー♪」

    「ほー、よかったなぁルッキーニ。
     って、もうすぐ訓練の時間だぞ。 サーニャに迷惑かけちゃダメだろー?」

    「だってさー…」


    シャーリーさんがやってきたみたいだった。
    調理室まで会話の内容が全部聞こえる賑やかさ。 相変わらず仲がいいみたい。
    キャベツは…うん、やわらかくなってる。
    仕上げに、サワークリームを入れて出来上がり。


    「お待たせ、ルッキーニちゃん」

    「おー! ゴハンがキター!
     いただきまーす! ずびー、ふはふは…」

    「悪いなぁ、サーニャ。 訓練前にさ」


    シャーリーさんが謝ることじゃないと思うんだけど、
    実質的にシャーリーさんはルッキーニちゃんの保護者になっている。
    なんとなく責任を感じているみたいだった。


    「特に他に用事があったわけじゃないから。 気にしないでください」


25 : ◆DGmY9eMi.E [sage]:2012/11/20(火) 00:55:33.39 ID:6soMsrpX0

    「そっか。 …しかし、うまそうだな」


    ルッキーニちゃんは、がつがつと野菜を頬張っている。
    子供は野菜嫌いが多いけど、ルッキーニちゃんは特に好き嫌いをしない。
    国によって、食文化の違いというのもあったりするのだけど、
    彼女は大抵のものは喜んで食べてくれる。
    芳佳ちゃんも、おいしそうに食べてくれて嬉しいって、前に言ってたっけ。


    「少し残りがありますけど、シャーリーさんも食べますか?」

    「いいのか? じゃあ、ご馳走になるよ」


    なんとなくこうなる気がしていた。
    少しだけ多めに作っておいてよかった。


    「いただきます。
     …うん、うまい。 落ち着く味だ」

    「オラーシャでは、日常的に食べるスープなんです」

    「こういうのが、故郷の味って感じなんだろうな。
     リベリオンには、こういう料理ってあんまりないからねぇ…羨ましい気がするよ」


    しばらく、食堂にはスープをすする音だけが響いていた。



    ………



    「ふー、食った食った」

    「うーん、スープだけだとちょっとものたんない」

    「あのなぁルッキーニ。 もうすぐ飛行訓練の時間だぞ。
     腹を重たくして空なんか飛んだら、とんでもないことになるだろ」

    「あ、そっかー。 ありがと、サーニャ」

    「ごちそうさま、サーニャ。 ほらルッキーニ、後片付けするぞ」

    「はーい」


    三人で後片付けをしてから、食堂を出る。
    訓練の時間までそれほど間がなかったので、そのまま揃ってハンガーに向かうことにした。


26 : ◆DGmY9eMi.E [sage]:2012/11/20(火) 01:23:15.70 ID:6soMsrpX0


    訓練の中でも、ウィッチにとって飛行訓練は一番重要な訓練とされている。
    ストライカーの制御は、とても難しいもので、
    自転車の運転みたいに、一度乗れるようになりさえすれば、体が覚えてくれる…というものじゃない。
    実際、以前ロマーニャでの訓練で、
    その時ブランク期間のあった芳佳ちゃん、リーネさん、ペリーヌさんがとても苦労していた。
    猛スピードで複雑な軌道を描いて飛び回る必要があるのだから、
    普段地上で生活している人間にはかなり無理な能力を求められている、ということなのだと思う。

    私たちが到着する頃、ハンガーには、もうほとんどの隊員が集まっていた。
    やっぱりミーナ中佐の姿は見られないけど、他は全員かな?
    エイラも今度はちゃんと参加しているみたいだった。


    「よし、全員集まったな。 ミーナの手が空かないので、代理として私が監督を務めさせてもらう。
     バルクホルン、補佐を頼むぞ」

    「心得た」


    坂本少佐とバルクホルン大尉が、皆の一歩手前に出て説明を始める。


    「今日は編隊飛行の訓練を行う。
     最も基本的な二人一組のロッテの形で順番に行うが、組み合わせはこちらで決めさせてもらう。
     まず一番手、サーニャ」

    「…はい」


    来たばかりの所を指名されて、ちょっと緊張する。
    ロッテの相手は誰になるんだろう?


    「もう一人は…>>27!」


27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/20(火) 16:09:37.48 ID:y47q/jeIO

    バルクホルンさん

28 : ◆DGmY9eMi.E [sage]:2012/11/20(火) 21:41:21.74 ID:6soMsrpX0

    「バルクホルン!」

    「了解だ」


    バルクホルン大尉…任務に関しては、501で最も厳しい人。
    なんだかますます緊張してきた…でも、これをチャンスだと思わなきゃ。
    大尉とは、特に話す機会が少ないし…


    「二組目は、ハルトマン、ルッキーニ!
     三組目は、シャーリー、ペリーヌ!
     四組目は、エイラ、リーネだ!」

    「今後の作戦では、これまで以上の激戦が予測される。
     そこで、様々な組み合わせの連携の強化が必須となるだろう。
     今回の訓練は、その一環となる」

    坂本少佐が組み分けを発表すると、バルクホルン大尉がそれを補足した。

    「あ、あの…坂本さん。 私はどうすれば?」


    名前の挙がらなかった芳佳ちゃんが、おずおずと手を挙げる。
    それを見た坂本少佐は、一瞬にやりと笑って言った。


    「うむ…五組目。 宮藤、お前は服部と飛んでもらう」


    「ええっ!?」


    これに驚いたのは服部さんだった。


    「…服部。 扶桑では上官の命令に対してそう答えるのが礼儀なのか?」


    バルクホルン大尉がたしなめると、服部さんは全身を緊張させながら慌てて否定する。


    「いえ! 失礼しました! 任務了解であります!」

    「わかりました。 静夏ちゃん、よろしくね」

    「は、はいっ!」


    (新兵だから当然ではあるが…服部は、プレッシャーに弱い所がある。
     素質には光るものがあるからな。 必要なのは場慣れだ。
     それに宮藤…あいつは、長機を務めた経験がなかったはずだ。
     あいつも、今や少尉。 この機会に自分がもう新兵ではないと自覚してもらわねばならん)


29 : ◆DGmY9eMi.E [sage]:2012/11/20(火) 22:42:41.19 ID:6soMsrpX0

    「まずは基本。 エルロン・ロールからポイントロールし、シャンデルに繋ぐ。 更にそこから…」

    「…静夏ちゃん、えるろんろーるってなんだっけ?」

    「み、宮藤さん…!?」

    「ふんふん。 あー、くるくる横回りしながら飛ぶやつかぁ。 ポイントロールは?」

    「………宮藤さん」


    坂本少佐が淡々と説明を続けていく横で、芳佳ちゃんと服部さんが何やら打ち合わせをしている。
    私も後で、バルクホルン大尉と相談しなきゃ…


    「…以上が今日のメニューだ。 技術的には難しくないものが大半になる。
     ロッテ同士の呼吸を合わせることを意識してくれ。
     ではまず一組目、バルクホルン・サーニャチーム。 開始!」


    …そうだった、一組目だったんだった。
    じっくり相談する時間もない。


    「ではサーニャ、私が長機を務めよう。 合わせてくれ」

    「はい」


    その一言だけを交わして、ストライカーを履いた私たちは滑走路を飛び出す。
    ぐんぐん高度を上げて、瞬く間に地面が遠ざかっていく…



    ………



    「次は、インメルマルターンだな。 いけるか?」

    「はい」

    「よし、3カウントを合図にする。 準備してくれ」

    「了解。 3・2・1…」


    インカムを通して連絡を取りながら、次々と課題のマニューバをこなしていく。
    大尉は、厳しい人だけど…一緒に飛んでいると、私を気遣ってくれていることがよくわかる。
    飛び方も、教科書みたいに完璧で、危なげない。
    僚機からすると、とても安心できる長機だと思う。


    「これで最後だな。 ご苦労だった、サーニャ。 帰還しよう」

    「はい。 お疲れ様です、バルクホルン大尉」


30 : ◆DGmY9eMi.E [sage]:2012/11/20(火) 23:29:38.16 ID:6soMsrpX0

    「戻ってきたな。 バルクホルン、サーニャ。 お前たちは問題なしだ。
     では二組目、ハルトマン、ルッキーニチーム。 始めてくれ!」


    ハンガーに戻った私たちは、他の人たちの見学に移った。
    ハルトマンさんとルッキーニちゃんは…


    「…苦労しているようだな」


    ルッキーニちゃんがしばしば不可解な機動を描き、
    ハルトマンさんがなんとかそれに合わせている、という感じに見えた。


    「いつもは自分が振り回す立場だからな。 
     少しは私たちの苦労もわかるというものだろう。 あいつにはいい薬だ」


    バルクホルン大尉が、ため息をついた。


    「大尉とハルトマンさんは、凄いロッテだと思いますが…」


    事実、501でも要となる二人だった。
    もしかしたら、世界でも最高のロッテなんじゃないかと思う。


    「…確かに、あいつは空では頼りになるが、な。
     地上でも、その半分でもいいから頼りがいがあれば…」


    大尉が愚痴をこぼす。
    曰く、この基地に来て数日で自室をジャングルにした、とか。
    ここを引き払う時に、部屋の中をどう処理すればいいのか、とか。
    そんなことを話している間に、二人が戻ってくる。
    元気はつらつのルッキーニちゃんに対して、ハルトマンさんはへとへとになっていた。


    「たっだいまー!」

    「はぁ~…つかれた…」

    「…お前たちは、だいぶ問題があったな。
     ルッキーニ、私の説明をちゃんと聞いていたか? マニューバの順番がでたらめだったぞ」

    「えー? そんなことないよー」

    「…いや、あたしから見ても、あれはルッキーニのミスだった」

    「うじゃっ!? シャーリーひどーい!」


    ルッキーニちゃんたちがワイワイやっている横で、
    疲れ果てたハルトマンさんが眠り始めてしまったので、
    バルクホルン大尉は仕方なく彼女を部屋に連れて行った。
    そんなトラブルがありつつも、訓練は続き、つつがなく(?)終了した。
    シャーリーさんとペリーヌさん、エイラとリーネさんは特に問題がなかったみたいだけど、
    芳佳ちゃんと服部さんは、訓練の後、少佐に叱られていた。


    「…宮藤。 お前たちの通信内容をこちらでも聞いていたんだがな。
     僚機に逐一 『次はどうすればいいのかな?』 などと聞く長機があるか!」

    「あわわ…す、すみません」

    「服部、お前もお前だ! 最終的にお前の方が先頭を飛んでいたぞ!」

    「もっ、申し訳ありません!」


    居残りをさせられている二人を尻目に、訓練を終えた私たちは基地へと戻っていく…


31 : ◆DGmY9eMi.E [sage]:2012/11/20(火) 23:59:14.24 ID:6soMsrpX0


    午後の訓練の後は、汗を流すのがウィッチの定番になっている。
    ブリタニアやロマーニャの基地では、お風呂やサウナが設置されていたけど、
    この基地にはシャワールームがあるだけ。
    それが普通なんだけど、ちょっと寂しい気もする。
    シャワーだと、他のみんなと一緒に入ったりできないから…


    「サーニャ」


    体を洗ってシャワールームから出ると、エイラに声をかけられた。
    もうすっかり目は覚めているみたい。


    「エイラ。 今朝は疲れてるみたいだったけど、大丈夫?」

    「ウン。 少しだけ疲れが残ッてただけだから」


    そのままエイラと食堂に向かい、夕食をとる流れになった。
    昼時に比べると、少しは基地の様子も落ち着きを取り戻している。


    「サーニャは、今日は一日どうしてたんだ?」

    「あのね、今日は…」



    ………



    「あんまりない機会だから…もっとみんなと仲良くなりたいなって」

    「ウーン…ソッカ…」


    私が今日あったことを話すと、エイラは考え込んだ様子になった。


    (サーニャと話す時間が減りそうで寂しいけど…
     確かに昼間に他のやつらと話す機会なんて、そうそうないもんな。 応援してあげなきゃ)


    「じゃァさ。 私がタロットカードでサーニャを占ってやるよ」

    「えっ…」

    「ん? な、ナンダヨその顔」

    「だってエイラって、逆位置とかよくないカードばかり引くから…」

    「う…ソ、ソンナコトナイゾ!」

    「ふふ。 冗談よ、エイラ。 占ってくれる?」

    「か、からかうなんて、ひどいじゃないカ!」


    何だかんだで、エイラと話していると落ち着くな…


    そんなことを考えながら、占ってもらうために、私はエイラの部屋にお邪魔することにした。


32 : ◆DGmY9eMi.E [sage]:2012/11/21(水) 00:22:02.83 ID:fEWBSgdv0

    「じゃ、まずはサーニャのことから占うゾ」


    エイラはベルトポーチからいつも使っているタロットを取り出すと、
    手馴れた様子でカードを操り始めた。


    「サーニャを象徴するカードは… "女教皇" だ。
     やさしさ、繊細、清純を意味する…サーニャらしいカードだナ!」

    「逆位置だと、わがままとか、神経質って意味もあるけどね」

    「サーニャ、占いで悪い方向に考えるのはよくないゾ」


    言いながらエイラは、更にカードをめくっていく。


    「今のサーニャの状態を示すカードは… "魔術師" 正位置だ。
     このカードの意味するトコロは…」


    ちょっとドキドキする。


    「…ウーン。 正直な話、今日一日で大きく関係の変わッた相手ッてのは居ないナ。
     結構まんべんなく話したからッていうのもあるだろうケド」

    「そうなの…」


    ちょっとがっかりする。


    「まァ、このカードは可能性の象徴だからナ。 まだ始まッたばかりッてことなのカモ」


    これからの行動次第ってことかしら。
    といっても、いつまでこの基地にいられるのか、わからないけど…


33 : ◆DGmY9eMi.E [sage]:2012/11/21(水) 00:35:51.51 ID:fEWBSgdv0

    「次は、他のやつらのことも占ってみよう。 とはいっても、結構人数が多いからなァ…」

    「全員占っていたら、夜が明けちゃうね」

    「そうだナ。 サーニャが占って欲しい相手を選んでくれ。 【3人】 くらいなら大丈夫だ」


    【3人】 か…誰のことを占ってもらおうかな?


    占う対象は…
    エイラ、ハイデマリーさん、シャーリーさん、ルッキーニちゃん、ペリーヌさん、リーネさん。
    バルクホルン大尉、ハルトマンさん、芳佳ちゃん、坂本少佐、ミーナ中佐、服部さん…かな。


    「それじゃ…>>34のことを占ってくれる?」


34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/11/21(水) 07:24:38.66 ID:JP9FZAZto

    ハイデマリーで

35 :今日はこれだけ… ◆DGmY9eMi.E [sage]:2012/11/22(木) 21:45:03.33 ID:yRm9Q7i+0

    「エイラ、ハイデマリーさんのことを占って」

    「わかッた」

    (シュナウファー少佐か…確か前、サーニャが魔導針の通信で知り合った友達だって言ってたっけ。
     文通もしてるって言ってたし、ずいぶん仲が良さそうだな…もしかして、ライバルか!?)

    「…? エイラ、ウンウン唸ってどうしたの? もしかして…悪い結果?」

    「い、イヤ、なんでもないゾ。 えーと、シュナウファー少佐の象徴は "隠者" だ。
     慎重や思慮深さ、それに思いやりなんかを意味するんだ」

    「ハイデマリーさんらしいカードね」

    「状態は…教皇か。 サーニャに対する共感や、そこから来る思いやりなんかが表われてる。
     …いいやつなんだナ」


    共感…
    そういえば、ハイデマリーさんも私と同じ悩みを抱えてるみたいだった。
    それで私のことを心配してくれて…でも、本当は彼女だって寂しいのかもしれない。
    …この基地にいられるうちに、何かお礼ができるといいな。
    昼の間は無理だけど…夕方からなら、会えるかも。


    「…エヘン! シュナウファーの占いはこんなとこだナ!
     さあ、サーニャ! 後二人占えるゾ! 【誰か二人を指名】 してくれ!」


    私の思考を遮るように、エイラにせかされる。
    急にどうしたのかしら? まあ、あまり時間をとるのも悪いし、
    言われた通りに 【二人いっぺんに指名】 しよう。


    「えっと…>>36をお願い」


36
:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) :2012/11/22(木) 22:54:18.52 ID:Y9F8Luf+o

    シャーリーとバルクホルン


37 : ◆DGmY9eMi.E [sage]:2012/11/24(土) 11:50:05.56 ID:7WEmKkYS0

    「大尉コンビか…じゃ、先にシャーリーから占ッてみるよ」


    エイラは広がっていたタロットを丁寧に山に戻してから、また広げていく。
    カードを操る手元を見ると、かすかに魔翌力を放っているのがわかる。
    彼女の占いは固有魔法によるもので、タロットカードはその媒介にすぎない。
    遠い未来のことまではわからないらしいけど、
    それでも普通の占い師の予測に比べたエイラのそれは、信頼度が格段に高い。


    「シャーリーの象徴は、 "女帝" だナ。 繁栄、豊満、女性的魅力を意味する。
     見たまんまだ」


    途端に信頼が揺らぎそうになった。


    「…情熱とか、包容力とか、他にもあるでしょ?」

    「状態の方は… "女教皇" 正位置。 うーンと、普通みたいだ。」

    「何か、適当じゃない…?」

    「そ、そう言われてもナ…この場合の女教皇は、平常心の意味だから。
     とにかく、明日は特に問題なさそうだから、話せばそのまま仲良くなれる感じだと思う」

    「そう…わかったわ」


38 : ◆DGmY9eMi.E [sage]:2012/11/24(土) 12:23:44.49 ID:7WEmKkYS0

    「じゃ、最後。 バルクホルン大尉を占おう」


    なんだか疑わしくなってしまったけど…エイラは散らばったカードを再び束ね始める。
    その几帳面な様子を見ると、真面目に占ってくれていることは間違いないみたいだった。
    むしろ、よくない結果が出なかったことを喜ぶべきなのかしら…


    「大尉のカードは… "戦車" だ。 勝利や開放、突進力を意味する。
     逆位置だと焦りや暴走ッて意味もあるケド…。
     サーニャに対するカードは "魔術師" …逆位置だ。
     ウーン…これは消極的、ッて意味だろうな…
     嫌ッたり避けたりしてるわけじゃないケド、自分からは一歩退いてしまう。 そんな感じだ」

    「そう…」

    「まァ、不器用なバルクホルン大尉の場合、それはサーニャに限ッたことじゃないだろ?
     こんなもんだッて」


    …やっぱり、あまりよくない結果が出ると、少し落ち込む。
    エイラはああ言うけど…私は、バルクホルン大尉とも仲良くなれたらって思うから。

    焦り…
    そういえば、次の戦いはカールスラントになるかもしれないって、ミーナ中佐が言っていた。
    責任感の強いバルクホルン大尉のことだから、思いつめなければいいんだけど。


39 : ◆DGmY9eMi.E [sage]:2012/11/24(土) 13:07:27.68 ID:7WEmKkYS0

    「さて、これで3人占ったわけだケド…参考になッたか?」

    「ええ。 遅くまでありがとう、エイラ」

    「なんてことないッて」


    時計を見ると、もう消灯時間が近づいていた。 そろそろお暇しないと…
    夜間哨戒をしている時は、たまに寝ぼけてエイラの部屋で眠ってしまうことがあったけど、
    さすがに目が覚めている時にそれをするのはちょっと恥ずかしい。


    「なんだったら、毎日でも占ッてやるよ」

    「本当? エイラ、大変じゃない?」

    「遠慮すんなッて。 私にできるの、それくらいだしさ」

    「じゃ、この基地にいる間は、こうして寝る前に占ってくれると嬉しい」

    「わかッた。 いつまでこの基地にいられるのか、わかんないけど」


    そういえば、エイラは朝のミーナ隊長の話を聞いてなかったんだっけ…
    部屋を出る前に、そのことを説明しておこう。



    ………



    「ふーン。 じゃ、一週間くらいはここにいるんだナ」

    「明確な期間はわからないって言ってたけど、それくらいみたい」

    「そッか。 サウナがないのが不満だケド、メシはうまいしな」

    「芳佳ちゃんがいるもんね」


    コンコン


    「エイラ、いるか?」


    帰るタイミングを失って雑談の延長戦を続けていると、誰かがドアをノックした。
    この声は…


    「坂本少佐?」

    「なんだ、サーニャ。 エイラの部屋にいたのか。
     間もなく消灯時間になる。 自室に戻って明日に備えるように」

    「はい、わかりました」

    「エイラ、ちゃんといるな?」

    「いるゾー」

    「…点呼には、真面目に答えろ。
     まあいい、夜更かしをするなよ。 明日も早いぞ」


40 : ◆DGmY9eMi.E [sage]:2012/11/24(土) 13:25:35.84 ID:7WEmKkYS0


    見回りの坂本少佐が立ち去った後、私も自分の部屋に戻ってきた。
    いつもなら、静かな夜の空を飛んでいる時間。
    だけど、今日の私はくたくたに疲れていて、後はベッドに身を預けて眠るだけ。
    賑やかだった一日が終わる。


    『ハイデマリーさん…今頃、夜間哨戒かな…』

    『リーネさんとは…少しだけしか話せなかった。 もっとお話したいな…』

    『ペリーヌさんは…坂本少佐とお話できたかな…』

    『でも坂本少佐には…失礼なことしちゃったかも…』

    『シャーリーさんとは…一緒に訓練して…』

    『ルッキーニちゃんと一緒に…私のスープを飲んでくれたっけ』

    『バルクホルン大尉とは飛行訓練…任務以外のお話も、できるようになるといいな…』

    『エイラ…明日も…占って…くれるかな…』

    『…明日も…頑張ろう…』


    Zzzzzz


41 : ◆DGmY9eMi.E [sage]:2012/11/25(日) 20:04:17.99 ID:zp0wOn6m0

    ・・・・・・・・・・・

    ・・・・・・・・

    ・・・・・

    ・・・

    ・


    ぱぱーぱぱぱぱぱーんぱーんぱっぱぱっぱぱっぱぱーん


    「…ぅ…ん…」


    調子のいいラッパの歌声で目を覚ます。
    昨日よく眠れなかったこともあって、起床時間ぎりぎりまで熟睡してしまったみたいだった。
    ベッドから降りて、まず着替えを済ませる。 よく眠ったおかげか、体が軽く感じた。
    それはいいんだけど、あまり時間に余裕がない。
    大急ぎで顔を洗って歯を磨いて、寝ぐせを直していたら、もう朝食の時間。
    慌しい朝になってしまった。 明日からは、もうちょっと早起きしよう…

    反省しながら部屋を出ると、同時に部屋から出てきたエイラと目が合った。


    「サーニャ、おはよう」

    「おはよう、エイラ。 昨日は疲れてたみたいだったけど、もう平気なの?」

    「ウン、ちょッと眠いけど…大丈夫だ。 連日で寝ぼけてたら、隊長に怒られるしナ」


    エイラは普段からどことなく眠そうな口調だからわかりにくいけど、
    確かに昨日ほど酷い状態ではないみたいだった。
    とにかく、急いで食堂に向かわないと。
    私たちは、駆け足で部屋を離れた。


42 : ◆DGmY9eMi.E [sage]:2012/11/25(日) 20:37:43.05 ID:zp0wOn6m0


    食堂に到着する頃には、もうすっかり全員揃っていた。


    「すみません、遅くなりました」

    「うむ。 遅刻ではないが、軍隊は時間厳守が原則だ。
     お前たちも5分前行動を心がけねばならんぞ」


    バルクホルン大尉に軽く注意されつつ、エイラと並んで席に着く。
    昨日の朝食はミーティングを兼ねていたこともあって少し緊張感が漂っていたけど、
    今日は純粋に朝ごはんを食べるだけの穏やかな時間。
    みんなも思い思いに歓談しながら食事を楽しんでいるみたいだった。
    テーブルを見回すと、席がいくつかのグループに分けられていることに気がつく。

    難しい顔で何か話しているミーナ隊長とバルクホルン大尉。
    …それと、その隣で眠そうにじゃがいもの味噌汁をすすっているハルトマンさんのグループ。

    それとは対照的に、賑やかにご飯を食べているシャーリーさんとルッキーニちゃん。
    その二人におかわりをよそってあげている芳佳ちゃんとリーネさんのグループ。

    坂本少佐の向かいで居心地悪そうに箸を口に運んでいる服部さんに、
    何か声をかけているペリーヌさんのグループ。

    みんな、何の話をしているのかしら?


    …ちょっと、>>43たちが何を話しているか、耳を傾けてみようか…


43
:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/11/25(日) 20:40:59.32 ID:/oOweQ8Mo

    芳佳ちゃんとリーネさん


44 : ◆DGmY9eMi.E [sage]:2012/11/25(日) 21:35:45.35 ID:zp0wOn6m0

    「芳佳、おかわりー!」

    「はいはい、ちょっと待ってね」


    芳佳ちゃんが、ルッキーニちゃんにご飯をよそってあげているのが目に入った。
    ルッキーニちゃん…朝からよく食べるなぁ…
    私は、あんまりたくさん食べられないから、ちょっと羨ましい。


    「宮藤の作る料理を食べてると、501に戻ってきたんだなぁ…って実感するよ」

    「他の部隊だと、カンヅメしか食べられない時もあるもんねー」

    「芳佳ちゃん、本当にお料理得意だよね」

    「えへへ…みんなに喜んでもらえると、作った甲斐があります」

    「そういやあ、サーニャも料理得意なんだよな。 あんまり食べる機会ないけどさ」


    シャーリーさんに突然話を振られた。
    料理のことで褒められるとは思っていなくて、少し慌てる。


    「…芳佳ちゃんや、リーネさんほどじゃ…」

    「昨日サーニャが作ってくれたスープ、おいしかったー!」

    「そうそう、ありゃなかなかのもんだったよ。 謙遜すんなって」

    「ナ、ナニィ!? ちょッとその話詳しく聞かせろ!」


    リーネさんの淹れてくれたお茶を退屈そうにすすっていたエイラが、
    突然ガタッと立ち上がって気色ばんだ。


    「昨日、昼ゴハン食べそこねたら、サーニャがスープ作ってくれたの」

    「あたしもそこに偶然居合わせて、ご馳走になったんだ」


    すごむエイラを特に気にした様子もなく、二人はさらりと言った。
    それに対してエイラは、なぜか悔しそうにぐぬぬと呻いた。


    「くぅぅ…ずるいぞオマエら…私だって…」

    「へぇ、サーニャちゃんって料理得意なんだ。 私、食べたことないかも…」

    「芳佳ちゃんが来る前は、時々作ってくれてたよ。
     夜間哨戒が大変だから、やっぱり頻繁にってわけにはいかなかったけどね」


    芳佳ちゃんの疑問に、リーネさんが答える。
    そういえば、確かにその頃から501では料理をする機会が減った気がする。
    私も料理するのは嫌いじゃないんだけど…
    シャーリーさんの言う通り、芳佳ちゃんが作る料理の方が501の食事という感じになっていたし…


    「そうなんだぁ。 サーニャちゃん、よかったら今度私にも料理作ってくれる?
     オラーシャの料理って、あんまり知らないから、私も食べてみたい!」

    「…うん」

    「コラー! ずるいゾ宮藤!」

    「エイラ、意地悪言っちゃダメよ。 その時は、一緒に食べよう?」

    「う、ウン…サーニャがそう言うなら…」


    今度、芳佳ちゃんたちと一緒に料理するのもいいかも…
    食事の時間は、賑やかに過ぎて行った。


46
: ◆DGmY9eMi.E [sage]:2012/11/25(日) 21:56:40.40 ID:zp0wOn6m0


    今朝も基地の中は忙しく走り回る人が行き交っている。
    状況が落ち着くまでには、まだ時間がかかりそう…

    …ルッキーニちゃんたちの勢いにつられて、少し食べ過ぎた。
    午前中の訓練まで、まだ時間はあるけど…
    お腹を落ち着かせるために、私もちょっと運動した方がいいかもしれない。


    1、基地の中をぶらぶら歩く
    2、一足先に訓練場に向かう
    3、自室で一休み


    うーん、どうしよう?


    >>48


48
:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) :2012/11/25(日) 22:02:59.64 ID:HOe9RERio

    2


50 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/11/27(火) 19:28:38.40 ID:7WO2wgFC0


    さっきバルクホルン大尉にも注意されたし、早めに訓練場に向かっておこう。
    今日は基礎体力の訓練だったっけ…



    ………



    基地から少し離れた場所に、ちょっとしたグラウンドがあった。
    私たち全員が走り回っても窮屈じゃない程度には広々としている。
    その運動場を、ひとり丹念に整地している人の姿があった。


    「坂本少佐」

    「サーニャか。 ずいぶん早いな」

    「少佐こそ、こんな広い所を一人で整地なんて…」

    「なに、食後の腹ごなしついでさ。
     そもそも、私が改めて点検するまでもないとは思うが…万が一ということもある。
     訓練中に事故でも起きたら、本末転倒だからな」


    そう言いながら、レーキの柄をポンポンと叩いてみせる。
    少佐の訓練は厳しいけど…それは、部下を想うがため。
    実戦で何が起きても、生きて戻れるように…
    そんな想いから来ている厳しさなんだって、わかっている。

    …私も、グラウンドの整備を申し出てみることにした。
    少佐は、いつも通り笑いながら歓迎してくれる。

    いつも通り…
    それは少し違っていた。
    坂本少佐のトレードマークだった眼帯…今の彼女は、それを着けていない。
    ロマーニャでの戦いで魔力を失って、固有魔法の魔眼も使えなくなって。
    身に着ける必要がなくなったから。

    …ウィッチじゃ、なくなったから。

    坂本少佐の顔を見ていると、その事実が胸に突き刺さって…
    寂しい気持ちになる。


51 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/11/27(火) 20:07:25.33 ID:7WO2wgFC0

    「どうした、サーニャ? 私の顔に何かついているか?」


    少佐の顔をぶしつけに見つめているうちに、手が止まってしまっていた。


    「…すみません、なんでも…」

    「…逆、か。 私の顔に何もついていないから…か?」

    「っ………」


    私が考えていたことをずばり言い当てられて、言葉に詰まる。
    自分で思っている以上に、表情に出てしまっていたのかもしれない。


    「宮藤にも言われたよ。 『別の人みたい』 …だと。
     他の連中は気を遣っているのか何も言わなかったが…
     正直な所、私自身もまだ違和感があるくらいだからな」


    静かに笑う少佐に、私は何も言えなくなる。
    ウィッチが飛べなくなるということ。
    それは、音楽家が楽器を使えなくなること…
    画家が筆を握れなくなること…それに等しい。
    人一倍、空を愛していた彼女が受けた喪失感は…今の私には想像もつかない。


    「なあ、サーニャ」


    泣きそうな私に、少佐が優しく語りかけてくる。


    「確かに、私も寂しいという気持ちはある。
     お前たちとずっと一緒に飛んでいたいと…
     そう考えて、見苦しく足掻いていたこともあった。
     だが、先日の戦いで…わかったんだ」

    「ディジョンでの戦いで…?」

    「ああ。 お前たちを見て、な。
     …本当に、見事な戦いぶりだった。
     私が飛べなくなっても、お前たちが飛んでくれる。
     それも、きっと私よりもっと高く…そう感じたよ」

    「少佐…」

    「そんな顔をするな。
     飛行脚を履くことはなくなっても、私はまだまだストライクウィッチーズの一員のつもりだ。
     今までとは違う形になるだろうが、これからも私は私のやり方で戦っていく。
     お前たちと一緒にな」

    「…はい」


    本当に辛いのは自分のはずなのに…逆に私が励まされてしまった。
    にじんだ涙をぬぐって、顔をあげる。
    かげりのない笑顔を見せる、少佐の姿があった。


52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/11/27(火) 20:48:42.22 ID:7GJq5Pzuo

    少佐ぁ…


53 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/11/27(火) 20:49:42.81 ID:7WO2wgFC0


    「少佐ー!」


    遠くから叫ぶ声に振り向くと、
    こちらに向かって手を振りながら走ってくるペリーヌさんと服部さんの姿が見えた。


    「しょ、少佐…自ら、整地、作業、だ、なんて…
     い、言いつけてくだされば、私、が…」

    「ぺ、ペリーヌ、中尉の、言う通り、です…
     このような、雑務、下士官の、私の、仕事で…」


    ものすごい速さで駆けつけた二人は、息も絶え絶えに、
    それでも懸命に姿勢を正しながら坂本少佐に向き直る。


    「はっはっは! では、お前たちにも手伝ってもらおうか!」


    対する少佐は、すっかりいつもの調子に戻っていて、
    二人に予備のレーキを手渡していた。

    訓練の時間まで、あと少し。
    私も、もっと頑張らなくちゃ。



    ………



    とはいったものの、私は運動が得意な方じゃなかった。
    基礎訓練の中でも、一番基本的なトレーニングの持久走。
    身体的にも優れた人の集まる501のメンバーの中では、
    私は一番体力が低い方かもしれない…
    全く顔色を変えずに走るバルクホルン大尉や、
    全力疾走としか思えない速さで爆走するシャーリーさんを見ていると、
    身体の構造が私とは違っているんじゃないかと思えてくる。
    それでも整地したばかりのグラウンドを、必死に走る。

    しかし、なかなか気持ちに体はついてきてくれない。
    心臓が暴れ回り、肺が酸欠を訴え、足が悲鳴をあげる。
    だんだんとペースが落ちてくる…

    と、後ろを走っていた人が近づいてきた。
    このまま追い抜かれそうな感じ…誰だろう?

    少し振り向いてみると、そこに居たのは…


    >>54


54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/11/27(火) 20:59:20.91 ID:ree3dhpxo

    今日学んだこと
    整地に使うアレはレーキって言う


    あ、安価はペリーヌさんで



55 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/11/27(火) 22:22:18.59 ID:7WO2wgFC0

    「サーニャさん、飛ばしすぎじゃなくて? 顔色が悪いですわよ」


    後ろから走ってきたペリーヌさんが、横に並んだ。
    『大丈夫』 と答えようとしたけれど、それは声にならず、
    肺は乱れた呼吸を繰り返すだけだった。


    「少しペースを落としなさい。 無理をしすぎると、後に疲れを残すだけですわ」


    その言葉に従って、スピードを緩めることにする。
    私のように息切れを起こしているわけでもなく、
    それでも気を遣ってくれているのか、
    ペリーヌさんは距離を少し空けつつも、同じようにペースを落とした。
    それからは言葉もなく、ただただ、走る。



    ………



    訓練が終わると、体から一気に力が抜け、そのまま地面に座り込む。
    それは私に限った話じゃなく、他の大半の人も同じような感じみたいだった。
    やっぱり、坂本少佐の訓練は厳しい。
    噴き出す汗が全身にまとわりついて、下着までべたべたになっている…
    シャワーと着替えをしなきゃ…
    私は、ストライキを起こしている足を無理やり立ち上がらせて、
    シャワールームへとふらふら歩き出した。



    ………



    汗でべたつく髪を洗っていると、隣のボックスに人が入ってきた。


    「サーニャさん、大丈夫かしら? なんだか無茶をしていたようだったけれど」


    シャンプー中で目が見えないけど、これはペリーヌさんの声だ。
    なんだか、今日は不思議と気にかけてくれる気がする。


    「平気です。 少し張り切りすぎただけ…」

    「…そう」


    それきり、ペリーヌさんは何も言わなくなり、シャワーの流れる音だけが静かに響く。
    でも、ペリーヌさん…さっきから何か言いたそうにしているような…


    「あの…ペリーヌさん。
     もしかして、私に何かご用でしたか?」

    「えっ? いえ、用というわけではないのですが…」


    体を洗い終わった私は、シャワーを止めて言葉を待った。
    ペリーヌさんは、もごもごと言いにくそうにしていたけれど、
    しばらくすると、とつとつと口を開いた。


    「その…昨日は、あなたに気を遣わせてしまったんじゃないかと思って…ごめんなさい」

    「昨日…?」


    一瞬、何のことだかわからなくて、昨日一日の記憶を回想する。
    思い当たることといえば…


    「もしかして、昨日の訓練前の…?」

    「…ええ。 何だかサーニャさん、私の方を見て遠慮していたようでしたから」


    むしろ、私のほうが邪魔をしてしまったんじゃないかと思っていたんだけど…
    逆に、ペリーヌさんの方が気にしていたみたいだった。


    「いえ、私のほうこそ…」


    なんだか、お互いに遠慮しあってしまう。
    …ちょっと、気まずい。
    やがて、ペリーヌさんのボックスからもシャワーの音が止まると、
    彼女は私に軽く声をかけてから、シャワールームを出て行った。


56
: ◆DGmY9eMi.E [sage]:2012/11/27(火) 22:54:20.08 ID:7WO2wgFC0


    シャワールームを出て、着替え終わる頃には昼食の時間になっていた。
    食堂は昨日にも増して人ごみで溢れていて、まるで戦場のようだった。
    …実際に、戦場なんだけど。
    とにかく落ち着かない食事を終えて、早々に食堂から撤退する。

    …やっぱりさっきの訓練の疲れが残っているかも…
    午後の訓練まで、どこかで一休みした方がよさそう。
    どこに行く?


    1、自室
    2、談話室
    3、資料室
    4、化粧室
    5、緑地帯


    >>57



57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/11/27(火) 22:58:00.69 ID:7GJq5Pzuo

    1で

59 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/11/28(水) 22:53:18.75 ID:M45N6BZH0


    …そうね、疲れを引きずったらいけないし。
    一度、部屋に戻ってゆっくりしよう…



    ………



    部屋のドアを開けた私は、いつもの習慣で、そのままベッドに向かって倒れこむ。
    その途端、脳が全身の筋肉に休止命令を下した。
    しまった、このままじゃ眠ってしまう…
    そう気づいたときには、既に手遅れだった。
    寝つきのいい私の体は、すぐに眠りの世界へと落ちていく…



    ・

    ・・・

    ・・・・・

    ・・・・・・・・

    ・・・・・・・・・・・


60 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/11/28(水) 23:26:00.34 ID:M45N6BZH0



    【エイラ・イルマタル・ユーティライネン中尉の人生相談】



    迷える子羊に救いの手を。
    頑張るサーニャに愛の手を。
    この私が差し伸べてやろう!
    エイラ・イルマタル・ユーティライネンだ。

    サーニャ、苦労しているみたいだナ…
    私が言うのもナンだけど、サーニャは引っ込み思案だからナ。
    ま、そこが可愛いんだけどサ。
    奥ゆかしいサーニャには、気難しい相手と話すのは難しいみたいだ。
    それだけに、仲良くなるのも大変ッてこと。
    でも、方法はあるゾ。


    >>13でハルトマンが言ッてたことをよく思い出してみてくれ。
    「そうだね。 普段話をしない人と会話するのは難しいよ。
     お互いに気を使っちゃうし、相手にどこまで歩み寄っていいのかわからないから。
     だからって、そこで終わりにして、自分から距離を作っちゃいけない。
     何度も話すことで打ち解けてきて、相手だって心を開いてくれるはず」

    「もう一つ大事なことは、人間関係は一対一のものじゃない、ってことだ。
     相手には他に仲のいい相手もいるかもしれない。
     でもそれは、ポジティブに考えれば、友達の友達は友達ってこと。
     元々仲のいい友達を通せば、人間関係を広げやすいってことさ」


    「この隊にはさ、さーにゃんを嫌いな人なんて誰もいないよ。
     だから、変に構えずに、気楽に話しかければいいんじゃないかな?
     私が言えるのは、そんなとこかな」



    あと、移動先を決めるときは、
    その場所に関係のありそうなヤツが現れることが多い。
    訓練場に坂本少佐、なんてのはわかりやすい例だナ。
    でも、流れ次第で意外なヤツが出てくる可能性もあるから、目安程度に考えてくれ。
    自室に戻ると、こんな風にサーニャは眠っちゃうから気をつけろヨ。
    まァ、私に会いたいんなら話は別だけど。

    …って、イロイロ言ッたけど。
    別に計画的に女の子をオトして行けッつッてるわけじゃないからナ!
    そういうゲームじゃねーからな、コレ!
    難しく考える必要はないゾ。
    私がいる限り、バッドエンドなんかにはならないからナ!
    とにかく、私が言いたいのはひとつだ。
    暖かくサーニャを見守ってやってくれ。


61 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/11/28(水) 23:40:35.97 ID:M45N6BZH0

    ・・・・・・・・・・・

    ・・・・・・・・

    ・・・・・

    ・・・

    ・


    『サーニャ、サーニャ』

    「ん…ぁ…」


    すっかり眠ってしまった。
    なんだか、変な夢を見たような…


    『サーニャ、サーニャ』


    控えめにノックする音と、外から私を呼ぶ声に気づく。


    「エイラ?」

    『サーニャ、もうすぐ午後の訓練だゾ。
     急いで準備した方がいい』


    いけない、そんなに長い間寝ていたんだ…
    エイラが起こしにきてくれなかったら、大変だった。
    …でも、エイラの声のせいであんな夢を見たのかしら…
    とにかく、急いで支度しなきゃ。


    「ありがとう、エイラ。 すぐに行くわ」


62 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/11/29(木) 00:06:11.77 ID:DSC+gZOi0


    今日も午後からは飛行訓練。
    なんとか遅刻せずに済んだみたい…
    昨日と同じように坂本少佐が監督を務めて、
    万が一事故が起きた時に備えて、バルクホルン大尉がその補佐に着く。

    そういえば、本人は何事も無かったような顔をしているけど…
    芳佳ちゃんは、ついこの間まで魔力を使えない状態だったわけで、
    ミーナ中佐たちは、きっとそのあたりも注意して見ているんだと思う。


    「さて、今日は模擬戦をやってもらう。
     ペイント弾を用いた一対一形式。
     実際に飛ぶ者はもちろんだが、観戦する者も他者の動きをよく観察し、
     自分の参考とすることを主眼に入れて取り組んでほしい」

    「攻撃系の固有魔法を持つ者は、今回は一切使用禁止だ。
     わかっているとは思うが、念を押しておく」


    監督二人は、簡単に説明を終えると、組み合わせを発表していく。
    私の相手は、誰になるんだろう…
    …模擬戦は、誰が相手だとしても、あまりやりたくないけれど。


    「…3組目。 サーニャと、>>63だ」


63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/11/29(木) 00:33:38.81 ID:VWtwYhvoo

    宮藤


64 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/11/29(木) 01:21:48.69 ID:DSC+gZOi0


    「1組目、リーネ・服部。
     2組目、ペリーヌ・ルッキーニ。
     3組目、サーニャ・宮藤。
     4組目、バルクホルン・シャーリー。
     5組目、ハルトマン・エイラだ」


    坂本少佐が組み合わせを発表すると、辺りに緊張感が走る。
    服部さんは、また驚きの声をあげてバルクホルン大尉に怒られていた。
    私の相手は、芳佳ちゃんか…ますます緊張するけど…


    「サーニャちゃん、よろしくね!」

    「…うん」


    訓練なんだから、真剣にやらなくちゃ。
    坂本少佐に言われた通り、
    私たちは出番が来るまで、他の人の観戦に専念する。



    ―リーネVS静夏―



    「頑張れ、二人とも…!」


    芳佳ちゃんが真剣な顔で上空の二人を応援する。
    …けれど、なかなか二人は動き出さなかった。
    どうしたんだろう…


    「…服部のやつ、リーネに銃を向けていいものやら悩んでいるな。
     リーネもリーネで、そんな服部に遠慮して手を出せない。
     まったく、何をやっているんだ…」


    坂本少佐がため息をつきながら解説する。
    こう着状態はしばらく続いて…
    二人は突然すごい勢いでブレイクした。
    …たぶん、審判のバルクホルン大尉がしかりつけたんだと思う。


    「うむ、服部は…飛行訓練の基本に則った動きだな。
     …しかし、あまりに基本に忠実すぎる。
     あれでは、スナイパーの格好の的だ…」


    その言葉通り、決着はあっさりついたようだった。
    インカムから、審判の声が響く。


    『服部、被弾。 リーネの勝ちだ』


65 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/11/29(木) 01:53:58.70 ID:DSC+gZOi0

    「二人とも、おつかれさま!」


    地上に戻ってきた二人を、芳佳ちゃんが明るく迎える。
    対して、服部さんは酷く落ち込んでいた。


    「…何もできませんでした。 不甲斐ないです…」

    「しょうがないよ。 服部さん、緊張してたんだもの。
     私も昔そうだったから、よくわかるよ?」


    リーネさんは、そんな彼女を優しく慰めている。
    私も、軍に入ったばかりの頃は、銃を撃つのも怖かったっけ…
    今でも、人に銃を向けるのは抵抗がある。
    リーネさんの言う通り、仕方ないことだと思う。


    「服部。 反省は必要だが、落ち込む必要は無い。
     まだまだ、リーネとお前には力量に大きな差があるということだ。
     だが訓練次第で、その差を埋めていくことはできる。
     さっき何が悪かったか、自分に何が足りないか、よく考えろ」

    「…はい」

    「うむ、では2組目!」



    ―ペリーヌVSルッキーニ―



    さっきとは打って変わって、今度の二人はためらいなく戦闘体制に入った。
    空中で激しくぶつかり合い、交差し、またぶつかり合う。


    「うわぁ、激しいなぁ…」

    「ペリーヌさんも、ルッキーニちゃんも、ドッグファイトを得意としてるから…」

    「二人とも、ペイントでドロドロになってそうだね」


    攻撃が命中しても、完全に優勢の形をとらなければ、勝負ありにはならない。
    芳佳ちゃんの言う通り、二人とも全身にペイントを浴びている状態のはず…
    どっちが勝つか、まったく予想がつかない。


    『ただ今のルッキーニの攻撃、決定打とみなす。 ルッキーニの勝ちだ』


    …あれ?


66 : ◆DGmY9eMi.E [sage]:2012/11/29(木) 02:40:53.26 ID:DSC+gZOi0


    全身を極彩色に染められた二人が戻ってくる。
    ペリーヌさんは、バルクホルン大尉に支えられていた。
    もしかして、どこか怪我でも!?


    「ペリーヌさん、大丈夫ですか?」

    「…その声…サーニャさん? 問題ありませんわ…」

    「声ッて…オイ! ツンツンメガネ、目が見えてないのか!?


    目が見えないって…そんな…
    周りのみんなも青ざめる。


    「バ、バカ野郎! おい宮藤、治療だ! 早く!!

    「は、はいっ! ペリーヌさん、待ってて! 今すぐ…」
    「ま、待て宮藤。 本当に問題ないんだ」


    シャーリーさんの声に、慌てて治癒魔法を発動しようとする芳佳ちゃんを、バルクホルン大尉が制止する。
    目が見えていないのに、どうして問題がないなんて…


    「メガネがペイントでドロドロになって見えないんだね」


    …あ、なるほど…
    冷静なハルトマンさんの指摘に、みんなで胸をなでおろす。


    「…それで、あっさりと勝負がついたわけか」

    「えっへん! あたしの勝っちー!」

    「く…こんなアクシデントさえなければ、あなたなんかに…」

    「確かに、お前の不運が勝敗を決定付けた。
     視界が正常だったなら、勝負はわからなかっただろう。
     しかしペリーヌ。 実戦では、何があるかわからん。
     今回の相手がネウロイだったら、今頃どうなっていたかわかるな?」


    …少佐、厳しいな…
    でも、ペリーヌさんは謙虚だった。


    「…確かに、少佐の仰るとおりですわ。
     視界を失うなんて、あまりにも初歩的なミスを犯してしまいました。
     私が未熟だったということですわね…」

    「…不利をわかっていても、正々堂々と相手と同じ土俵で戦う。
     お前のそういう所は、私も好きだがな」

    「少佐…」

    「とにかく、お前たちは着替えてこい。
     それから、サーニャと宮藤の模擬戦を行う」


67 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/11/29(木) 20:22:52.46 ID:DSC+gZOi0



    ―サーニャVS芳佳―



    ペリーヌさんたちが戻ってくると、いよいよ私たちの番になった。
    MiG I-255を履いて、MG42を手に取る。


    「あれ? サーニャちゃん、いつものでっかい大砲は?」

    「…芳佳ちゃん、さすがに模擬戦でフリーガーハマーは使えないわ」


    なんだか、昨日も同じようなことを聞かれた気がする。
    私が機関銃を持っているのは、そんなに変なのかな…


    「よし、二人とも準備はできたな。 では、位置についてくれ」

    「上空では、私の指示に従うように。 行くぞ、宮藤、サーニャ」


    「はい」 「はいっ!」



    ………



    バルクホルン大尉の先導に従って、いつもの訓練に比べて、低高度の場所で停止した。
    目を下に向けると、サン・トロン基地が小さく見える。
    さらに目を凝らせば、大きく手を振っている誰かの姿があった。
    あれは…エイラかしら?
    よそ見をしていると、バルクホルン大尉が咳払いをした。


    「さて、二人とも攻撃系の固有魔法を持っていないから、その点は問題ないな。
     だが、シールドの使用は禁止とする。
     もしペイント弾をシールドによって防いだ場合、
     その時点でその者の反則負けとなるので、注意するように。 それと…」


    一旦言葉を切って、芳佳ちゃんの方を見る。


    「宮藤。 お前は、魔力が戻ってまだ間もない。
     もし何らかの異常を感じたら、些細なことでも、すぐに報告するように」

    「わかりました!」

    「注意事項は以上だ。 …始め!」


    大尉の合図と共に、私たちは同時に距離を取った。


68 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/11/29(木) 21:04:17.52 ID:DSC+gZOi0


    …私のMiG225は、元々高高度用の戦闘を想定して作られている。
    視界を遮るものの無いこの高度では、私の能力もほとんど意味がない。
    でも、芳佳ちゃんも得意のシールドを使うことを禁止されている。
    不利はお互い様だ。

    思案に暮れていると、先に芳佳ちゃんが動いた。
    まっすぐこっちに向かってくる。
    …速い。
    考えてみると、震電を履いた彼女と、こうして向かい合うのは初めてだった。
    操るのに膨大な魔法力を必要とするストライカーだって聞いたけど…
    魔力が戻ったばかりとは思えない勢いだった。
    むしろ、前よりも魔力が溢れているような…

    スピード勝負では分が悪いと判断した私は、
    その猛烈な突進を高度を上げることでいなした。
    太陽を背負うことで、芳佳ちゃんは一時的に私を見失う。
    その隙を突いて、今度は急降下して、死角に入る。
    このまま撃てば…ダメ、距離がありすぎる。
    使い慣れていないMG42じゃ、小さな芳佳ちゃんには当たりそうにない。
    もっと近づかなきゃ…

    ところが、射程距離に入る前に、私の接近に気づかれてしまった。
    芳佳ちゃんは、私に背を向けて逃げようとする。
    …背後を取った。
    追い討ちをかけるには絶好の体制だ。
    私は、背中に向けてMG42を乱射する。
    彼女はそれを避けようと急上昇して、



    ―――消えた?



    そう思った瞬間、三八式歩兵銃の銃声が唸りを上げる。



    「きゃっ」



    …背中を取ったと思ったら、逆に背中を撃たれていた。
    何がなんだかわからない。


    『サーニャ、被弾。 宮藤の勝ちだ』


69 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/11/29(木) 21:24:25.47 ID:DSC+gZOi0

    「ニヒッ。 サーニャ、やられたね~」

    「宮藤の得意技だな。 左ひねりこみ…ってやつだっけ?
     あたしらも前、あれにやられたんだよなぁ」

    「ま、初見殺しってやつだね。
     大技すぎるから、二回目はこっちも警戒するし」


    妙に嬉しそうに、シャーリーさんとルッキーニちゃんが解説してくれる。
    …なんだか、ちょっと悔しい。


    「宮藤のクセに、サーニャを撃つなんてー! 生意気だゾー!」

    「そ、そんなこと言われてもぉ~…」


    よくわからない抗議をするエイラを、とりあえず止めておく。
    それにしても芳佳ちゃん、強くなったな…
    ここに入隊したばかりの頃は、銃を持つことさえ嫌がってたみたいなのに。
    失ったはずの魔力が、突然蘇ったり…
    彼女は、どこか普通とは違う、特別なウィッチなのかもしれない。
    とにかく、自分の番が終わってホッとする。


    「では、4組目。 バルクホルン・シャーリー」


70 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/11/29(木) 21:55:00.07 ID:DSC+gZOi0



    ―バルクホルンVSシャーリー―



    上空では、二人の大尉がにらみ合っていて、緊張感がここまで届いてくる。
    今回、リーネさんが審判を任せられていたけど…大丈夫かな。


    「シャーリー、やっつけちゃえー!」


    固唾を呑んで見守る私たち。
    無邪気なルッキーニちゃんの声だけが明るく響く。
    ピリピリと張り詰めた空気が漂う中、状況は突然動いた。


    「あっ、シャーリーさん!」

    「スゲー。 とんでもないスピードで逃げてくゾ」

    「バルクホルン大尉が追いかけていくわ」


    二人は基地の上空をぐるぐる大きな円を描いて飛び回っている。
    バターにでもなってしまいそうな、それは壮絶な追いかけっこだ。
    そんな彼女たちを追いかける、リーネさんの悲鳴が聞こえてくる気がする。



    ――10分後――



    「あ、バルクホルンさんの勢いが止まった」

    「シャーリーさんは、勢いを保ったままもう一つ円を描いて…」

    「バルクホルン大尉に向かっていくゾ」


    その直後、インカムから声が聞こえてきた。


    『はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、
     ば、バルクホルン大尉…被弾…
     シャーリーさんの、勝ちです』


71 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/11/29(木) 22:12:50.80 ID:DSC+gZOi0

    「ハハハ! 勝った勝ったー!」

    「く…汚いぞ、リベリアン…」

    「はぁ…はぁ…ふぅ…」


    陽気なシャーリーさんと、対照的に疲れきった顔のバルクホルン大尉とリーネさんが降りてくる。


    「シャーリーの作戦勝ち、という所だな。
     バルクホルンは、これまで審判を務めていた分、飛行時間が余分に多くなっていた。
     そのハンデを見事に突かれた、というわけだ」

    「挑発に乗らなければ、それでもまともに勝負できたはずなのに。
     トゥルーデ、すぐ熱くなるんだから…」

    「ぐぐぐ…」


    少佐とハルトマンさんにダメ出しをされたバルクホルン大尉は、
    苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
    その隣で、リーネさんがくずおれて座り込む。


    「リーネちゃん! 大丈夫?」

    「はぁ、はぁ、はぁ、…もうダメ…」


    …本当に気の毒なのは、バルクホルン大尉よりもリーネさんなのかもしれない。


    「…うむ。 リーネ、ご苦労だった。
     審判は、また別の者に代わって貰おう。
     そうだな…服部!」

    「は、はいっ!」

    「…世界でも有数の、トップエースの二人の対決だ。
     間近で見てみたいだろう?」


    坂本少佐が、にやりと笑った。


72 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/11/30(金) 00:06:21.17 ID:+eR6XDow0



    ―ハルトマンVSエイラ―



    あまりやる気のなさそうなエイラとハルトマンさん、
    一人嬉しそうな服部さんが、飛び立って行く。


    「これは…見物ですわね」

    「うむ。 "撃墜王" と "無傷のエース"
     さしずめ、最強の矛と無敵の盾の対決、といった所か。
     さて、どうなることやら…」


    神妙な面持ちで空を見つめる二人の声に、
    他のみんなも一斉に空を見上げる。
    なんだか、私もそわそわしてきた…


    「ハルトマンが仕掛けた!」


    さっきまで瀕死の状態だったはずの、バルクホルン大尉が叫ぶ。
    気がつけば、リーネさんまで立ち上がっていた。

    距離を詰めようとするハルトマンさんが、直線的に突撃した。
    エイラはそれを嫌って、旋回して距離を取ろうとする。


    「エイラさん、中距離を保つつもりですわね」


    ハルトマンさんは射程外から強引に射撃を敢行するものの、
    エイラは当然のようにそれを回避していく。


    「一撃離脱を得意とするハルトマンには、相性の悪い相手だな」


    エイラが反撃するものの、こちらも射程外。
    さらにハルトマンさんが射撃を繰り返す。


    「消極的な戦い方だ…あいつらしくもない。
     あの距離でいくら撃ったところで、エイラに当たるはずがないというのに」

    「…いや、ハルトマンのやつ…
     互いの牽制射撃にまぎれて、少しずつエイラに接近しているようだぞ」


    坂本少佐は、いつの間に取り出したのか、双眼鏡を覗き込んでいる。


    「あー! 少佐、いいなー!
     あたしにもみして! あたしにもー!」


    やれやれと、ルッキーニちゃんに双眼鏡を貸してあげる少佐。
    一方、エイラはハルトマンさんの接近に気がついたのか、距離を取ろうとする。
    しかし、ハルトマンさんは逃げるエイラにぴったりとついていき、
    糸でつながれているかのように離れようとしない。


    「じわじわと距離を詰めていくつもりですわね」


    エイラは引き離そうと更に弾幕を展開する。
    それをものともしないハルトマンさんは、逆にエイラに向かって前進していく。


    「ハルトマンさん、射程内に入りましたね…」


    リーネさんの言う通り、ついに射程内に到達したハルトマンさんは、
    お返しとばかりにエイラにMG42を乱射していく。


    「…だが、あの距離でもエイラには当たらない」

    「ならば、背後を取るか?」


    ハルトマンさんは射撃を繰り返しながら、旋回して後ろに回り込もうとするものの、
    エイラは弾丸を全て避けつつ、それ以上の接近を許さない。


    「流石…ですわね。
     完璧な回避能力と言わざるを得ませんわ」


    急上昇からの急降下、急接近…


    「ハルトマンも色々と仕掛けちゃいるが、エイラは動きを全て読んでるって感じだな」

    「エイラさん、すごい…」


    つかず離れず。
    距離を保ったまま、戦況はこう着状態になった。


73 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/11/30(金) 00:07:30.83 ID:+eR6XDow0

    「これ、勝負つかないんじゃない?」


    ルッキーニちゃんが、あくびしながらそんなことを言う。


    「確かに、さっきからハルトマン中尉が撃ってはエイラさんが避け、の繰り返しですわね」

    「…いや、そうじゃない」


    坂本少佐は、ルッキーニちゃんが放り出した双眼鏡を、再び覗き込んでいた。


    「さっきから、エイラからは全く攻撃を仕掛けていない。
     …仕掛けられないんだ。
     自分から撃てば、その隙に更なる接近を許してしまうかもしれない。
     その上、回避に専念できなくなる…」

    「そうか…ハルトマンのやつ…
     最初から、持久戦を狙っていたのか」

    「いかに固有魔法が磐石の守りであっても、
     常に回避に神経を集中している今の状況は、
     エイラにかけられている負担は相当なものだ」

    「もしや、MG42の弾数が多いのも視野に入れて…?」

    「うへぇ…ハルトマンのやつ、意外とえげつない戦法考えるなぁ」

    「貴様がそれを言うか」

    「あー!」


    ルッキーニちゃんの声に、言い合っていた全員が一斉に空に視線を移す。
    とうとう限界になったのか、エイラから攻撃を仕掛けた。
    ハルトマンさんは、それを待っていたとばかりに即座に反応し、急旋回。
    あっという間に、エイラの背後を取る。


    『ユーティライネン中尉、被弾! ハルトマン中尉の勝利です!」


74 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/11/30(金) 00:26:06.31 ID:+eR6XDow0

    「チクショー!」

    「いやぁ~、エイラが被弾したとこ見たの、初めてかもなぁ~」

    「めっずらし~」


    シャーリーさんとルッキーニちゃんが、悔しそうな顔をして戻ってきたエイラをからかう。
    確かに、珍しいことだと思うけど、ちょっとひどい。


    「クソー! オマエら、死人にムチ打つようなことを…!」

    「エイラ、そんなに落ち込まないで。
     エイラは、まだ本調子じゃなかったんだし。
     よく頑張ったと思うわ」

    「ウッ…サ、サーニャァ…」

    「その優しさは、かえって残酷だぜ、サーニャ」

    「だぜぇ」


    …二人なりに、元気付けようとしていたのかしら…?


    「とにかく、二人ともご苦労だった。
     私から何も言うことがないほど、見事な勝負だったぞ」


    坂本少佐は二人を讃えたけど、エイラは私の胸で泣いているし、
    ハルトマンさんは…


    「おい! 滑走路で寝る奴があるか!」

    「うー…だってすごい疲れたんだもん」

    「せめてストライカーを脱がんか!」


    ………その後、全員の飛行が終わったので、解散の運びとなった。
    エイラを部屋まで送って行った後、ため息をつく。
    なんだか、今日はものすごく長い訓練だった気がする…


75 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/11/30(金) 01:07:13.84 ID:+eR6XDow0

    「あ、サーニャちゃん。 お疲れさま!」


    エイラの部屋を出ると、通りがかった芳佳ちゃんに声をかけられた。


    「今日の訓練は大変だったね。 でもみんな、すごかったなぁ」

    「芳佳ちゃんだって、凄いわ」


    左ひねりこみ…だっけ?
    私には、ちょっと真似できそうにない。


    「あはは…でも、サーニャちゃんに勝てたのもたまたまだよ。
     ううん、坂本さんのおかげ、かな?」

    「坂本少佐の?」

    「うん。 左ひねりこみって、元々坂本さんの技だし。
     私は、それを真似しただけ」


    …真似できるだけで、十分凄いと思う。


    「でも…芳佳ちゃん、ヘルウェティアの留学の話は…よかったの?」


    芳佳ちゃんは、こっちには元々、医学の勉強にために来ていたはずだった。
    それがネウロイとの戦いに巻き込まれて、なし崩し的に501に戻ってしまった形だけど…


    「…うん。 立派なお医者さんになりたいって夢はあるけど…」


    芳佳ちゃんは、遠くを見つめるような目になった。
    なんだか、大人びて見える。


    「ここに来る途中、小さな村でお世話になったんだ。
     みんな親切にしてくれて…でも、そこにネウロイがやってきて。
     焼き払われていく村を見ていて…思ったの。
     "守りたい" って。
     だから、私に、まだ飛ぶ力が残っているのなら…
     その力を、多くの人を守るために使いたい…そう考えたんだ」

    「…そう」

    「サーニャちゃんだって、本当は音楽家になりたかったんでしょ?
     でも、誰かを守るために戦ってる。 いっしょだよ」


    そうだよね…
    みんな、戦うのが好きなわけじゃない。
    自分の夢よりも、大切な何かを守りたいから、戦っている。


    「それじゃ、私行くね。
     サーニャちゃん、またね!」


    芳佳ちゃんは、元気よく走って行った。
    …あの前向きさ、私も見習わなくちゃ。


76 :今日はここまでです ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/11/30(金) 01:14:06.51 ID:+eR6XDow0


    芳佳ちゃんと別れて、一人になった。
    今日の訓練も終わったし…
    これからどうしようかな…
    そんなことを考えていると、ある人のことが頭に浮かんできた。


    >>77に、会いに行ってみよう…


77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) :2012/11/30(金) 01:41:39.12 ID:15MAyCBNo

    エイラ


78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/11/30(金) 02:48:11.27 ID:KiPFiZpao

    負けたエイラのフォローを忘れないあたりが正妻たるゆえん


79 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/11/30(金) 20:35:37.35 ID:+eR6XDow0


    『一人にしてくれ』 って言われたから出てきちゃったけど…
    やっぱり、エイラの元気がなかったのが気になる。
    少し時間を開けてから、もう一度会いに行ってみよう。
    …お茶でも持って行ってあげようかな?



    ………



    「あ、サーニャちゃん。
     なんだかよく会うね」

    「こんにちは、サーニャちゃん」


    厨房に入ると、芳佳ちゃんとリーネさんが何かを作っていた。
    ビスケット…かな?


    「二人とも、お菓子を作っているの?」

    「うん。 ミーナ中佐、一日中忙しくしてるし…
     疲れてる時には甘いものが一番だから」

    「昨日も、一緒に働いてる軍人さんの分と一緒に持って行ったんだ。
     サーニャちゃんはどうしたの?」

    「私は…」


    簡単に事情を話すと、リーネさんが、
    『ついでだから』 と、お茶を淹れてくれることになった。
    私も、お菓子作りを少し手伝ってから、
    ミーナ中佐の所へお菓子を運んでいく二人と別れた。


    エイラは…まだ落ち込んでいるのかな。


80 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/11/30(金) 21:16:06.28 ID:+eR6XDow0

    「エイラ。 入っていい?」

    「…サーニャ」


    エイラの部屋のドアをノックすると、やっぱり元気のない声が返ってきた。
    『入っちゃダメ』 とは言われなかったから、そっと中に入ってみる。
    カーテンを閉め切って、ベッドの上でひざを抱えているエイラの姿が儚げに見えた。
    私は、持っていたお茶をテーブルに置くと、エイラの隣に黙って座る。
    私もエイラも何も言うことはなく、時間だけが静かに流れていく。

    隣にいるエイラの顔をそっと覗き込んでみると、
    エイラも私のことを見ていたみたいで、一瞬だけ目が合った。
    それに気がつくと、エイラはすぐに視線を逸らしてしまう。
    私は、そのままじっとエイラを見つめていた。
    なんだか、辛そうな、寂しそうな表情をしている。
    私が見ているのに気がついたのか、エイラはゆっくりと視線を戻した。
    今度は、目を逸らさない。


    「どうしたの?」


    私の問いかけに、エイラはしばらく黙っていた。
    居心地悪そうに、また自分のひざを見つめて、それから話し始める。


    「自分でも、よくわかんないんだ」

    「さっきのこと?」

    「…私は、あんまり真面目な方じゃないし、
     さッきの訓練だッて、最初はあんまりやる気なんてなかッた」


    エイラはそこまで言うと、少し考えるように口をつぐんだ。
    私はただ、エイラの言葉を待つ。


    「ハルトマンと向かい合ッてたら…なんか、怖くなッたんだ。
     もし、コイツが敵だッたら…
     こんな奴が敵として現れたら…私はサーニャを守りきれるのか、ッて」


    それだけ言うと、また顔を伏せてしまう。
    そっか、エイラは…


82 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/11/30(金) 21:53:19.44 ID:+eR6XDow0


    私は、小さくなったエイラの体を抱きしめる。


    「サ、サーニャ?」

    「エイラ。 前にエイラが私に言ってくれたこと、覚えてる?」


    あれは…去年の、私の誕生日のこと。


    「私が、ネウロイに襲われた時…言ってくれたわ。
     『サーニャは一人じゃない』 って。
     でも、それはエイラだって同じことよ。
     私は、こうしてエイラのそばにいる。
     エイラの隣から、いなくなったりしないよ。
     いつだって、どんな敵だって、エイラといっしょに戦うから…
     エイラは、一人で戦う必要なんてないんだよ。
     だから、怖がらないで」


    …エイラは、飄々としているように見えて、寂しがり屋だから。
    きっと昨日からあんまり私と話していないことで、不安になったんだと思う。
    私だって、もしエイラがいなくなったら、自分は一人ぼっちだって考えてしまう。
    指先に触れるエイラの背中が、小さく震えている。
    今日は、ずっとエイラといっしょにいよう。



    ………



    「紅茶…すっかり冷めちゃったね。
     せっかくリーネさんが淹れてくれたのに」

    「んー、アップルティーだナ。
     大丈夫だ、冷めてもウマいゾ」


    すっかり元気になったエイラが、水でも飲むように一気にお茶を飲み干す。
    心の中でリーネさんに謝りながら、私もお茶を飲み干した。


    「もう夕食の時間ね。
     カップを下げるついでに、食堂に行きましょう」

    「そうだナ」


83 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/11/30(金) 22:17:46.08 ID:+eR6XDow0


    食堂に着くと、ミーナ中佐とハルトマンさんがいっしょに食事していた。


    「あら、二人とも。 今から食事なの?」

    「はい。 お疲れ様です、ミーナ中佐。 こんばんは、ハルトマンさん」

    「にゃっほー、さーにゃん、エイラ」


    ハルトマンさんは、私とエイラの顔を見ると、
    なぜか意味ありげに、にししと笑う。
    せっかくなので、二人と夕食の席をいっしょにさせてもらうことにした。



    ………



    「休暇?」

    「ええ。 観測班の報告でも、ネウロイの残党が現れる気配はないようだし。
     もっとも、あまり基地から離れるのは許可できないけれど…」


    とにかく、明日は訓練もなく、一日自由行動ということだった。


    「通信状況も、回復の兆しが見え始めてきたわ。
     もう少し時間はかかると思うけど、
     正式な辞令が下れば、私たちもこの基地を離れることになるでしょう。
     気に留めておいてね」

    「わかりました」

    「…あなたもね、フラウ」

    「じゃ、ごちそうさま!」


    矛先を向けられたハルトマンさんは、さっさと食堂から逃げ出していった。
    その様子に隊長は、深くため息をつく。
    そういえば、ハルトマンさんの部屋ってどうなってるんだろう…
    見てみたい気もするけど。


84: ◆DGmY9eMi.E [sage]:2012/12/01(土) 00:44:19.55 ID:HKHbsbnZ0


    食事を終えた私は、またエイラの部屋にお邪魔することにした。


    「じゃ、サーニャ。 今日は誰のことを占うんだ?」

    「…でも、エイラ…」

    「ン? 魔法力のことだったら、心配いらないゾ。
     確かに今日の訓練で少し疲れてるケド、占いくらいなら大した負担はないからナ」


    そういうことを言ってるんじゃないんだけど…
    エイラが元気になったなら、いいか。


    「ありがとう、エイラ」

    「サーニャのためだかんナ。 これくらいはなんてことないッて。
     じゃ、今日も【3人】指定してくれ」


    どうしよう…誰を占ってもらう?


    >>85(3人指定)


85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/12/01(土) 01:21:54.94 ID:hBsSmugNo

    扶桑組3人
    そういえばしずかちゃんと全然絡んでないことに気付いた


86 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/01(土) 19:44:56.53 ID:LSm/2pg30

    「扶桑の三人だナ、わかッた。
     じゃ、階級順に占ッていこう」


    そういえば、今日は扶桑の人たちと話す時間が多かった気がする。
    でも、服部さんとはまだちゃんと話したことがなかったかも…


    「よし、出たゾ。
     少佐を象徴するのは "皇帝" だ。
     権威や意思、責任感の強さを意味する」


    言葉の通り、椅子に座って堂々と構える皇帝のカードを私に見せる。


    「状態を示すカードは、 "月" 逆位置だ。
     過去からの脱却…少佐も、心の中じゃイロイロと悩みがあるんだろうナ…」


    しみじみと逆さまの月のカードを見つめるエイラ。
    私は、朝の坂本少佐との会話を思い出した。
    501を引っ張るお父さんみたいな少佐だけど…
    彼女も、普段見せないようにしているだけで、ずっと苦しんでいたんだよね…


    「…ン?」


    と、カードを片付けようとしていたエイラが怪訝な顔をする。


    「どうしたの?」

    「ンー…とりあえず、次は宮藤を占ってみようか」


87 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/01(土) 20:10:53.90 ID:LSm/2pg30


    エイラは、さっき占ったままの状態のカードを全て裏返し、
    そのままぐるぐるとかき混ぜていく。


    「あら? いつもとやり方が違うみたい…」

    「ちょッと気になることがあッてナ」


    そう言いながらエイラは、慎重にシャッフルした後、
    一枚のカードを引いた。


    「宮藤のカードは "魔術師" だ。
     可能性、才能、始まりを象徴する。
     宮藤のクセに、いいカードだ」


    エイラは、寝かせた魔術師をピンと弾いて逆立ちさせる。


    「逆位置の、空回りってのは、ぴったり合ってるナ」

    「もう、エイラはどうして芳佳ちゃんを悪く言うの?」

    「…何となく」


    エイラは、もう一枚カードをひっくり返した。


    「"節制" の正位置か…これは調和の意味だろうな。
     あいつは、部隊のみんなと仲良くなりたいッて考えてるみたいだ。
     まったく気の多いヤツだ」

    「…私も、同じ考えだけど」

    「サ、サーニャと宮藤とじゃ意味が変わッてくるんだヨ!」


    エイラは、さらにもう一枚カードを引いた。


    「どうして芳佳ちゃんだけ3枚引いたの?」

    「いや、さっきの少佐の占いで気になることがあってサ。
     宮藤と少佐を結ぶカード… "恋人" 正位置だ」

    「…どういう意味なの?」

    「少佐は、宮藤に対して複雑な心境みたいだナ。
     まあ、本人がいない所であんまり踏み込んだ所まで占うのもちょッと…」


    確かに、エイラの言う通りだと思う。


    「そうね。 じゃあ、最後は服部さんかな?」

    「ウン」


88 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/01(土) 20:35:11.83 ID:LSm/2pg30


    改めてカードを整理すると、エイラはいつも通りにカードを引いていく。


    「服部のカードは "正義" だ。
     公正、均衡、善行を象徴している」

    「まだ、あんまり話したことないけど…
     真面目な人みたいだもんね」

    「まァ、バルクホルンと同じタイプッて感じがするナ。
     でも、変人ぞろいの扶桑のウィッチの中じゃ、割と普通の性格かも」


    なんだかいろんな人に失礼なことを言っている気がするけど、
    多分悪気はないんだと思う…


    「状態は… "教皇" …逆位置、か。
     なんていうか、思いッきり遠慮が見えるな。
     多分、こッちから話しかけなきゃ向こうからは絶対に絡んでこないゾ」


    思い返してみると、彼女は階級や礼儀のことをとても気にしているみたいだった。
    501はかなり異質な部隊だから、彼女の感覚の方が普通なのかもしれないけど…
    上官に対して気軽に話しかけるのは失礼、という風に考えているのかも。


    「わかったわ。
     エイラ、ありがとう。 疲れてない?」

    「ウン、まァ、ちょッとだけ」


    エイラは、タロットを片付けながらあくびをした。
    やっぱり、あんまり無理をさせない方がよさそう…

    その後、少しだけ雑談をしてから、
    消灯時間が来る前に、自分の部屋に戻ることにした。


89 : ◆DGmY9eMi.E [sage]:2012/12/01(土) 20:54:46.44 ID:LSm/2pg30


    道すがら、点呼確認中のバルクホルン大尉に挨拶してから部屋に戻ってきた。
    これで今日も終わり。
    明日は一日自由行動…どうしようか考えようと思ったけど、
    ベッドに寝そべると、眠気が襲ってきた。 …昼寝までしたのに。
    これじゃ、ハルトマンさんにも笑われちゃうな。
    …明日のことは、明日考えよう。


    『今日も、色んなことがあった…』

    『…芳佳ちゃんやリーネさん、シャーリーさん、ルッキーニちゃんと賑やかに朝食を食べたっけ』

    『坂本少佐…少佐の分まで、私たちが頑張らないと…』

    『ペリーヌさんとも…もう少し、ちゃんとお話できるようになりたいな…』

    『午後の訓練は、大変だった…芳佳ちゃん、凄く強くなってた…』

    『空での戦いだけじゃなく、精神的に…私も、もっと強く…』


    『………エイラ………』



    『………………エイラ…………』




    Zzzzzz



    ・

    ・・・

    ・・・・・・

    ・・・・・・・・・・

    ・・・・・・・・・・・・・・・・


90 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/03(月) 19:47:10.08 ID:Bv4b9Xnu0

    ・・・・・・・・・・・・・・・・

    ・・・・・・・・・・

    ・・・・・・

    ・・・

    ・


    カーテンの隙間から差し込む光で目が覚めた。
    昨夜ちゃんと閉めていなかったみたい…
    そのおかげで起床ラッパの前に起きられたけれど。

    朝の支度を一通り済ませてから、一息つく。
    一日だけど、今日は休暇。 何をして過ごそう?
    やっぱり、誰かに会いに行きたいけど…
    先に、他のみんながどうするのかが知りたい。

    朝食には全員顔を出すはずだから、
    とりあえず私もご飯を食べてから考えよう。
    私は、少し早めに食堂に向かうことにした。


91 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/03(月) 20:48:51.32 ID:Bv4b9Xnu0


    今朝の朝食は、どこかそわそわした雰囲気が漂っていた。
    周りのみんなは、これからの予定をしきりに話し合っている。


    「エイラは、今日はどうするの?」

    「ンー…休暇ッて言われてもなァ。
     基地からはあまり離れられないみたいだし、特にやることもないしナ」


    確かに、突然時間を与えられても、もてあましてしまうものかも。
    …と、思っていたけど、さっさと食事を済ませて食堂を出て行く人も少なくなかった。
    休暇というものは、ゆっくり過ごす人と、アグレッシブに過ごす人と、両極端なものらしい。


    「ミーナ中佐は、今日もお忙しいんですか?」

    「そうね。 昨日までで皆の原隊とも連絡を取ることができたから、
     略式ではあるけれど、今日で501の再結成手続きを済ませることができるわ。
     午前中には終わる予定だから、それ以降は少し時間が取れるわね」

    「相変わらず、仕事が早いな」

    「ミーナは作戦の前に、既に根回しを済ませていたからな。
     まったく、同じカールスラント軍人として頭が下がる」


    501の隊長は、そもそも休暇らしい休暇というものがないように思う。
    私たちのために、難しい手続きや折衝を一手に引き受けて…感謝しなくちゃ。
    この基地に来てからは、ほとんど話す時間もなかったみたいだけど…
    これからは、会う機会も増えるかな?


    「そういえば、今朝はハルトマンが来ていないようだったが」

    「…あいつは 『お休みの日だから、24時間寝溜めする』 と言って、
     断固として寝床を離れようとしなかった。
     まったく、同じカールスラント軍人として頭が痛い…」


    …同じカールスラント生まれでも、
    北部生まれと南部生まれでは性質が違うものらしい。


    「だが、今日こそはあいつの部屋を掃除せねばならん。
     惰眠をむさぼっていられるのも今のうちだ」


92 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/03(月) 21:22:13.93 ID:Bv4b9Xnu0

    「他のヤツらは、どうするんだろうナ」

    「宮藤さんとリーネさんは、ディジョン基地に慰問に行きたいと言っていたわ。
     今回の作戦では、負傷者が多数出たから…
     『医者の卵として、助けに行きたい』 って」


    休暇なのに、人助けに行こうというあたりが、芳佳ちゃんらしかった。
    リーネさんも、それに付き合うつもりなのかな。


    「医者の卵として…か」


    …?
    坂本少佐…


    「シャーリーさんとルッキーニさんは、
     どこからか古いバイクを見つけてきて、それの試運転をするそうよ」

    「外出許可を出したのか?」

    「…許可を求めてきたけど、却下したわ」

    「うむ、妥当な判断だ」


    シャーリーさんたちがバイクで…
    なんだか、嫌な予感がする。


    「少佐はどうするんだ?」

    「…ん? ああ、私は…服部に訓練をつけてやるつもりだ。
     ペリーヌも、あいつを気にかけているようでな。
     一緒に誘ったら、快く承諾してくれたんだ」

    「へー。 あのツンツンメガネが?」

    「宮藤さんの留学の随行任務の途中で、二人ともペリーヌさんのシャトーに立ち寄ったらしいの。
     服部さんは、上官に対して必要以上に距離をおいてしまうタイプみたいだけど…
     ペリーヌさんに対しては、打ち解けてるみたいね」


    それはちょっと意外だった。
    そういえば、二人一緒にいるのをよく見かけたような…
    芳佳ちゃんが来たばかりの頃も、気にかけてあげてるみたいだったし。
    やっぱり、ペリーヌさんは優しい人なんだと思う。


    「観測班の報告でも、当面の安全が確認されているから、
     ハイデマリーさんも、今日は非番よ。
     といっても、午前中は彼女も休んでいるでしょうから…
     時間があったら、午後にでも会いに行ってみるといいわ」


93 : ◆DGmY9eMi.E [sage]:2012/12/03(月) 21:28:56.94 ID:Bv4b9Xnu0


    …一通りみんなの予定を聞いた後、食堂を出てきた。
    私は、これからどうしよう?
    誰に会いに行くかで、
    今日がどんな一日になるか、まったく変わってくると思う。



    ―午前の予定―



    1、エイラに会いに行く
    2、芳佳ちゃん達の慰問に同行する(1日経過)
    3、シャーリーさんたちの様子を見に行く(1日経過)
    4、坂本少佐たちの訓練に顔を出す
    5、ハルトマンさんの部屋の片づけを手伝う


    >>94



94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/03(月) 22:16:25.29 ID:pwZPG0ro0

    2で

95 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/04(火) 21:27:39.00 ID:JsdCXcme0


    ディジョン基地とセダン基地の場所逆に考えてた…
    しかし今さら後には引けないのでこのまま行く
    距離的に色々と無理がある気がするけど許してね!


96 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/04(火) 22:09:35.64 ID:JsdCXcme0


    私がついて行って、何の役に立つかもわからないけど…
    誰かを助けるために行動する、芳佳ちゃんを手伝いたいと思った。
    執務室へ向かうミーナ中佐の背中に声をかける。


    「あら、サーニャさん。 どうしたの?」

    「お急ぎの所、すみません。
     芳佳ちゃんたちのディジョン基地への慰問に、私も同行させて欲しいんです」


    少し驚いた顔をした後、しばらく考え込む。
    その後、"司令官"として私に向き直った。


    「…リトヴャク中尉。 ディジョン基地が特殊な環境にあるのは、知っているわね?」

    「…はい」

    「宮藤少尉の意図する所とは別に、今回の慰問は外交の問題も内包しています。
     そのことを十分に心に留めておいてね。 …同行を許可します」

    「了解」


    隊長は、それだけ言うと、ふっと緊張を解いた。


    「…正直な所、私としても助かるわ。
     できれば、複雑な内部事情を抱えるあの基地に無用な干渉は避けたいのだけど…
     宮藤さんの治癒魔法があれば、多くの兵を助けられるのは事実だから」


    芳佳ちゃんは、扶桑出身ということもあって、
    欧州の政治事情には明るくない。
    リーネさんが同行についているのも、単純な道案内としてだけじゃなく、
    お目付け役としての意味もあるらしい…
    というのが、隊長の態度から伺えた。

    とにかく、私も同行の許可を貰えたわけだけど、
    ディジョンまでの距離を考えると、日帰りというわけにはいかなそうだった。
    …


    「あの、隊長」

    「エイラさんの許可も出しておくわ。
     宮藤さんたちのこと、よろしくね」


    私が口に出す前にそれに答えると、
    隊長はそのまま立ち去って行った。


97 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/04(火) 23:01:40.69 ID:JsdCXcme0


    エイラの部屋を訪ねると、彼女は特に予定もないからと、
    ディジョンまで一緒に行くことを二つ返事で決めた。
    後は、肝心の芳佳ちゃんとリーネさんに話しに行かないと。
    ディジョンまではストライカーで移動するみたいだから、二人ともハンガーかな。



    ………



    「ごめんね、リーネちゃん。
     せっかくのお休みなのに、付き合って貰っちゃって」

    「ううん、私も道案内くらいしかできないけど…
     芳佳ちゃんの役に立てるなら、嬉しいよ」


    はたせるかな、二人はハンガーで出発の準備をしていた。
    九九式機関銃とボーイズ対戦車ライフルをそれぞれ背負っている。


    「あれ、サーニャちゃんたち。 どうしたの?」

    「私たちも、一緒に行ってもいいかな?」


    突然の申し出だったけど、二人はにっこりと歓迎してくれた。
    特にリーネさんは、どこかほっとしたような顔を見せている。
    私とエイラも、急いで出発の準備にとりかった。
    そこに、


    「お前たち、これから出発か?」

    「あれ、坂本さん。 ペリーヌさんたちと訓練中じゃ?」


    芳佳ちゃんの問いに、現れた少佐は、黙って親指で空を指す。
    そこには、飛行訓練中のペリーヌさんと服部さんの姿が見られた。


    「ペリーヌのヤツ、容赦ねーナ」


    エイラの言葉通り、服部さんはペリーヌさんに終始翻弄され、
    一方的に攻撃されているみたい…


    「はっはっは。 服部自身が、手加減をしないように頼んでいたからな。
     ペリーヌも、昔の自分を思い出す所があったのかもしれん」


    そういえば、501に入る前、
    ペリーヌさんも坂本少佐に何度も勝負を挑んだって、前に聞いた気がする。


    「それよりお前たち、訪問先で粗相のないように気をつけろよ。
     …それと、サーニャ。 ちょっといいか?」

    「…? はい」


    少佐に促され、みんなと少し離れた場所に移動する。


    「宮藤のこと、注意してやってくれ。
     これまでの様子を見る限り、問題はないと思うが…
     あいつは、後先考えずに無理をしすぎるからな」


    私がその言葉に頷くと、
    少佐は降りてきたペリーヌさんたちの所へ戻って行った。
    やっぱり、芳佳ちゃんのことを心配しているんだ…


    「あ、サーニャちゃん。
     坂本さんとなんの話してたの?」

    「…えっと、芳佳ちゃんたちのことを頼むって」

    「そっか。
     サーニャちゃん、この4人の中だと一番階級が上だもんね」

    「そーだゾそーだゾ。 オマエら、サーニャの命令は絶対だかんナ!」


    なんてことを話しているうちに、私たちはすっかり準備が整った。
    滑走路で見送る坂本少佐、ペリーヌさん、服部さんに手を振って飛び立つ。
    目指すはディジョン基地。
    長い一日になりそうだった。


98 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/04(火) 23:40:57.11 ID:JsdCXcme0

    「…えっと、どっちに向かえばいいのかな?」


    基地を後にした後、芳佳ちゃんの開口一番の発言に、エイラが飛びながらずっこける。


    「オマエ、そんなこともわからずに行こうとしてたのか!?」

    「だ、だって…ガリアは初めてなんだもん」

    「そ、そういう問題じゃないよ…芳佳ちゃん…」


    さすがのリーネさんも、少し呆れた様子だった。


    「…ディジョンまでは、距離があるから…
     一度、南西のセダン基地を経由して、そこから南下するの」

    「そもそもオマエ、ディジョン基地がどういうとこかわかッてんのか?」


    エイラも、なんとなく心配になってきたらしい。


    「ど、どういうって…」

    「あのね、芳佳ちゃん。
     セダンとディジョンは、同じ506部隊…
     "ノーブルウィッチーズ" の管轄基地なの」

    「のーぶる…?
     なんで基地が二つに分かれてるの?」

    「ノーブルウィッチーズ。
     ガリア解放後に設立された部隊で、名前の通り、貴族だけで構成されているわ」

    「貴族社会の影響が強いガリアで、政治的優位に立つための設立思想らしいナ」

    「でも、貴族出身のウィッチだけで構成するなんて、
     相当無理があったから…編成にはとても苦労したらしくて。
     それが原因で、セダン基地に駐屯するA部隊と、ディジョン基地に駐屯するB部隊に分裂しちゃったの」


    矢継ぎ早に説明する私たちの言葉を、
    芳佳ちゃんはウンウン言いながら、どうにか飲み込んでいた。


    「…あ! 思い出した!
     確か、ペリーヌさんが司令官に推薦されたって部隊!」

    「そうそう。 ペリーヌさんは、ガリア復興に専念したいからって断っちゃったけどね」

    「ぶッちゃけ、セダンとディジョンの混乱の原因はアイツなんだよな。
     素直に引き受けとけば丸く収まッたのに。 迷惑なヤツだ」

    「エイラ。 そんなこと言っちゃダメよ」

    「そうだよ! ペリーヌさん、ほんとに頑張ってるんだから!」

    「私も、ペリーヌさん…とても立派だと思います」


    私がエイラをたしなめると、芳佳ちゃんとリーネちゃんもそれに続く。
    二人は、復興に携わるペリーヌさんの姿を見ている分、黙ってはいられなかったみたいだった。


    「ウウ…冗談だッて。
     とにかく、セダンとディジョンの関係はビミョーってことだよ」

    「…今回のディジョン基地の被害で、ますます関係が混乱してるかも」

    「ッつーわけだ。 行動には気をつけろよナ」

    「…はぁい」


100 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/05(水) 20:01:31.20 ID:HlvZAAXH0


    セダンに到着した私たちは、補給を兼ねて一時の休憩を取っていた。
    この基地の責任者の多くは、ディジョン基地に移動しているらしい。
    意外にも静かな談話室で、グリーンティーをご馳走になる。


    「大丈夫か? サーニャ」


    昼間の長時間飛行に不慣れな私を、エイラが労わってくれる。
    ここからディジョンまで、まだまだ飛ばなくちゃいけない。
    これくらいでへこたれていたら、何のために芳佳ちゃんたちについてきたのかわからない。
    …その芳佳ちゃんはというと、元気そのものだった。
    坂本少佐に言われたこともあって、注意して見ていたけど…
    とても数日前まで魔力を失っていたとは思えなかった。
    それどころか疲れの色すら見せずに、雑談に興じていたりする。


    「黒田さんの服、私が持ってる扶桑人形の服と似てるなぁ」

    「これ、扶桑陸軍の制服なんですよ。
     たぶん、その扶桑人形って "巴御前" じゃないかな?
     "扶桑海事変" って活動写真で有名になった人なんだけど…」

    「そういえば、みっちゃんがそんな話してたかも。
     海軍と陸軍とじゃ、制服が違うんですねぇ」


    基地を訪ねた私たちを案内してくれた黒田邦佳中尉は、
    同じ扶桑生まれということで気が合うのか、
    意外にも気さくに芳佳ちゃんと接している。
    やっぱり芳佳ちゃんの物怖じしない性格が、
    相手の警戒心を解いている所も大きいんだろうけど。


    「…あ、皆さんのストライカーの整備、終わったみたいです」


    黒田中尉が、藤色のベルトをなびかせながら立ち上がる。
    私たちもそれにならって、彼女に挨拶した。


    「お世話になりました。 黒田中尉」

    「いえいえ。 お世話になるのは、こちらの方なんですから。
     ディジョンに着いたら…あー…」


    にこやかにお辞儀を交し合っていたかと思うと、
    突然奥歯が詰まったような物言いになる。


    「…あのぉ、ディジョンには、この基地からグリュンネ少佐と、
     …ウィトゲンシュタイン少佐が視察に行ってるんですけど…その」

    「どうしたんですか?」

    「…いえ。 お気をつけて!」


    …?
    私たちは、彼女の不思議な態度に疑問符を浮かべながらも、
    ディジョン基地に向けて出発した。


101 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/05(水) 20:58:05.51 ID:HlvZAAXH0


    夜の空は、目に映るものが星と月だけの暗闇の世界。
    対して太陽が見守る昼の空は、美しいガリアの風景を私たちに見せてくれる。
    でも、本来なら牧歌的であるはずの大地には、
    戦いの爪あとがはっきりと刻まれていた。

    戦いの跡。
    平原に大きなクレーターがいたる所に見られ、何かの残骸が散らばっている。
    ネウロイによって焼き払われた森。
    小さな村には、壊れた建物を直している人々の姿。
    整備された道路も、ところどころ崩れている。


    「…酷いね」

    「ガリアからは、もうネウロイが消えたって…みんな思ってたのにね」

    「…ここに限ッた話じゃない」


    まだ戦争は終わっていない。
    眼下の光景は、そのことを私たちに訴えかけていた。



    ………



    太陽が傾き始めた頃、ディジョン基地に到着。
    片道の航空だけで半日もかかってしまった。


    「ようこそ、501の皆さん」


    ハンガーに着陸した私たちを、栗毛の女性が待ち構えていた。


    「私はジェニファー・J・デ・ブランク大尉だ。
     あなた達の訪問に感謝する」


    名乗ると同時に握手を求める。
    そのリベリオン流の挨拶に、私たちも従う。


    「長旅でお疲れだろう? 食事を用意してある。
     何分この状況のため、来客に出して恥ずかしくない料理とは言えないが。
     とにかくひとまずは、ゆっくりしてほしい」


    きびきびと歩き出す彼女に、
    私たちは、とにかくついて行くしかなかった。


102 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/05(水) 22:05:48.90 ID:HlvZAAXH0

    「のんびりご飯なんか食べてていいのかなぁ」


    ランチョンミートをはさんだパンを食べながら、
    誰にともなく芳佳ちゃんが言った。

    ディジョンは、やっぱり大変な状況のようで、
    基地にこそ大きな損害の後は見られないものの、
    破損した武器を修繕する人や、包帯を巻いた姿で走り回る人など、余裕のなさが見て取れた。
    私たちはといえば、食堂ではなく客間の一室に通されて、遅めの食事をとっている。


    「ま、ハラ減ってるのは確かだし、いただいておこう。
     あんまりうまくはないけどナ」

    「ブランク大尉たちにも、事情があるのかもしれないわ」

    「まァ、こういう場合、最初に部隊長に会わせるのが普通だよナ。
     たぶん手が空いてないんだろ」

    「ご明察」


    コーヒーカップを4つ持って現れたブランク大尉を見て、
    軽口を叩いていたエイラが慌てる。


    「すみません、ブランク大尉。 失礼なことを」

    「いや、無礼はこちらの方さ。
     わざわざ来てもらって待たせる形になってしまってはな」


    謝る私に、気にした様子もなくそう言いながら、
    ある種、軍人らしくない、洗練された動作でカップを出していく。


    「ユーティライネン中尉の言う通り、他にも来客があったんだが…
     そろそろ話も終わる頃だろう。 一息ついたら来てくれるか?」

    「わかりました」


    話がまとまったかと思ったところで、芳佳ちゃんが突然立ち上がった。


    「あ、あの! 治療が必要な人はどこに…?」

    「…芳佳ちゃん!」


    リーネさんが小声で注意しても、それに耳を貸す様子もなく続ける。


    「怪我をしている人、たくさんいるんですよね?
     私、少しでも早く、助けたいんです!」


    芳佳ちゃんの発言にハラハラする私たち3人とはうってかわって、
    ブランク大尉は、どこか愉快そうに含み笑いを浮かべる。


    「…わかった。 では、宮藤少尉。 ビショップ曹長。
     君たちには案内の者をつけるから、兵の治療をお願いする。
     リトヴャク中尉とユーティライネン中尉は、私と一緒に来てくれ」

    「はい! ありがとうございます!」



    ………



    芳佳ちゃんたちと分かれた私とエイラは、
    ブランク大尉について、ジーナ・プレディ中佐の執政室に向かっている。
    先を歩く彼女が突然立ち止まったかと思うと、その肩が小さく震えた。


    「…自分が人を助けに行くのにありがとう、とは。
     面白い子だな、宮藤少尉は」


    肩と同期して震える声は、笑いを堪えているようだった。


    「まァ、ああいうヤツだから。
     付き合う方としては、身がもたないケドな」


    エイラが疲れた声で言うと、ブランク大尉はたまらず吹き出す。
    私は、さっきからどうしていいのかわからなくて、言葉を失っていた。


103 : ◆DGmY9eMi.E [sage]:2012/12/05(水) 22:48:10.58 ID:HlvZAAXH0


    少し胃が痛くなりながらも、執政室にたどり着いた。
    …部屋の中から声が聞こえる。
    まだ、先客の人がいるみたいだった。


    「やれやれ、まだ終わっていなかったか。
     済まない、少し待っていてくれ」


    ブランク大尉はそう言うと、ノックの後、返事も待たずに部屋の中に入って行った。
    それから少し間をおいて、ブロンドの髪に黒い制服を着た二人の女性が部屋から出てくる。
    彼女たちは、私たちを一瞥してから、その場を去って行った。
    その後姿をなんとなく見送ると、離れた所で何か言い争っている…?


    <<…ハインリーケさん! あれほど言ったのに、ケンカ腰で話すなんて!…>>

    <<…だが、連中の不甲斐なさを見ていると、とても黙ってはおれぬ!…>>

    <<…ディジョン基地には、協力体制の強化のために来ているんですよ!…>>

    <<…501に手柄をまるっと持って行かれて…悔しくはないのか!…>>

    <<…まったくあなたって人は! ………!…>>

    <<………!…………>>


    「リトヴャク中尉、ユーティライネン中尉?
     どうかしたか? どうぞ、中に入ってくれ」

    「…ぁ、はい」


    名前を呼ばれて、我に返った私たちは、
    改めてプレディ中佐の執務室に招き入れられた。


    「よく来てくれた。
     私がこの基地の指揮官を勤めている、ジーナ・プレディ中佐だ」

    ブランク大尉と同じように、プレディ中佐も私たちに握手を求める。
    それに応えて、私たちも彼女に名乗った。

    「すみません、お取り込み中の所に」

    「いいや、助かった。
     ウィトゲンシュタイン少佐から逃げる、いい口実ができた。
     …ところで、ミーナ中佐の話では、
     宮藤芳佳少尉と、リネット・ビショップ曹長も一緒に来ているはずだが?」

    「その…すみません。
     宮藤少尉は、ご挨拶の前に、まず負傷兵の治療から取りかかりたいと…」

    私の説明に、ブランク大尉が低く笑った。

    「そうか。
     そのために来てもらったわけだからな…我々としても助かる。
     情けない話だが、猫の手も借りたい状況なんだ…
     改めて、君たちの協力に感謝する」

    腹を立てた様子もなく、プレディ中佐が謝辞を繰り返す。
    ブランク大尉は、合理的なこの司令官の性格を知っていたからこそ、
    私たちだけをここに通したのだと気づいた。


104 : ◆DGmY9eMi.E [sage]:2012/12/05(水) 23:15:54.18 ID:HlvZAAXH0

    「さて、慌しいこの基地で休んでもらうのは、少々気がひけるが…部屋を取らせてある。
     今日の所は、ここに泊まっていってくれ」



    ………



    再びブランク大尉の案内で、個室に通される。
    基地の個室というのは、どこも似たようなもので、無駄のない質素な部屋だった。
    …そういえば、ハルトマンさん…部屋の片付け、終わったのかな?


    「時に、二人はラジオをやっていたな?」


    ベッドのシーツのしわを伸ばしながら、何気なくブランク大尉が聞く。


    「私も、何度か聞いたことがある。
     この基地にも、君たちのファンが多いようだ。
     もし暇なら、皆に会ってやってくれ。 士気が上がる」

    「ンー、サーニャ、どうする?」

    「そうね…」



    ―午後の予定―



    1、芳佳ちゃんたちの様子を見に行こう
    2、ブランク大尉の言う通り、ファンに会いに行ってみよう
    3、これは…ネウロイの気配!?


    >>105



105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/05(水) 23:35:26.52 ID:z723SiZko

    2


106 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/07(金) 19:56:04.77 ID:8MwdO6Al0

    「いいのか? そんな安請け合いしちゃッてサ」

    「私たちには、芳佳ちゃんのお手伝いはできそうにないし…
     ここには慰問に来たんだから、喜んで貰えるなら…いいと思うわ」

    「ありがたい。 では、私は人を集めて来よう。
     30分ほどしたら、そうだな…食堂に来てくれるか?」



    ………



    「おい、聞いたか!
     "リーリヤ" と "ダイヤのエース" がこの基地に来てるらしいぞ!」

    「あのエイラーニャが!?」

    「マジかよ! なんでこんなとこに!?」

    「今サン・トロン基地に駐屯してる501を代表しての慰問だとよ!」

    「ワーオ! 俺、彼女らの大ファンなんだ!」

    「っていうかリーリヤって実在してたのか?
     俺はてっきりオラーシャの捏造した妖精か何かかと」

    「俺も、ダイヤのエースなんてスオミがでっちあげた雪像だと思ってたよ」

    「みんなにサインしてくれるってよ!」

    「握手できるかもしれないぜ!」

    「一緒に写真も撮ってくれるかもだぜ!」

    「こりゃ銃なんて磨いてる場合じゃねえや! 出遅れたらコトだ。 すぐ行かにゃ!」



    ………



    「なんだか、基地が騒がしくなってきたわ」

    「なァ、サーニャ。 私なンかイヤな予感がするんだけど」


    "吊るされた男" のカードを見つめながら、エイラが呟いた。


107 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/07(金) 21:31:03.88 ID:8MwdO6Al0

    「やあ、二人とも。 よく来てくれた」


    言われた通り、食堂を訪れた私たちを待っていたのは…



    <<Amazing! なんてこった! 本物だぜ!>>

    <<すごいぞ! エイラーニャは本当にいたんだ! ああ、神様!>>

    <<あ…見てる? サーニャちゃんがオレを見てるぞ!>>

    <<ばかこけ! オレを見たんだ!>>

    <<ファンタぢっく! ファンタぢっく!!>>

    <<イッルー!! イッルゥゥゥゥゥ!!!>>



    「…帰っていいか?」


    すし詰め状態のリベリオン軍の人たちを目の前に、
    エイラは、何もしていないのに疲れきった顔をしている。


    「いや、すまない。 思っていたよりも多くの者が集まってしまった。
     彼らにしてみれば、君たちは偶像のような存在だからな」


    ブランク大尉は、申し訳なさそうに私たちを見てから、
    食堂の中央へ進み、そこで思い切り机を叩いた。


    「静まれ、貴様ら! 彼女たちはショーガールではない!
     厳粛に席につけぬ者は、この場を立ち去れ!」


    その一喝で、騒いでいた全員が一瞬で口を閉じ、傾聴の姿勢を取る。


    「皆も知っているだろうが、まずは紹介しておく。
     こちらはオラーシャ陸軍アレクサンドラ・ウラジミーロヴナ・リトヴャク中尉と、
     スオムス空軍エイラ・イルマタル・ユーティライネン中尉だ。
     更に扶桑海軍より宮藤芳佳少尉、
     ブリタニア空軍よりリネット・ビショップ曹長が当基地を訪れている。
     宮藤少尉とビショップ曹長は、現在負傷兵の救護活動を行っている。
     彼女たちの指揮官であるミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐によると、
     今回の訪問は全て本人たちの希望によるものである。
     つまり、他意を含まぬ善意からの慰問なのだ。
     彼女たちには、感謝と敬意をもって接するように」


    演説が終わると、その場は静寂が支配するところとなる。
    しかし、彼らの物言いたげな視線は、今なお弾幕のように私たちに注がれていた。


    「…なァ、ブランク大尉。
     これはこれで、居心地悪いんだケド…」

    「む…そうか」


    やっぱり、貴族の人は、ちょっと感覚が違うのかもしれない…
    でも、みんな彼女の指揮には従っているし。
    彼女自身、部下のためにこの席を設けたわけだから…
    信頼関係があるのは確かなのだと思う。


108 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/07(金) 22:35:28.53 ID:8MwdO6Al0

    「あー…その。
     ブランク大尉はああ言ったケド、私たちは付き添いみたいなもんだから」


    エイラは頭をかきながら、やりにくそうに発言する。


    「慰問と言っても、実際に治療にあたっているのは宮藤少尉です。
     私たちは、ここに来ても皆さんのために何ができるというわけでもありません。
     だから…」

    「あれだ、無礼講ってヤツだナ」

    「…君たちがそう言うのなら」


    <<Yeahhhhhhhhhhhh!!!>>


    ブランク大尉が許可を出すと、沈黙を守っていた人たちが、
    まるでスイッチを切り替えたように、再び騒ぎ出した。
    …やっぱり、ちょっと怖い。



    ………



    「…とはいっても、私たち、何をすればいいのかしら?」

    「私が占いでもするか?」


    そうは言っても、とても一人ひとり占っていくなんてできそうにない人数だった。
    困っている私たちを見て、ブランク大尉が待ち構えていたように提案する。


    「皆に、二人の歌を聞かせてやるというのはどうかな?」

    「…歌…」

    「あァ、そういえばラジオではよく歌ッてるな」

    「でも、私…人前で歌うのはちょっと…
     ピアノの勉強はしていたけれど…」


    声楽は、ミーナ中佐の専門だった。
    ブランク大尉は 『わかっている』 とばかりに頷くと、
    部下の一人から何かを受け取り、それをそのまま私の目の前に置いた。


    「これは…ピアノ?」


    小さく抱えられるほどの大きさで、鍵盤も32鍵しかないけれど、
    確かにピアノの形をしていた。


    「部下の私物だ。
     残念ながら、この基地には本格的なピアノは無くてな」


    軽くキーを叩いてみる。
    C・D・E・F・E・D・C…
    可愛らしい音が鳴る。


    鍵盤から顔を上げると、周りから期待を込めた目で見られているのに気づいた。
    少し恥ずかしいけど…
    その期待に応えるしかなさそうだった。


109 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/07(金) 23:09:26.34 ID:8MwdO6Al0

    「器ーの大ーきな人間はー!
     ちょーッとーやそッーとのことなーンてー!
     気ーにするこーとはーなーいんだゾー!」




    私のピアノに乗せて、ちょっと投げやり気味なエイラの歌声が響く。
    "気にすることはないんだぞ" と言いつつも、少し顔が赤い。
    やっぱり、エイラも人前で歌うのはちょっと恥ずかしいらしい。
    それでもなんとか最後まで歌い上げたエイラに、盛大な拍手が降り注ぐ。


    「つ、次はサーニャの番だナ」

    「えっ…でも、私はピアノを」

    「私にだけ歌わせるなンてズルいゾ!
     オマエらだって、サーニャの歌、聞きたいだろ!?」


    <<WHOOOOOOOOOOOOOOO!!>>


    …逃げ道を塞がれた。
    エイラ、ひどい。



    ………



    「♪ねぇ 今夜 君に逢えたら
     光ひとつ ください
     大切に するよ ずっと ずっといつまでも♪」




    エイラはピアノを弾けないので、私一人の弾き語り。
    緊張で指が震える…声も震える。
    ちゃんと弾けているのか、声が出ているのか、自分でもよくわからない。
    それでも、歌い終わると、みんなは大きく拍手をしてくれた。


    「やッぱり、サーニャの歌は最高だヨ!
     ほら、みんな感動してるゾ!」


    周りを見渡すと、確かにみんな、良い笑顔をこちらに向けてくれていた。
    中には、ふざけて抱き合ったりキスをする人たちもいる。
    リベリオンの人たちは陽気だなぁ…


    「じゃァ、次は二人で歌おう!」



    ………



    <<ダナダナダナダナ>>


    「この本どこにしまうの?」

    「ほ…本ダナ」


    <<ダナダナダナダナ>>


    「つけあわせの野菜は?」

    「サラダ…ナ」


    <<ダナダナダナダナ>>


    「頭に巻いてるのはなぁに?」

    「バン、ダナ」


    <<ダナダナダナダナ>>


    「ニックネームは扶桑語で?」

    「ア…ダナ」


    <<ダナダナダナダナ>>


    観客の皆も、コーラスしてくれる。
    …何か楽しくなってきたかもしれない…
    段々変なテンションになってきた。


    「ダメダナ」


110 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/07(金) 23:41:26.82 ID:8MwdO6Al0

    「やれやれ、ブランク大尉…私の許可なしにこんなことを」

    「プレディ中佐、これは一体何の騒ぎだ?」

    「ウィトゲンシュタイン少佐…
     (これでは誤魔化しようがないか…)
     …実は、501から慰問が来ていてな。
     リトヴャク中尉とユーティライネン中尉が余興をしてくれているようだ」

    「501だと! …む? 待てよ…
     リトヴャク中尉…その名前、どこかで…」



    ………



    「♪あなたの歌に わたしの
     ハーモニー かさねて
     夜にはぐれないように 導いて♪」

    「♪何千マイルの旅も 平気
     ふたりなら どこまでも
     ひびかせて Sweet Duet♪」





    私たちが歌い終わると、聴衆は嵐のような拍手と共に、
    口々に賛辞の言葉を投げかけてくれる。

    人前で演奏したり、歌うのは緊張するけど…
    それを聴いてくれる人が笑顔になったり…
    一緒に歌ったり…踊ったり…
    音楽って、やっぱり素敵だな、と思う。
    戦争が終わって、落ち着いたら、
    また音楽の勉強をしたいな…

    その後、歌いつかれた私たちを気遣ってくれたのか、
    ブランク大尉が音頭を取り、ささやかな音楽界はお開きになった。
    外で見ていたらしいプレディ中佐に睨まれて、
    みんな足早に持ち場へと戻っていく。


    私とエイラも、部屋に戻って一休みしようと、
    食堂を出たところで、一人の女性に呼び止められた。


    「おぬしが、サーニャ・V・リトヴャク中尉か」


111 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/08(土) 19:53:15.35 ID:U9O85cz60

    「…はい。 えっと…?」

    「サーニャに用でもあるのか?」


    さっきプレディ中佐の部屋の前ですれ違った人…
    刺すような強い視線を受けて、思わずたじろぐと、
    それを感じたエイラが、間に割って入る。


    「用…という程のものでもないのだがな。
     噂に名高い501が来ていると聞いて、興が沸いたのじゃ」


    そう言って目を細める彼女からは、どこか敵意が感じられた。
    そして、その古風な口調からは気位の高さが伺える。


    「我が名はカールスラント空軍少佐、
     ハインリーケ・プリンツェシン・ツー・ザイン・ウィトゲンシュタイン」

    「………ゴメン、もう一度言ッてくれるか?」

    「ハインリーケ・プリンツェシン・ツー・ザイン・ウィトゲンシュタインじゃ」

    「…あー、私はエイラ・イルマタル・ユーティライネン。
     スオムス空軍中尉だ」


    とりあえず自らも名乗ったエイラは、結局彼女の名前を覚えることを諦めたらしい。
    …扶桑の人からすれば、私やエイラの名前も十分覚えにくいみたいだけど…

    ウィトゲンシュタインという名前には、聞き覚えがあった。
    この基地でも何度も聞いたし、それ以前にセダン基地で黒田中尉も口にしている。
    情報を整理すると、彼女は恐らくセダン基地の責任者の一人で、
    どうやら501に対して、あまりよくない感情を持っているらしかった。
    …このままだと、問題になるかもしれない。


    「初めまして、ウィトゲンシュタイン少佐。
     私がサーニャ・V・リトヴャクです」


    エイラの前に立った私を見て、
    ウィトゲンシュタイン少佐は、微笑を浮かべる。


    「…おぬしの名は、以前より個人的にも知っておった。
     サン・トロン基地のハイデマリー少佐から度々耳にしていたからのう。
     一度話してみたいと思っておったのじゃ」

    「ハイデマリーさんが?」


    そういえば、二人とも同じカールスラント空軍所属みたいだし…
    でも、どういう知り合いなんだろう…


112 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/08(土) 21:24:06.09 ID:U9O85cz60


    と、そこへ。


    「ハインリーケさん!」


    こちらに早歩きでやってくるのは…


    「む、ロザリー…」


    さっき、ウィトゲンシュタイン少佐と二人で歩いていた人だ。


    「すみません。 彼女がお二人に何かご無礼を働いたのでは?」

    「いえ…」

    「これ! なんじゃ、まるでわらわが因縁をつけているように!」


    彼女は、事情を聞く前にまず私たちに謝ってから、名前を名乗った。
    …今の様子だけで、二人の関係がなんとなく想像できた気がする。


    「私はロザリー・ド・エムリコート・ド・グリュンネ。
     ブリタニア空軍少佐です」


    丁寧な挨拶だったけれど、その額には汗が浮かんでいる。
    どうやら、彼女がセダン基地の司令官らしかった。
    ミーナ中佐と同じ…苦労人の気配。

    私たちもグリュンネ少佐に自己紹介を返すと、
    彼女は視察の途中だからと、ウィトゲンシュタイン少佐を引きずって、
    早々にその場を引き上げて行った。


    <<…ロザリー! まだわらわは話の途中だったのだぞ!…>>

    <<…あのまま話していたら、あなたまた余計な問題を…!…>>

    <<…人を子供扱いするでない!…>>

    <<…子供の方がまだ手がかかりません!…>>

    <<…なんじゃとぉ!?…>>

    <<………!…!………>>

    <<…!…………>>


    「…なんだッたンだ?」

    「すまなかったな。 リトヴャク中尉、ユーティライネン中尉」


    呆然としている私たちの後ろに、いつの間にかプレディ中佐が立っていた。
    どうやら、今の様子を見ていたようだった。
    ということは、たぶんグリュンネ少佐も、
    彼女から事情を聞いて、かけつけたんだと思う。

    「彼女からすれば、自分たちの獲物を君たちに取られた気分なのだろう。
     まあ…気難しいお嬢さんだが、基本的に悪気はないんだ。
     あまり気にしないでやってくれ」


    プレディ中佐はそう言っていたけど…
    彼女は、他に私に話があったんじゃないかな…?
    だけど、今の私にそれを確かめることはできそうになかった。


113 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/09(日) 18:18:48.28 ID:NwYHaBdv0


    その後、負傷兵の治療が終わったらしい芳佳ちゃんたちと合流した。
    芳佳ちゃんは、長距離飛行の上に立て続けに治癒魔法を使ったにも関わらず元気で、
    むしろリーネさんの方が疲れているように見えた。

    彼女たちは、ここでもみんなのために食事を作りたいというので、
    プレディ中佐に許可を取り、私たちも夕食の準備の手伝いをする。
    補給が遅れているみたいで、満足な食材は揃っていなかったけど、
    それでもなんとか暖かい食事をディジョン基地に振舞うことができたと思う。

    芳佳ちゃんもすっかりリベリオン軍の人たちと打ち解けたようで、
    (リーネさんは少し怖がっていたけど)
    食事の後、基地のみんなで集まって記念撮影をした。
    少なくとも、ディジョン基地の人たちとは仲良くなれたと思う。



    ……



    「…以上です」

    「了解。 サーニャさん、エイラさん、ご苦労様」


    夕食が終わってから、しばらく後。
    私とエイラは、ミーナ中佐に定時報告を行っていた。


    「ところで、宮藤さんの様子はどう?」

    「ピンピンしてるヨ」

    「私たちの中で、一番元気です」

    「そう、安心したわ。 坂本少佐やバルクホルン大尉も、ずっと気にかけていたのよ」

    「何かあッても、私たちがついてるから大丈夫だッて」

    「そうね。 明日の帰り道も気をつけて」

    「はい。 お疲れ様です、ミーナ中佐」


114 :今日はこれだけ ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/09(日) 19:13:06.76 ID:NwYHaBdv0

    「フゥ…なんとか無事に終わッたナ」


    通信を終えると、エイラが大きく伸びをする。
    いつも通りに見えたけど、やっぱり気を張っていたみたいだった。


    「じゃ、部屋戻ッて…今日もタロット占いやるか?」

    「でも、エイラ。 疲れてるんじゃない?」

    「タロットやッてると、なんか落ち着くんだよナ」


    確かに私も、夜間哨戒の時に歌を歌っていると心が落ち着くし、
    趣味って、そういうものなのかもしれない。



    ………



    「明日は、朝一で出発するんだッけ?」

    「うん。 早めにサン・トロン基地に戻った方がいいと思うし」

    「じゃ、あんまり夜更かしできないか…
     今日占うのは一人だけにしておいた方がいいナ」


    エイラは、タロットを取り出してパラパラやると、私の方を見て得意げな顔をする。


    「その分、今回の占いは特別だ。
     そいつが今日一日どんな様子だったかも見てやろう」

    「そんなことできるの?」

    「ま、あんまり細かいトコまではわからないケドさ」



    とにかく、一人だけ指定すればいいみたい。
    誰のことを占ってもらおうか?



    >>115



115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/09(日) 22:34:51.60 ID:g1yqg959o

    ハインリーケ


116 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/10(月) 21:49:50.03 ID:femvIYqS0

    「…? 誰だッて?」

    「ハインリーケ・プリンツェシン・ツー・ザイン・ウィトゲンシュタイン少佐…」

    「エート…どッかで聞いたコトあるナ…」


    どうやら、彼女の名前を綺麗さっぱり忘れている様子だった。
    …私も、二回聞いていなければちゃんと覚えられていなかったかもしれないし、
    無理もないのかもしれないけど。


    「食堂の前で会った、黒いカールスラントの制服を着た…
     ほら、グリュンネ少佐と一緒にいたじゃない」

    「あァ、あのやたら態度のデカいヤツか。
     …サーニャ、もしかして気にしてたのか?」


    プレディ中佐や、グリュンネ少佐は、
    彼女が501に対して敵対心があるから、私たちに会いに来た…
    そういう風にとらえているみたいだった。
    でも彼女は、本当は私個人に対して何か言いたいことがあったんじゃないか…
    そんな気がしていた。
    問題を起こすわけにはいかなかったから、直接本人に確かめることはできなかったけど。


    「エイラ、占ってくれる?」

    「ウーン…私も、よく知らない相手だから、
     あまり詳しいコトはわからないかもしれないケド…
     サーニャがそう言うなら、占ッてみるよ」


    そう言うと、エイラは慎重にタロットを操り、
    その意味を読み取っていく。


    「…ン。 えッと、なんだっけ?
     ………ハイ…プリン…タイ……プリンでいいか」

    「…本人の前で、その名前で呼ばないでね、エイラ」

    「アイツの象徴は "皇帝"
     …坂本少佐と同じカードだケド "支配" の意味が強いナ。
     ゴーマイウェーなお姫様って感じだ」


    この場に彼女が居たら、そろそろ国際問題に発展しそうだ。


    「で、サーニャに対する感情は… "女帝" 逆位置。
     これはモチロン "嫉妬" を意味してるんだろう。
     プレディ中佐の言う通り、501に手柄を横取りされたからッて理由とも重なるし」


    …そうなのかな? ただ、私の考えすぎ?
    なんだか、納得がいかないけれど…


    「プリン姫は今日一日、このディジョン基地で視察をしてたみたいだ。
     …でも、意外だケド…
     アイツ、割とこの基地の連中には好意的に見られてるらしい」


    エイラが見つめるのは、太陽のカード。
    成功や祝福を意味する、人間関係を示すものとしては理想的なカードだった。


    「ウーン…なんか、占ッたら余計わかんなくなったナ。
     一体どういうヤツなんだ? アイツは」

    「悪い人じゃないってことじゃないかしら」

    「そうなのかなァ…ウーン」


117 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/10(月) 22:25:44.56 ID:femvIYqS0


    明日は、朝一番でここを発って、サン・トロン基地まで戻ることになっている。
    私たちは、占いを早めに切り上げて休むことにした。
    しっかり眠って魔力を回復させておかないと、帰れなくなってしまう。
    私は、制服を脱いで、ベッドの上で丸くなった。


    『今日は…朝から大変だった…』

    『一日の半分は、空の上で…』

    『どうなるか心配だったけど…ディジョンやセダンの人たち…思っていたよりずっと気さくだった…』

    『芳佳ちゃんも…一番元気だったし…』

    『エイラやリーネさんは…やっぱり…ちょっと疲れてたみたいだけど…』

    『ミーナ中佐たち…心配してるかな…』

    『…ウィトゲンシュタイン少佐…彼女……は………』


    Zzzz


    ・

    ・・・

    ・・・・・・

    ・・・・・・・・・・

    ・・・・・・・・・・・・・・・・


    <<キュゥン...ザッ...ザザッ...>>


118 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/10(月) 23:36:27.68 ID:femvIYqS0


    「♪~~~♪~♪~~~♪♪♪~~♪♪


     …静かな空。 ついこの間の戦いが、まるでウソみたい」


    <<ザザザ...キュイィン...ザッ>>


    「? これは…通信…?」

    「…私だ。 聞こえるか? ハイデマリー」

    「ウィトゲンシュタイン少佐? …こんばんは」

    「うむ。 そちらの空はどうだ?」

    「…えっと…異常ありません」

    「…そうか。 残党でも現れれば、わらわが飛んで行くのだがな」

    「…敵は現れない方が…平和でいいと思います…」

    「ふん、正論を言いおる。
     こちらとしては、やられっぱなしで振り上げた拳のやり場に困っておるわ」

    「…すみません」

    「むう。 変な所で謝るでない。
     これでは、わらわがおぬしをいじめておるようではないか」

    「す、すみません…」

    「…やれやれ。
     そういえば今日、おぬしの友人に会ったぞ」

    「私の、友人?」

    「サーニャ・V・リトヴャク中尉。
     おぬしが、よく口にしていた名だったな?」

    「サーニャさんと?
     あ…そういえば、ミーナ中佐から聞きました。
     ユーティライネン中尉、宮藤少尉、ビショップ曹長と一緒に、
     休暇をおしてディジョン基地に慰問へ行っていると」

    「…おぬしは、普段寡黙なくせに、あやつの話になると饒舌になるのう」

    「そ、そうでしょうか?」

    「そうじゃ。 人を他人行儀に階級付けで呼ぶおぬしが、
     あやつのことだけはファーストネーム、それも愛称で呼びおる」

    「…私にとっては、数少ないお友達ですから」

    「…数少ない…か。
     人間というのは、自分で思っている以上に、
     周りから気にかけられているものだが、な」

    「…?」

    「気にするな、ただの戯言じゃ。 では、またな」


    <<シュイン>>


    「…結局、何の用だったんだろう…」


119 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/12(水) 23:36:35.75 ID:HLsOYq180

    ・・・・・・・・・・・・・・・・

    ・・・・・・・・・・

    ・・・・・・

    ・・・

    ・


    「ふゎぁぁ…」


    目を覚ますと、まだ一番鶏も眠っているような時間だった。
    なんだか、またおかしな夢を見た気がするし、
    私もまだ眠っていたいけど…そうもいかない。
    シャツに袖を通して、ズボンを身に付け、ベルトを巻いて…
    さあ、もう行かないと。


120 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/13(木) 00:37:25.40 ID:a+/HNFpq0


    食堂では、すでに起きていた芳佳ちゃんが食事の用意を済ませていた。
    彼女は、疲れを知らないのかしら…
    まだ眠そうなエイラとリーネさんも交えて、4人で簡単に朝食をとる。


    出発の前にプレディ中佐に挨拶をしておこうと思ったけど、
    この時間ではさすがに早すぎるかもしれない。
    そう考えて、先にハンガーで出発準備を整えることにした。


    するとそこには…


    「おはよう、501の諸君。 もう行ってしまうのか?」

    「プレディ中佐…おはようございます」

    「君たちのお陰で色々と助かった。
     …何しろ、部下の連中がこんな早起きをするのは初めてだ」


    肩をすくめるブランク大尉の後ろで、リベリオン軍の人たちがにこやかに敬礼する。


    「帰すのは惜しいが、ストライカーの整備は万全にしてある。
     安心してガリアの空を楽しんでくれ」

    「ブランク大尉、皆さん…ありがとうございます」


    大きく手を振って見送ってくれるディジョン基地の人たちと別れ、
    私たちはサン・トロン基地の帰路へとついた。


    「面白い子たちだったな」

    「ああ。 最初は、ヴィルケ中佐が我々に恩を売るために送り込んだのかと思ったが」

    「くくっ…やり手で知られる彼女の部下とは思えなかった。 およそ軍人らしくない」

    「確かにな。 しかし、あれが501の強さなのかもしれん」

    「彼女らのおかげで、この基地にも士気が戻った。 我々も負けてはいられないな」

    「差し当たり、セダンとの仲直りからか…やれやれ」


121 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/13(木) 01:45:13.80 ID:a+/HNFpq0

    「いい人たちだったねー」

    「そうだね。 私、もっと怖い所だと思ってたから…ホッとしたよ」


    芳佳ちゃんとリーネさんが、口々に感想をもらす。


    「まァ、そもそも慰問を受け入れたッて点だけでプレディ中佐は評価できるヨ。
     ヨソの部隊に借りを作りたくないッて突ッぱねる方が普通なんだから」

    「そういうものかぁ。 軍隊ってややこしいね」


    プレディ中佐が私たちの慰問を受け入れた理由は、
    たぶん芳佳ちゃんの存在が大きかったんだと思う。
    …本人は意識していないみたいだけど…
    彼女は今や "奇跡の魔女" として有名になっている。

    訓練も受けていない初飛行で赤城を救ったことを皮切りに、
    刀一本で超大型ネウロイを撃墜した…
    ストライカーなしに中型を撃破した…
    失われた魔力を自ら取り戻した…
    …なんて、仲間の私でも信じられないようなことを次々やってのけている。

    彼女の伝説の中に、大和内部での爆発事故の負傷者を、
    一人残らず治療した…というものがある。
    プレディ中佐も、その噂を聞いていたのかもしれない。


    「でも、ディジョン基地の人たちの力になれたなら、よかったよ」

    「うん」

    「そうだナ」

    とにかく、その意見にはみんな同意した。



    ………



    帰り道も、セダン基地に立ち寄らせてもらっている。
    今回も黒田中尉が扶桑のお茶を淹れて私たちをねぎらってくれた。


    「ところでサ、ディジョンでオマエの上司にケンカ売られたんだケド」

    「あぁ…やっぱり…」

    「やッぱり? やッぱりッてナンダヨ!」

    「すすす、すみません!」


    エイラも、黒田中尉とすっかり打ち解けたみたい。

    ガリアにも慣れてきたけど…辞令が下れば、じきにここを離れることになる。
    出会いがあれば、別れもあって…
    私たちは、その2つが他の人よりも多かった。
    少し寂しさを覚えながら、私はエイラにくすぐられる黒田中尉の姿をぼんやりと見つめていた。

 
122 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/14(金) 00:00:40.30 ID:eL2Z/h0N0


    一日半ぶりにサン・トロン基地へと戻ってくると、ミーナ中佐と坂本少佐が出迎えてくれる。
    ディジョン側からも連絡があったはずだけど、やっぱり心配していたみたいだった。


    「皆さん、ご苦労様。 プレディ中佐からもお礼が来ていたわ」

    「さすがに、長距離飛行の往復で疲れているだろう。
     お前たちの今日の訓練は、免除としておく」

    「オー。 助かッたー。
     さすがの私も、クタクタだヨ」


    ストライカーを脱ぐと、遠泳の後にも似た脱力感が襲ってくる。
    私たち4人とも、疲れていた。


    「こらこら、休むなら自室に戻ってからにしろ」


    格納庫に座り込んだエイラは、それを咎められてヤレヤレと体を起こす。
    そこに、シャーリーさんとルッキーニちゃんがやってきた。


    「おっ、サーニャたち戻ってたのか」

    「おっかー!」

    「お二人は、これから訓練ですか?」

    「ああ。 …ま、昨日はちょ~っとばかしハメを外しすぎたからなぁ。
     今日は大人し~くマジメ~にやるさ。 ハハハ!」

    「ミーナちゅーさにも怒らりたしね」


    …何があったかは、聞かないでおこう。

    訓練に向かう二人を見送った私たちは、
    装備を片付けた後、一度部屋に戻ることにした。


123 :今日はこれだけ ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/14(金) 00:19:51.43 ID:eL2Z/h0N0


    自室に戻って、一息つく。
    この基地も少し落ち着いたみたいで、部屋の中は静かなものだった。
    一人でこうしていると、シンとした空気に…眠くなる。

    エイラや芳佳ちゃん、リーネさんは、私と同じように部屋で休んでいる所だと思う。
    他のみんなは、訓練中かな…さっきの様子だと、ミーナ中佐も今日は参加しているのかも。
    ハイデマリーさんは、もう起きてる時間かな?

    このまま部屋にいると、また寝てしまいそうだし…
    どこか行ってみようか?


    1、エイラに会いに行く
    2、芳佳ちゃんを訪ねる
    3、リーネさんの部屋に行く
    4、みんなの訓練を見に行く
    5、ハイデマリーさんが気になる
    6、やっぱり部屋で休む


    >>124



124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/14(金) 01:16:39.09 ID:MeGjowTYo

    5


125 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/15(土) 10:10:37.32 ID:E4+qkLwX0


    そういえば、昼の間ハイデマリーさんはどうしているんだろう。
    ちょっと探しに行ってみようかな…



    ………



    この時間、ハイデマリーさんは自室には居ないみたいだった。
    考えてみれば、元々夜間戦闘航空団の1飛行隊長という要職についていたわけだし、
    忙しいのかもしれない…
    彼女の部屋の前で思案に暮れていると、ちょうどそこへ本人が戻ってきた。


    「サーニャさん、戻られていたんですね。 おかえりなさい。
     …私に何かご用でしたか?」

    「少しお話できたらと思ったんだけど…ハイデマリーさん、お忙しそうですね」


    書類を小脇に抱えている所を見ると、やっぱり仕事中だったみたい…


    「…観測班の報告書をまとめていたんです。
     よかったら、サーニャさんのご意見もお聞かせください」


    私の視線に気づいたのか、気を遣わせてしまったのかもしれない。
    でもせっかくの提案だったので、私はそれに頷いた。


126 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/15(土) 11:45:35.57 ID:E4+qkLwX0


    報告書によると、母艦型の撃墜以降、
    ガリア地方ではネウロイの観測数が激減しているらしい。


    「…とはいえ、今回の襲撃自体が想定外の出来事でした」


    空中に細かい金属片をばら撒くことで探知や通信を妨害する、
    いわゆる、チャフをネウロイが散布したことがその原因だった。
    現在では、その影響もなくなっているらしいけど…
    こちらの観測は、常に裏をかかれてきている。


    「やはり、少なくとも戦線が回復するまでは楽観はできませんね」


    そう結論付けると、ハイデマリーさんは書類の結びに丁寧にサインした。


    「やっぱり、忙しそうですね…」


    彼女の邪魔をしてしまったような気がして、申し訳なくなる。


    「そうでもないですよ。
     ミーナ中佐がいらしてから、私の仕事はずいぶん減りましたから。
     今日の書類仕事はこれくらいです」


    その言葉も私を気遣ったものなのかもしれないけど、
    ミーナ中佐の名前がつくと、やたらと説得力があった。


    「サーニャさんは、夢はありますか?」

    「夢…?」

    「…すみません、唐突で。
     私はウィッチになってから、将来の事とかあまり考えてなくて…
     退役したら、実家のワイン商を手伝うんだろうなって思っていたんですが、
     この前両親が、私の好きにしていいって手紙で言ってくれたので…今、色々考えてるんです」


    なんとなく、荷馬車でワインを運ぶハイデマリーさんが頭に浮かんだ。
    …似合うような、似合わないような。


    「私は…軍に入るまでは、ウィーンで音楽の勉強をしていました。
     だから、平和になったら、またピアノを弾けるといいなって…」

    「そういえば、ラジオでも披露されていましたね。
     この基地にピアノがあれば、是非サーニャさんに弾いていただきたいんですが…」


    あのピアノは、ミーナ中佐が設置してくれたものだった。
    自分も昔、歌手になる夢を持っていたから…私に、夢を追い続けて欲しいって。
    いつも私のことを気遣ってくれて…感謝の言葉もない。
    普通の基地だったら、ピアノを弾く機会なんてないんだから。
    …でも、そういえば…


    「…そういえば、ディジョン基地でおもちゃのピアノを貰いました。
     リベリオン軍の人が 『弾けない自分が持っていても宝の持ち腐れだから』 って」

    「今、持っているんですか?


     それなら…もし、サーニャさんがよろしければ…」


127 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/15(土) 12:39:45.24 ID:E4+qkLwX0


    おもちゃとはいえ、立派な音の鳴るピアノ。
    基地の中で弾くわけにもいかないので、少し離れた緑地帯に場所を移した。
    この前散策に来た時は気づかなかったけど、少し開けた所にテーブルが設置されている。
    基地の人が、時々休憩に使っている場所らしい。

    "山の音楽家" "こぎつね" "かっこう"
    …知っているカールスラントの曲を弾いていく。
    ハイデマリーさんも、曲にあわせて歌を口ずさんでいる。


    「…懐かしいです。 子供の頃、よく歌いました」


    私は、音楽の中でも特に、童謡が好きだった。
    誰でも歌えるような、やさしい歌詞とわかりやすいメロディで作られていて、
    子どもも大人も一緒になって歌えるから。


    「ハイデマリーさんも、弾いてみますか?」


    少し思いついて、ピアノを差し出してみる。
    慌てた彼女は、困った顔をした。


    「でも、私はピアノを弾いたことが…」

    「…ここと、ここを、交互に弾いてみて」

    「こう…ですか?」


    おそるおそるという感じで、キーに触れるハイデマリーさん。
    左右の人差し指が、不安げに音を奏でる。


    「もっと速く…そう、そのまま」


    リズムが一定になった所で、それに合わせて私もキーを弾いていく。
    彼女の弾く2音は、私の弾くメロディに乗って一つの曲になった。


    「…! すごい…和音になった…」


    曲が終わっても、キーを叩き続けていたハイデマリーさんは、
    私が鍵盤から手を離したことに気づいて、ようやく指を止めた。


    「ピアノって、他の楽器と違って二人でも弾けるんです。
     私も…小さい頃、こうしてお父様と一緒にピアノを弾いて…
     たぶん、音楽を好きになったのはそれから」

    「確かにこれは、感動しますね」



    その後、一緒に何曲か弾いてみた後、
    簡単な曲をハイデマリーさんに教えてあげた。
    彼女も音楽が好きみたいで、喜んでくれたみたい。

    気がつくと、日が傾き始めていたので、
    ハイデマリーさんは夜間哨戒の準備のために急いで基地に戻っていった。


128 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/15(土) 12:53:10.14 ID:E4+qkLwX0


    そろそろ夕食の時間になる。
    今日はお昼を食べ損ねていたことに、今になって気づいた。
    途端におなかの虫が不満の声をあげる。
    それにせかされて、食堂に向かう足が早くなった。

    まだ早いかな? と思ったけど、テーブルにはもう先客が座っていた。
    そこに居たのは…


    >>129


129 :sage [sage]:2012/12/15(土) 15:51:11.01 ID:E/zERCN40

    ミーナ


131 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/16(日) 17:55:24.04 ID:FI+dJxVQ0

    「あら、サーニャさん」

    「お、さーにゃん。 おつかれー」


    ミーナ中佐とハルトマンさんが並んで座っていた。
    中佐は、朝食の時はいつも一番に顔を出すけど…夕食は、仕事で遅れることが多い。
    こんな時間に食堂に居るのは、珍しい気がする。


    「ずいぶん早いんですね」

    「今日の夕食は、トゥルーデが作ってくれるっていうから。
     『宮藤もリーネも、今日は疲れているだろうから』 …ですって」

    「私も手伝おうと思ったんだけど、
     『いいから座ってろ!』 って、とりつくしまもなかったよー」


    …そういえば、ハルトマンさんは…料理が苦手なんだっけ。
    ミーナ中佐も、料理だけは不得意だとか…
    万能に思える隊長の、意外な弱点だった。


    「じゃあ、私もバルクホルン大尉のお手伝いを…」

    「サーニャさんだって、今日は疲れているでしょう?」

    「そーそー。 トゥルーデも、あれで結構料理上手だから、任せときなよ」


    …料理くらいなら、大した負担にはならないんだけど…
    好意に甘えて、大人しく席に着くことにした。
    中佐たちとも、お話してみたかったっていうのもあるし。


132 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/16(日) 18:56:53.85 ID:FI+dJxVQ0

    「…あの、お二人は…将来の夢ってありますか?」

    「ん? どったの、急に」


    501のみんなの夢の話は、前にも聞いたことがあったと思うけど…
    さっきのハイデマリーさんとの話題が、まだ頭に残っていた。


    「そう、ハイデマリーさんが…」

    「んー…夢かぁ…
     私は、本当は父様みたいな医者になりたかったんだけど…
     宮藤のこと見てると、それも考えちゃうんだよね」

    「芳佳ちゃんを?」

    「うん。 医者って…報われないこともある、辛い仕事だしさ。
     私がなれたとしても、宮藤みたいにまっすぐ患者に向き合えるのかなぁ…って」


    確かに、芳佳ちゃんは強力な治癒魔法を使うことができる。
    でも、芳佳ちゃんの本当にすごいところは、
    魔力を失った時も、落ち込む様子をまるで見せなかったこと。
    夢を叶えるために、扶桑から遠く離れた欧州への留学を、迷わずに決めたこと。
    芳佳ちゃんのそういう強さを、ハルトマンさんも感じているようだった。


    「…少なくとも、今の私が医者になるより、
     ウィッチとして戦う方が、ずっと多くの人を助けられると思うから…
     飛べなくなるまでは飛ぶことだけを考えるのが、私にできること…かな」

    「フラウ…」

    「にゃはは。 ミーナはどうなのさ?」


    ハルトマンさんは照れ隠しのように笑うと、矛先をミーナ中佐に変える。


    「…そうね。 歌手になりたいって夢は、今もあるけれど…
     カールスラントの奪還も、まだ果たせていないし…
     それに、501には、問題児が多いから」

    「なんだよぉ。 私のことか?」

    「ふふ。 私が安心できるまで、軍から離れることはできそうにないわね」


    頬を膨らませるハルトマンさんに、ミーナ中佐が微笑む。
    そこには、二人の信頼関係が感じられた。

    ミーナ中佐も…そろそろ、あがりの時期が近づいている。
    態度には表さないけど…
    カールスラントでの戦いを前に、隊長として、重責を感じているはずだった。
    いつになく真面目なハルトマンさんの言葉には、
    そんなミーナ中佐を思いやる意味もあったんだと思う。


133 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/16(日) 19:14:31.77 ID:FI+dJxVQ0

    「できたぞ。 待たせたな」


    厨房から出てきたバルクホルン大尉が、料理を運んでくる。
    肉料理とスープ…アイスバインとアイントプフ…だったかな?
    それに、お決まりの、山盛りのじゃがいも。


    「うわーい! いただきまーす!」

    「ハルトマン、ちゃんと手を洗っただろうな?」


    厳しい口調でそう言いながらも、
    ハルトマンさんに運んだお皿は、心なしか量が多かった。
    さっきの話が聞こえていたのかもしれない。

    …それにしても、カールスラントの人たちって、
    じゃがいもをあんなに食べて、太らないのかな…?
    厳しい訓練を課されていることもあって、ウィッチは基本的に細身な人が多いけれど。
    これだけの量がお腹に入ってしまうというのも、また不思議だった。


134 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/16(日) 19:30:54.07 ID:FI+dJxVQ0


    夕食を済ませて、今夜もエイラの部屋に来ている、
    当の彼女は、なんだかぐったりしていた。


    「エイラ、どうしたの? 疲れてる?」

    「イヤ…ちょッと食べ過ぎただけだ。
     カールスラントの料理は、腹にたまるナ…」


    苦しそうにお腹をさすりながら、ベルトポーチを開く。
    …大丈夫かしら。


    「…フゥ。 さ、誰を占う?
     今日は通常運行だから、3人までいけるゾ」

    「えっと…」


    【3人】…どうする?


    >>135



135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/16(日) 21:45:32.31 ID:YrqoOWEM0

    ハイデマリー、ミーナ、宮藤


136 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/17(月) 19:50:56.11 ID:bz7Trl2A0


    今日を振り返ってみると、この3人の顔が思い浮かんだ。


    「ミーナ隊長はわかるケド…後の二人はもう占ッたじゃないか」

    「ダメなの?」

    「…ダメッてコトはないけどサ…
     (なんでよりによってその二人なんだよ…)」

    「…エイラ、どうしたの?」

    「もー! わかッたヨ!
     じゃ、まだ占ッてない隊長からやるゾ!」


    なぜかプリプリしながら、エイラはカードを切っていく。


    「隊長を象徴するのは "教皇"
     慈悲、協調、尊敬を表すカードだ」

    「ミーナ中佐のためにあるようなカードね」

    「まァ、確かに。
     サーニャに対するカードは "女教皇"
     仲間として、サーニャへの心配や配慮が見られるナ」


    仲間として…
    確かに、私はミーナ中佐にいつも助けられている。
    でも、私の方からは、仲間として…何かしてあげられているのかな。
    何か、隊長のためにできることがあったのかもしれない…
    …ううん、これからできることを考えるべきだよね。


137 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/17(月) 20:11:53.96 ID:bz7Trl2A0

    「さて、後の二人は…
     そいつ自身の状態とか、今後の運命を見てみよう」


    エイラの運勢占いは、縁起の悪い結果が出やすい気がするんだけど…
    …大丈夫かしら?


    「シュナウファーの状態は… "月" 正位置だ」


    やっぱり、よくないカードだった。


    「不安定、ッて意味が読み取れる。
     なんか悩みでもあるんじゃないか?」

    「悩み…」

    「まァ、解釈はサーニャに任せるヨ。
     で、宮藤の方は…と。
     "太陽" …逆位置か」


    …二枚とも、互いに位置が逆なら、良いカードだったんだけど。
    太陽の逆位置は、不調を表しているはずだった。


    「宮藤のヤツ、病み上がりなのに無茶してたからなァ。
     また魔力消失、なんてコトになんなきゃいいケド」

    「縁起でもない…」


138 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/17(月) 20:50:55.88 ID:bz7Trl2A0


    日課の占いも終わって、自室に戻ってきた。

    猫は新しい家に引っ越すと、
    自分の匂いのついていない部屋に不安になるっていうけれど。
    この基地のベッドにも、馴染んできた気がする。
    でも、そろそろこの部屋ともお別れかもしれない。

    横たわって、まくらに顔を埋める。
    ロマーニャでエイラに買ってもらったまくら。
    あれから使い続けて、すっかり私の匂いが染み付いたものだ。
    これがあれば、また新しい基地に異動になっても大丈夫。


    『…とにかく、慰問が無事に終わって…戻ってこれてよかった…』

    『…今日はハイデマリーさんとピアノを弾いて…楽しかったな…』

    『…ミーナ隊長にハルトマンさん…』

    『…私も、二人の力になれるようにしなきゃ…』

    『…だけど…』

    『…ハイデマリーさんの悩みって、何だろう…』

    『…芳佳ちゃんも…大丈夫……かな……………』


    Zzzzz


    ・

    ・・・

    ・・・・・・・

    ・・・・・・・・・・・・・

    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・


139 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/17(月) 20:52:48.01 ID:bz7Trl2A0



    ――――――


    …今日は楽しかった…

    でも、サーニャさん…
    もうすぐこの基地を去ってしまうのかな…

    私と、あんな風にお話してくれるのは、
    サーニャさんくらいなのに…

    ずっとこの基地にいればいいのに…
    寂しいな…


    ――――――



    はぁ…さすがに今日は疲れたなぁ。

    でも、ディジョン基地の人たちを助けられてよかった。
    私に魔力が戻ったのは、きっとみんなを守るためだもんね。

    …? あれ…?
    …気のせい…かな?

    …大丈夫…だよね?
    私は…坂本さんの分まで飛ばなくちゃ…



    ――――――



140 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/18(火) 19:32:25.08 ID:TVSCdUu30

    ・・・・・・・・・・・・・

    ・・・・・・・・・

    ・・・・・・

    ・・・

    ・


    目を覚ますと、今朝は雨が降っているみたいだった。
    たいていの人は雨を嫌うけれど…私は嫌いじゃない。
    雨粒が地面に降り注ぐ静かな音を聞いていると、
    お父様に作ってもらったあの歌を思い出すから。


    <<ぱんぱぱーん ぱっぱーん ぱっぱぱっぱぱー>>


    …なんて、やっぱり朝からゆっくりしているわけにもいかないか。
    起床ラッパに急かされて、私は部屋を出た。


141 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/18(火) 20:30:41.33 ID:TVSCdUu30


    …太陽が雲に隠れていると、人は憂鬱になると言われているけど、
    今朝の食事風景も、いつもと変わらず賑やかなものだった。


    「トリャー!」

    「なな、な、な…ルッキーニ少尉! 何を…!?」

    「どうだ?」

    「お、おぉー! こりは…なかなかのオオモノ…」

    「ホホウ…期待の新人ッてワケか」

    「貴様ら! 食事中に何をやっている!」


    ルッキーニちゃんは、初対面の相手に後ろから突然抱きつく癖がある。
    あれは彼女流の歓迎の挨拶なのかもしれない。
    真面目な服部さんは困っているみたいだけど…

    そういえば私も、501に来たばかりの頃、やられかけたことがあったような。
    あの時は、気配を察知したエイラが止めたおかげで、未遂だった。
    その後、何故か大げんかに発展したけど、
    さらに不思議なことに、そのケンカ以降、二人は意気投合するようになった。
    一体どういう関係なのかしら…


    思い出に浸っているうちに、食事の手が止まっていたことに気がつくと、
    他のみんなは、もう食事を済ませて食堂から退散を始めている。
    いけない、私も早く食べてしまわないと…

    …あれ?
    私のほかにも、まだ誰かテーブルに座ってる人がいるみたいだけど…

    そこにいるのは、誰?


    >>142



142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/18(火) 21:21:54.73 ID:fkUh9ZIN0

    ハイデマリー


143 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/19(水) 23:33:49.57 ID:62GT3it10


    ミーナ中佐と…
    話しているのは…ハイデマリーさん?
    この時間、彼女は普段なら夜間哨戒に備えて眠っているはず。
    一体どうしたんだろう…


    「―――確証は無いのですが」

    「とにかく、詳しい話が聞きたいわ。
     でもここじゃ…サーニャさん、丁度よかった。
     あなたも一緒に来てちょうだい」

    「…? わかりました」



    ………



    よくわからないまま、二人について作戦司令室までやってきた。
    部屋に入ると、ミーナ中佐はガリアの周辺地図を取り出して、
    会議用の大きな卓の上に広げる。


    「それじゃ、ハイデマリーさん。
     改めて、詳細に説明をお願い」

    「…昨日の夜間哨戒で、アンテナにノイズを感じる空域を発見したんです。
     先日のネウロイによる通信障害の感覚に似ていました」

    「位置は?」


    ハイデマリーさんが、地図に小さな丸を3つ、4つと描いていく。
    位置は…サン・トロンとセダンのちょうど真ん中あたり。


    「地図に表すとこれくらいで、範囲はあまり広くありません。
     でも、近い距離、数箇所でノイズが発生して…」

    「ネウロイの姿は認識できなかったのね?」

    「…はい。
     だから、敵が隠れていたとしても規模もわかりませんし、
     いるかどうかも不明瞭で…」

    「可能性がある以上、放置はできないわ。
     確認のために偵察を送る必要があるわね」

    「私も、今夜また、この周辺を重点的に調べてみます」

    「…ミーナ中佐。
     私も今夜の夜間哨戒に参加します」

    「サーニャさん…」

    「敵の規模がわからないなら、
     いくらハイデマリーさんでも、一人じゃ危険です」

    「………そうね、あなたの力が必要になるわ。
     念のため、エイラさんを加えて、
     今夜は3名で夜間哨戒にあたってちょうだい」


    「了解」「了解」


144 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/20(木) 00:25:04.04 ID:lp0B2c080


    ミーナ中佐の通達によって、今日の訓練は全て中止。
    日中にハルトマンさんとバルクホルン大尉が偵察に行き、
    夜間に再び私たち3人が偵察にあたることになった。
    他の隊員の人たちは、有事に備えて待機している。


    「ヤレヤレ、起きたばッかで、また寝なきゃなんないのか」

    「…お二人とも、すみません」

    「そんな…」

    「別に、シュナウファーが謝るコトじゃないだろ?」


    私たち夜間哨戒班は、任務に備えて仮眠を取ることを命じられた。
    通常よりも体力・魔力の消耗の激しい夜間飛行は、
    睡眠時間と覚醒時間の管理が特に厳しく設定されている。
    エイラの言う通り、眠くないのに眠るというのは中々辛いことだけど、
    ナイトウィッチとしては、珍しくないことだから、もう慣れてしまった。

    ナイトウィッチの部屋は、多くの場合暗室になっていて、
    昼間でも、光に睡眠をさまたげられないようになっている。
    そんな理由で、私とエイラは、
    ハイデマリーさんの部屋にお邪魔していた。


    「3人で眠るには狭いと思いますが…」

    「いいヨいいヨ、慣れてるしナ」

    失礼して、ハイデマリーさんのベッドに横になる。

    「なァ、サーニャ」


    Zzzzz


    「…エッ、もう寝ちゃッたのかヨ。
     じゃ、シュナウファー。 眠くなるまでタロットでも」


    「Zzzzz」


    「お前もかヨ!」


145: ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/20(木) 00:45:10.30 ID:lp0B2c080


    仮眠から目を覚ますと、エイラとハイデマリーさんは、まだ眠っていた。
    時計を見ると、午後2時を回ったところ。
    二人を起こさないようにそっと部屋を抜け出すと、
    ドアの前に蓋のされたトレイが置いてある。


    【夜間哨戒任務、お疲れ様です。
     昼食の時間に間に合わないと思うので、お腹が空いたら食べてください】


    書置きのされた蓋を開けると、トレイには3人分のサンドイッチが並んでいる。
    この字は…リーネさんかしら?
    一皿分をありがたくいただいてから、残りを部屋の机の上に置いておいた。



    ………



    談話室に移動して、サンドイッチを食べていると、
    突然後ろから声をかけられた。
    振り向くと、そこに居たのは…


    >>146



146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/20(木) 02:29:48.41 ID:wyziE+Pao

    エーリカ


147 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/21(金) 23:00:05.21 ID:lL0PeqG+0

    「いっただき~」


    背中ごしの誰かにサンドイッチを一つ奪われる。
    その奇襲攻撃の主は…


    「…ハルトマンさん。
     お腹が空いているんだったら、半分どうぞ」

    「えっ、いいの?」

    「私ひとりで食べるには、ちょっと多いから」

    「さすがさーにゃん、話せる~。
     お昼食べそこねて、おなかペコペコなんだ」


    よく見ると、彼女はずいぶんラフな格好をしていて、
    頭からは、ほんのりと湯気が立ち上っていた。
    お風呂上りみたい。


    「偵察任務の帰りですか?」

    「うん。 雨の中飛び回ったから、もうびしょ濡れ。
     結局、ネウロイも見つからなかったし、散々だよ」


    私の隣の椅子に、小さな体を重たげに投げ出すと、
    ポテトサンドを取って口に運ぶ。


    「あ、おいしー。
     これ、さーにゃんが作ったの?」

    「リーネさんが作っておいてくれたみたいで」

    「そうなの?
     ちぇー、ついでに私たちの分も作ってくれたらよかったのになぁ」

    「こら、ハルトマン」


148 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/21(金) 23:01:45.84 ID:lL0PeqG+0

    「あ、トゥルーデ」

    「…リーネが、我々の分の昼食も用意してくれていた。
     だから、サーニャの分まで食べるんじゃない」


    バルクホルン大尉は、私のものと同じように、
    サンドイッチが盛られたお皿を2つ、テーブルの上に置くと、
    ハルトマンさんの隣に座った。


    「おぉ! さっすがリーネ!」

    「まったく、調子のいい…後で礼を言っておけよ」


    呆れたように言いながら、彼女もサンドイッチを食べ始めた。


    「わかってるって。
     あ! そうだ、さーにゃん。 502の話、聞かせてよ!」

    「む。 その話は、私も聞きたいな」


    そういえば、前にも話して欲しいって言ってたっけ。
    502には、二人の昔の同僚が所属している。


    「ロスマンは、元気にしてた?」


    エディータ・ロスマン曹長…
    小柄で、一見私と同じくらいの年頃に見えるけど、
    百近い撃墜数を誇るベテランウィッチ。
    数多くの優秀なウィッチを育てた戦闘教官として有名で、
    ハルトマンさんも、その教え子の一人だと聞いている。
    普段はとても優しい人で、
    私とエイラがペテルブルグを訪ねたばかりの時も、暖かく歓迎してくれた。


    「彼女は、世話好きだからな。
     …ロスマンが居た頃は、私の苦労も少なかったものだ」

    「どういう意味さー」

    「そういえば、ロスマン曹長…
     ハルトマンさんのこと、心配だって…」

    「むー。 まだ新兵扱いされてるのか?」

    「いや。 ロスマンが心配してるのは、お前の素行の方だろう」

    「ぶーぶー」


    心配と同時に、ハルトマンさんの活躍も喜んでいたんだけど。
    今それを言うと、素行不良の方を肯定する形になってしまいそうだから、
    ここは黙っておこう…


149 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/21(金) 23:02:32.96 ID:lL0PeqG+0

    「クルピンスキーはどうだった?」


    ヴァルトルート・クルピンスキー中尉。
    ロスマン曹長とは対照的に、すらりとした長身で、
    彼女もまた、200機近い撃墜数を誇るスーパーエース。
    …なんだけど…


    「実は、あまりお話できなくて…」

    「えっ、ウソでしょ? そんなはずないって」

    「よく話しかけてはくれたんだけど…
     エイラが 『アイツは危険だ!』 って言って、近づけてくれなくて…」

    「あー…」

    「でも、クルピンスキー中尉の方は、
     エイラを気に入ったみたいで、よく追いかけていました」

    「…変わらないな。 目に浮かぶようだ」

    「いやぁ、ほんと…
     元気そうで何よりだけどさ」


    二人は呆れたような顔をしていた。
    クルピンスキー中尉…
    私から見たら、親切そうな人だったんだけど…


    「ロスマンとクルピンスキーは、
     新人時代の私の先生みたいな人だったんだ」

    「クルピンスキーは、余計なことまで教えてくれたようだがな。
     …しかし、当時はこんな大エースになるとは想像もしなかった。
     初出撃で大失態をやらかしたハルトマンが、な」


    初出撃の時、ハルトマンさんは…
    僚機を敵と誤認して逃げ回り、燃料切れで墜落したんだって、
    その時、長機を務めていたロスマン曹長が、笑いながら話してくれた。
    現在の、怖いもの知らずのように見える彼女からは、想像もつかない。


    「もー、その話はやめてよ」

    「なんだ、褒めているんだぞ。
     それに、どんなエースでもルーキーの時代がある…
     新兵にとっては勇気づけられる話だろう」

    「私の周りだと、初出撃で派手な戦果を挙げてるやつが多いからなぁ。
     ハンナもそうだし、宮藤とか、服部も」

    「確かに、前回、宮藤の救出が間に合ったのは、服部の功績だな。
     あいつも、これからの成長が楽しみだ」


150 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/21(金) 23:03:23.69 ID:lL0PeqG+0


    それから、502隊長のグンドュラ・ラル少佐の腰痛の話とか、
    しばらく話を続けた後、
    ちゃんと髪を乾かしていなかったハルトマンさんがくしゃみをしたので、
    その場はお開きになった。

    それにしても、バルクホルン大尉…
    無口な人だと思っていたけど、ハルトマンさんと一緒だと、
    彼女もよく喋ることに気がついた。
    昔の仲間の話で、懐かしさも手伝っていたんだろうけど。
    なんだか珍しい一面を見た気がする。


151 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/22(土) 20:22:18.71 ID:wrCqQ1oc0


    出撃前。
    私たち夜間哨戒班とミーナ中佐は、
    改めて会議室に集まって、今夜の作戦内容の確認をしていた。


    「…まず、昨晩私が異常を確認した座標まで二人を先導します。
     サーニャさんの全方位広域探査なら、何かわかるかもしれません」

    「状況がはっきりしないから、単独行動は絶対に避けてね」

    「ネウロイが現れた時は、どうするんだ?」

    「以前、同じ状況で敵に遭遇した時は、通信が遮断されました」

    「…基地との通信が遅れる可能性があるわね。
     問題の空域に近づいたら、まずその時に連絡して。
     その後通信が妨害されたら、ハイデマリーさんの指示に従うように」


    「了解」「了解」


152 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/22(土) 20:24:08.69 ID:wrCqQ1oc0


    雨はまだ降り止まず、冷たい滴が頬を打つ。
    基地の明かりが見えなくなれば、そこは完全な闇の世界。


    「こんなんじゃ、通信妨害どころか何も見えないヨ」

    「もうすぐ雲の上に出ます」


    こんな環境でも、ハイデマリーさんは迷うことなく一直線に飛んで行く。
    彼女の夜間視能力は、どんな暗闇でも真昼と変わらずに見通すことができる。
    子どもの頃は、能力が強すぎて、日中外に出られなかったほどらしい…

    彼女の言葉通り、厚い雲を突き破ると、
    とたんに視界が開けた。


    「フィー、ようやく月が見えたナ」


    今日の月は、三日月。
    明かりにするには少し心細いけど、
    それでも濡れた髪をかきあげるエイラの姿が見える程度には明るい。


    「問題の場所は、ここから西へ15分ほどです」

    「じゃ、とりあえず基地に連絡しといた方がいいか」


    「…状況はわかったわ。 それじゃ、15分後にまた連絡して。
     連絡が遅れた場合、こちらから救援部隊を送ります」

    「了解」


    ミーナ隊長との通信を済ませて、私たちは更に西へ。
    星が見えて安心したのか、エイラはおどけてくるくる回りながら先頭を行く。


    「やっぱ、星が見えると安心するヨ」


    アンテナを持たないウィッチにとっては、
    夜空の月や星は生命線とも言える。
    それを頼りにしなければ、視界が見えないというのはもちろんだし、
    方角を知ることもできず…何より、怖い。

    暗闇が怖いというのは、ナイトウィッチであっても同じこと。
    少なくとも、私はそう。
    星の輝きや、ラジオの音がなければ、一人で飛ぶことなんてできないと思う。


153 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/22(土) 20:24:52.65 ID:wrCqQ1oc0

    「…サーニャさん、ラジオをつけてみてください」

    「…? あれ…」


    ハイデマリーさんに言われて、
    魔導針のチャンネルを合わせてみようとしたけれど、
    聞こえてくるのはノイズだけで、一向につながる気配がなかった。


    「やっぱり…」

    「この辺りか?」

    「はい。 ノイズの発生する空域の中心付近です。
     …基地とも、繋がらなくなりました」


    気を抜いて星を眺めていたエイラが、瞬時に警戒態勢を取る。
    私も、背中のフリーガー・ハマーの存在を確かめた。


    「こりゃ、アタリかもナ。
     …ッたく、観測班は何やッてたんだ」

    「サーニャさん、広域探査で…何かわかりますか?」

    「やってみます」


    目を閉じて、全神経をアンテナに集中させる。
    世界から色が消え、代わりに "視界" が急激に広がった。



    .. ................................. ...
    .....@@@..@@.@@............................
      ............................... .........
    .. ..............+@......... ......
    .....       .........................



    ノイズの中に、見えるのは…

    「…これは…ネウロイ…と…
     …誰か…戦ってる…?」


154 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/22(土) 20:26:10.80 ID:wrCqQ1oc0


    アンテナが捉えた位置へと、急行する。
    そこで私たちが見たものは…


    「ふん、遅かったのう。 …サン・トロンの幽霊よ」


    降り注ぐネウロイの残骸を浴びながら、それを気に留めることもなく、
    月の光を受けて、金色に輝く髪が私たちを見下ろしている。


    「あなたは…」

    「なんだ、プリンか」


    …エイラの呟きは、幸い彼女の耳には届かなかったらしい。


    「ウィトゲンシュタイン少佐、どうしてここに?」

    「ふっ…知れたこと。 セダンにも残党の情報が伝わってきたのでな。
     サン・トロン基地に先駆けて退治に来たまでじゃ」


    そういえば、この空域はサン・トロンとセダンの管轄のちょうど狭間あたり。
    当然、セダンにも通達が行っているはずだった。
    でも…


    「一人で交戦なんて…」


    通信環境が確かじゃないこの状況で、
    単独飛行なんて無謀な命令を下す指揮官がいるとは思えなかった。


    「中型の一体程度、わらわ一人で十分よ。
     おぬしらの出る幕は無かったようじゃな」

    「いや、まあ、戦わずに済むならそれでもいいんだけどサ」

    「…いいえ、まだ敵は残ってる。
     仲間がやられたのに気づいて、7体…こっちに近づいてくる…」


155 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/22(土) 20:27:36.14 ID:wrCqQ1oc0

    「7体…じゃと…?
     いい加減なことを言うでないわ!
     わらわの魔導針には、何も感じぬ!」

    「…私にも…
     それだけの数の敵が、今まで観測の網にかかっていなかったなんて。
     本当なんですか?」

    「絶対に来る。
     サーニャのアンテナは、地平線の先まで見えてるんだからナ」


    エイラが、MG42を構えながら言う。
    その確信に満ちた態度に、ハイデマリーさんも考え込み始めた。


    「どうしますか?」

    「…こちらの数は、4人。
     本当に敵の数が7体とすれば…数の上では、不利です」


    既に、基地との通信が途絶えてから30分は経っている。
    判断の早いミーナ中佐のことだから、
    もう増援がこちらに向かっている頃のはずだった。


    「サーニャ、敵の配置はわかるか?」

    「………7体ともデルタ編隊を組んで、まっすぐこっちに向かってくるわ。
     こちらとの接触まで、約10分」


    私が答えると、エイラは銃を背負い直し、
    タロットカードを取り出して占い始めた。


    「なんじゃ? こんな時にタロットなど!」


    ウィトゲンシュタイン少佐は呆れたような、怒ったような声をあげる。
    対して私とハイデマリーさんは、エイラの操るカードを神妙に見つめていた。
    彼女の固有魔法は…未来予知。


    「…私に作戦がある。 どうだ、乗ッてみるか?」


    "星" のカードを見せびらかしながら、エイラはニッと笑った。


156 :内容と関係ないけど ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/24(月) 22:44:01.90 ID:q43XgHvb0

    「敵が見えたら、サーニャが先制してフリーガー・ハマーをブッ放す。
     散り散りになッた敵を、他の3人が1体ずつ墜としていく。
     コレで残りの敵は4体。 数の上じゃ互角になる」


    エイラの作戦は、シンプルだった。
    それに対して、ウィトゲンシュタイン少佐は、
    呆れた様子を隠そうともしない。


    「…明快な作戦じゃな。
     だが、ずいぶん簡単に言ってくれるではないか。
     おぬし、ネウロイを風船か何かと勘違いしておらぬか?」


    確かに、彼女の意見はもっともだった。
    普通に考えれば、エイラの作戦は机上の空論のように聞こえる。
    だけど…私には信じられる。


    「絶対に、成功します。
     だから…どうか、信じてください」


    タロットが示したから、それだけじゃない。
    エイラは、敵の規模や私たちの戦力を考慮した上で、判断した。
    そんなエイラの言葉だから、
    私はいつだって迷うことなく命を預けることができる。


    「サーニャさん…わかりました」

    「ハイデマリー…こんな絵空事に付き合うつもりか?」

    「一時撤退して増援と合流した方が安全だとは思います。
     でも、ここで敵を取り逃せば…また被害が広がるかもしれない」

    「…よかろう。
     失敗したら、501の連中はアホウの集まりだったと笑うてくれるわ」


157 :ルッキーニおめでとう ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/24(月) 22:45:03.26 ID:q43XgHvb0


    エイラの指示によって、全員配置につく。


    「違う違う、もっと右!
     …そうそう! その位置から絶対動くなヨ!」


    私とエイラが中央に、
    ハイデマリーさんとウィトゲンシュタイン少佐がそれぞれ左右に広がった。

    敵の通信妨害で、インカムもダメになっている。
    離れた仲間と連絡を取るには、声を張り上げるしかない。


    「…接触まで、後5分!」


    辺りに張り詰めた緊張感が漂う。
    戦の匂い…慣れていても、気持ちのいいものじゃない。
    だけど、私たちがやらないと。


    「…皆さん! 絶対に敵の近くで孤立しないように…!
     それから退路は…常に確保してください…!」

    「いいか! サーニャが撃ったら、オマエらも続けて撃つんだ!
     何も考えずに全力で撃てば、必ず当たる!」

    「何度も言わずとも承知しておるわ! おぬしこそ、しくじるなよ!」

    「…来ました!」


    雲と星空の狭間に、7つの影。
    それらは、夜の闇に紛れながらも、星明りを反射してチラチラと光って見えた。


    「サーニャ、準備はいいか?」

    「大丈夫」


    射程距離に入るぎりぎりまで、引きつける。
    肩にかついだフリーガー・ハマーに、魔力を込めて…
    狙いは…敵編隊の中央。


    「3…!2…!1…!」


    BANG!


158 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/24(月) 22:46:18.74 ID:q43XgHvb0

    轟音と共に放たれたロケット弾は、敵の群れの中に吸い込まれ、火柱を上げた。
    一瞬、空が明るくなり、黒光りするネウロイの姿が露になる。


    「来るぞ! 迎え撃て!」


    後続のネウロイは、怯んでその足を止めたものの、
    先行していたネウロイは、更に勢いを増し、3方向に分かれて突進してきた。
    …まるで、待ち構えていた機銃掃射の射線上に飛び込むように。

    3体の中型は瞬く間に撃ち抜かれ、キラキラと輝きながら自壊を始める。


    「…! 本当に、当たった…」

    「ハイデマリー! まだ終わってはおらぬ! 次が来るぞ!」


    仲間をやられた怒りからか、生き残りのネウロイが狂ったようにビームを放つ。
    まるでこれを見越していたように、
    ウィトゲンシュタイン少佐がハイデマリーさんの前に立ちふさがり、シールドで防いだ。
    しかし敵の攻撃は激しさを増し、二人は、回避を続けるうちにどんどん高度を増して行く。


    「まずい! 隊列を乱された!」


    エイラも慌てて二人を追いかけようとする。


    「待って、エイラ!
     2体、雲の中に潜って行ったわ!」

    「…くそッ! アイツら、やられんなヨ!」

    「私が目になる! ついてきて!」

    「わかッた!」


    エイラの手を取って、私たちは、雲の中へと飛び込んだ。


159 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/24(月) 22:47:00.45 ID:q43XgHvb0


    冷たい水蒸気がまとわりつく感触とともに、視界が完全に塞がれる。
    私は目を閉じて、エイラと繋いだ手を強く握る。
    暖かい感触に、不安が薄れていくのを感じた。


    「サーニャ、右だ」

    「うん」


    エイラの声に従い、少し右に軌道を逸らす。
    そのすぐ脇を、強い熱源が通り抜けていく。


    「敵は左右に分かれたわ。
     左までの距離…1500……右…2000」

    「左との距離を詰めてくれ。 後1000…いや、800でいい」

    「わかった」


    ネウロイも、私たちが追いかけてくるとは思っていなかったようだった。
    上空での猛攻とは打って変わって、雲の中の攻撃は散漫で、
    たまにかすめるビームも、エイラの未来予知によって危なげなく回避できた。
    暗闇の中、私たちはネウロイを追い詰めていく。


    「距離、700…正面よ」

    「了解。 …こいつで、1機!」


    MG42の咆哮に続いて、コアの砕ける音…
    ネウロイの断末魔が聞こえたような気がした。


    「…反応が消えた。 仕留めたみたい」

    「よーし」


    残るは1体。
    ところが、残ったネウロイは私たちに背を向ける形で、
    どんどんスピードを上げて離れていく。


    「…北の方角…距離、3000…3100…3200…
     ダメ、追いつけない…」

    「このままじゃ、逃げられるゾ!」

    「エイラ、雲の上に出て。
     私は雲の下から追い出してみる」

    「了解。 任せろ!」


160 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/24(月) 22:47:37.74 ID:q43XgHvb0


    繋いでいた手を離し、エイラは上へ、私は下へ。
    全速力でネウロイを追いかける。

    今なお降り続ける雨に打たれて、手に残っていたぬくもりが消えていく。
    私は、心に芽生えかけた不安を振り払うと、
    再びフリーガー・ハマーを構えなおした。

    広域探査で、敵と味方の位置を確認する。
    …エイラは、私の真上。
    私とエイラの間の雲の中に、敵が一体。
    ハイデマリーさんとウィトゲンシュタイン少佐は…南に5000。
    射線上に味方がいないことを確かめてから、
    規則的に弾丸を…1……2……3発…と、撃ち込んだ。

    …うまく行ったかしら?
    もう一度、敵の位置を確認しようとする、と…


    「えっ…」


    すぐ後ろの雲を突き破り、ネウロイが現れた。
    さらに間髪をおかず、私に向けてビームを放ってくる。
    とっさにシールドを展開し、後退する。

    さっき追いかけていたネウロイが、急に後ろに現れた?
    …違う。
    目の前の敵に気を取られるあまり、他の敵の確認を怠っていた…
    ハイデマリーさんたちと交戦していた敵の一体が、
    標的をこっちに変えて迫っていたんだ。

    フリーガー・ハマーはドッグファイトとの相性が最悪に近い。
    これだけ接近されると、構えることすら難しいし、
    仮に撃てたとしても、自分自身も爆風に巻き込まれてしまう。
    私は逃げ回るより他に手がなかった。

    しかし、この中型ネウロイは、
    機動性、火力とも通常のものと比べて段違いだった。
    引き離すこともできず、かといって、
    シールドで耐え続けるのもそろそろ限界だ。

    目の前でネウロイが、最大火力のビームを放とうと構えている。
    このままじゃ…


161 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/24(月) 22:48:18.26 ID:q43XgHvb0


    …と、唐突にネウロイが動きを止める。
    やがてそれはガラガラと崩れだし、鉄くずとなって墜ちて行った。


    「サーニャさん! …ご無事ですか?」

    「まったく! 単独行動は避けろと言っておったろうに!」

    「ハイデマリーさん…ウィトゲンシュタイン少佐…どうしてここに?」

    「敵を1機見失ったと思ったら、サーニャさんの砲撃が見えたので…」


    さっきの威嚇射撃が、ちょうど狼煙の役割を果たしていたらしい。


    「残りの2体はどうなった?」

    「…1体は撃墜しました。 もう1体は…」

    「…サーニャ~! 大丈夫か~!?」

    「…全て、終わったみたいです」


    私は、改めて魔導針に敵の反応がないことを確認すると、
    ほっと胸をなでおろした。


162 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/26(水) 20:01:59.39 ID:Stk1/SCL0

    「それにしても、サーニャよ。
     おぬし、どうやって敵の位置を補足したのじゃ?」

    「あのネウロイは、常に金属片をばら撒いていました。
     だから、ノイズの広がる中心を辿っていけば、
     ネウロイの動きが予測できたんです」

    「ふむ…なるほど、大したものじゃ。
     わらわには出来ない芸当じゃのう」


    私の返答に、ウィトゲンシュタイン少佐は、関心したように頷いてみせる。
    …気難しい人だと思っていたけど、それは誤解だったのかもしれない。
    何しろ、彼女からすれば確証も何もない、
    無茶とも思えるエイラの作戦にも協力してくれたんだから。


    ザッザ...ザザ...ザ...


    「…繋がった? 応答して、ハイデマリー少佐!
     サーニャさん…エイラさんは、無事なの!?」

    「ミーナ中佐…はい、二人とも無事です。
     ネウロイと交戦状態になりましたが…全て撃墜しました」

    「通信状態も、回復したみたいだナ」

    「…そのようじゃな。
     こちらにも、セダンからやかましい声が届いてきたわ」


    インカムに一言二言返してから、それをポケットに放り込むと、
    ウィトゲンシュタイン少佐は私たちに背を向けた。


163 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/26(水) 20:03:07.54 ID:Stk1/SCL0

    「あっ、オイ! もう行ッちまうのか?」

    「我が司令官殿がお怒りなのでな。 今宵はこれまでじゃ」

    「あの…ウィトゲンシュタイン少佐。
     ありがとうございました」

    「む?」

    「私の作戦は、3人じゃ成功しなかったからナ。
     オマエが居てくれて、助かったヨ」

    「ふん、勘違いするな。
     わらわはガリアの空を汚す不届き者を掃除しに来ただけのこと。
     別におぬしらのためにやったことではないわ。
     …それと、エイラよ」

    「ン?」

    「…"オマエ" はよせ。
     ハインリーケでも、プリンでも構わぬ」


    顔を半分だけこちらに向けて、それだけ言い終えると、
    彼女は流星のように、西の夜空へと消えて行った。


    「…聞こえてたみたいね」

    「ウィトゲンシュタイン少佐…怒らせてしまったのでしょうか?」

    「イヤ、照れてるだけだよ、アレは。
     ウチの隊にも、似たようなのがいるからわかる」

    「…くしゅっ!」

    「お? どうしたペリーヌ。 カゼでもひいたか?」

    「こんぐらいの雨で~、なっさけないぞ~」

    「ちょっと体が冷えただけですわ!
     繊細なガリア貴族を、雪が降っても能天気なロマーニャ人や、
     雨の日でも傘を差さないブリタニア人と一緒にしないでくださいませ!」

    「なんでブリタニアまで…」

    「増援の人たちが来たみたいです。
     合流して、私たちも基地に戻りましょう」


164 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/26(水) 20:04:12.00 ID:Stk1/SCL0


    帰還して、濡れた体を乾かした後。
    私たちは、今回の戦いの報告を済ませていた。


    「…とにかく、無事で何よりだったわ。
     それにしても、ウィトゲンシュタイン少佐…
     セダン基地からは、こちらに来るなんて報告は無かったのに…」

    「まァ、どう見てもあれはプリンの独断だったナ。
     たぶん、シュナウファーが心配だったんじゃないか?」

    「…私が、心配?」

    「だってアイツ、ずっとシュナウファーのこと気にしてたゾ。
     気がつかなかったのか?」


    言われてみれば、そんな気がする。
    エイラは、他の人に対してはよく目が利くから…


    「とにかく、悪いようにはしないでやってくれヨ。
     アイツがいたから、ネウロイを全滅できたんだしサ」

    「…わかったわ。
     グリュンネ少佐にも、改めて連絡を取っておきます」

    「あの、ミーナ中佐…」

    「何かしら? サーニャさん」

    「やっぱり、明日からは、私も夜間哨戒に出た方がいいと思います」


    あの新型ネウロイを感知できるのは、私だけみたいだった。
    …それ以前に、今の状況で、ナイトウィッチの役割は重要なはず。
    ミーナ中佐が、そのことに気がつかなかったとは思えない。
    きっと、私を思ってのことに違いなかった。


    「…そうね。 ここまで観測の目を潜り抜けてくるとは思わなかったわ。
     警戒が足りていなかったのかもしれない。 だけど…」

    「…?」

    「ついさっき、辞令が下りました。
     明後日、正午を持って、
     501統合戦闘航空団は、ブリュッセルの仮設基地に異動となります」


165 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/27(木) 21:17:39.10 ID:PGSEen8M0


    カールスラント西部のネウロイの巣から、
    周辺地域に被害が出始めているらしく、
    特に激戦区になることが予想されるブリュッセルに、
    501部隊が派遣されることになったという。

    急な話に感じるけど…
    配置転換の可能性はミーナ中佐が前々から話していたことだし、
    仕方ないことなんだと思う。

    明後日には、このサン・トロン基地ともお別れになる。
    短い滞在だったけど…やっぱり少し寂しい。
    ここでは色んなことがあったし…


    今日はもう遅い時間だということで、
    解散した後、エイラも私も疲れていたから、
    ちょっと残念だけど、今夜は占いも中止にして休むことにした。


    『今日は…任務があったから、あまり皆とお話できなかったかな…』

    『でも、ハルトマンさんと…バルクホルン大尉とは、少し話せた…』

    『夜、飛んだのは…なんだか、久しぶりだった気がする…』

    『エイラとハイデマリーさんと…3人で飛んだのは二度目だけど…』

    『今回は、ネウロイと戦闘になって…』

    『ウィトゲンシュタイン少佐が居なかったら…やられてたかも…』

    『…ここを離れても…彼女やハイデマリーさん…』

    『他の人たちとも…また…いつか…どこかで…会える…かな………』


    Zzzzz


    ・

    ・・・

    ・・・・・・・・

    ・・・・・・・・・・・

    ・・・・・・・・・・・・・・・


166 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/27(木) 21:20:32.50 ID:PGSEen8M0

    ・・・・・・・・・・・・・・・

    ・・・・・・・・・・・・

    ・・・・・・・・・

    ・・・

    ・


    目が覚めてカーテンを開くと、すっかり日が昇っていた。
    昨日の戦闘で消耗した魔力を取り戻すために、今朝は寝坊を許されている。
    とはいえ、あまりのんびりしているわけにもいかない。
    この基地で自由にできる時間は、今日で最後なんだから…

    軽く背伸びをして、まだ半分眠っている頭を体を起こしてから、
    着替えを済ませ、部屋を出た。

    まずは、朝食をとらないと…
    時間的には、朝食というよりブランチの時間だけど。
    給食はもう片付けられているだろうから、自分で作らなきゃ。



    ………



    さて、何を作ろうか。
    ビーフストロガノフは…さすがに、起きたばかりで食べるには…
    ピロシキやボルシチは、作るのにちょっと時間がかかるし。
    オリヴィエ・サラダがいいかな?

    献立を考えながら食堂に向かって歩いていると、
    廊下の反対側から誰かがやってきた。
    私に気がついたようで、こっちに近づいてくる。


    私は、軽く手を振る>>167に、挨拶を返した。


167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/27(木) 22:53:45.89 ID:A4V6sm1v0

    ハイデマリーとエイラ

169 :中断宣言忘れてた…ごめん ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/28(金) 21:00:34.36 ID:53InA6HK0

    「サーニャさん、おはようございます」

    「おはヨー、サーニャ」


    ハイデマリーさんとエイラが、並んで歩いてきた。


    「二人とも、揃ってどうしたんですか?」

    「ミーナ中佐と、今後の打ち合わせをしていて…
     ついさっき、話がまとまった所です」

    「私は、たまたまそこで会ッたんだけどナ」

    「ハイデマリーさん…もしかして、あれからずっと?」


    彼女の顔をよく見れば、とても疲れた顔をしている。
    私が寝ている間も、ずっと徹夜をしていたに違いなかった。


    「観測班の方針の見直しや、基地内の戦力強化のための増員など、
     急いで取り決めなければならないことが多かったので…」


    なんだか、この基地にいる間、彼女やミーナ中佐に頼りきりで、
    申し訳ない気持ちになってくる。
    そんな私の表情を読み取ったのか、言葉を付け加えて微笑んだ。


    「あ、でも…サーニャさんの調査報告のおかげで、
     基地周辺の当面の安全が確認されましたから、
     今夜の夜間哨戒はお休みになりました。 だから平気です」

    「サーニャは、これから朝食か?
     …だったら、ハイデマリーも一緒に、3人でどうだ?」

    「でも、ハイデマリーさん…疲れてるんじゃ?」

    「いえ…よろしかったら、ご一緒させてください。
     お二人と過ごせる時間も、有限になってしまいましたから」


    そう言われたんじゃ、断るわけにはいかない。
    残された時間を惜しむ気持ちは、私も同じ…
    こうして3人揃って、食堂に向かうことになった。


170 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/28(金) 21:05:48.69 ID:53InA6HK0

    「料理は私が作るから…
     エイラとハイデマリーさんは、座って待っていて」


    食堂について、私はそう言って二人をテーブルに座らせた。


    「ン? そうか?
     じゃ、その間、私はハイデマリーを占ッてやるヨ」

    「えっ? は、はい…」


    いつの間にか、名前で呼ぶようになっている。
    エイラも、彼女のことを気遣っているようだった。


    二人を残して、キッチンに入る。
    そういえば、ペテルブルグに居た時に、
    ロスマン曹長からカールスラントの料理を教わったっけ。
    せっかくだから、作ってみよう…

    まず、じゃがいもを茹でて、ベーコンと一緒にスライス。
    たまねぎと一緒に炒めて…卵でとじる。
    "農夫の朝食" と呼ばれている料理。
    名前の通り、簡単に作れて、時間もかからない朝食用メニュー。
    じゃがいもを主役にしている所が、いかにもカールスラントらしい。


    「…ウーン…クルマには乗らない方がいいゾ」

    「そ、そうなんですか?」

    「あー…オマエ、実家ワイン商だッけ?
     退役したら、別の仕事探した方がいいかもナ」

    「えー…」


    食堂に戻ると、二人は占いで微妙に盛り上がっているようだった。


171 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/28(金) 21:06:21.42 ID:53InA6HK0

    「エイラ、あんまり変なこと言っちゃダメよ」

    「あ、サーニャ。 うまそうだナ」


    私が料理を運んだお皿を出すと、
    エイラはテーブルに広げたカードを手早く片付ける。


    「ハイデマリーさん。
     エイラの占いは、よく当たるけど…近い未来のことだけだから。
     あまり気にしない方が…」

    「は…はい。
     あ、これ、カールスラント料理ですね。
     ありがとうございます…いただきます」

    「サーニャは、色んな国の料理が作れるかんナ!」


    なぜかエイラが得意そうな顔をする。
    彼女自身はといえば、あまり料理は得意じゃないみたいだけど。


    「そういえば、
     セダン基地やディジョン基地との連携も、強化されることになりました」

    「フーン。 まァ、ここ最近イロイロあッたからナ」

    「ええ。 サーニャさんたちのおかげで、
     基地間の緊張も、少し緩和されてきましたし…」


    確かに、ここ数日、他の基地と交流する機会が多かった。
    意識していたわけじゃないけれど…
    結果的にでも、手を取り合うきっかけになってくれたのなら、嬉しい。
    私が笑いかけると、ハイデマリーさんは、ふと寂しげな表情になった。


    「…501の皆さんが来てから、色々なことがありました。
     戦いのことだけじゃなくて…楽しいことも、たくさん。
     お別れしなければならないのが、本当に残念です」

    「そんな顔するなヨ。 そのうちまた会えるッて」

    「ええ。 カールスラントのネウロイをやっつけて、
     きっとまた、会いに来ます」

    「ハハ。 やっつけて、ッて。
     なんか宮藤みたいだゾ」

    「ふふ…ありがとうございます。
     サーニャさん、エイラさん」


172 :今日はここまでです ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/28(金) 21:06:59.19 ID:53InA6HK0


    遅い朝食を済ませて。


    「後片付けは私がしとくから、
     ハイデマリーは早く帰ッて寝ておけヨ」

    「…ありがとう。 お言葉に甘えます。
     あ、501の隊員は、今日の訓練は免除されています。
     身辺整理を済ませておくように、とミーナ中佐から」

    「わかりました。 おやすみなさい、ハイデマリーさん」

    「サーニャさん、おいしい朝食をごちそうさまでした」



    ………



    ハイデマリーさんが立ち去った後。
    エイラは、 『朝食はサーニャが作ッたから、後片付けは私がやる』
    と言って、食器を下げに行った。

    身辺整理と言っても、私には特に大きな荷物もないし…
    何をして過ごそうか。
    誰かの様子を、見に行ってみようかな?


    誰に会いに行く?


    >>173


173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/28(金) 21:29:45.41 ID:fyQzJx5k0

    エーリカ 二人でもアリなら+バルクホルン


174 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/30(日) 18:53:47.37 ID:2BKb57qw0


    整理………整頓………
    なぜか、ハルトマンさんの姿が心に浮かんできた。
    彼女の様子を見に行ってみよう…



    ………



    「トゥルーデ…私…もうダメ…」

    「諦めるな、ハルトマン!」

    「私には、無理なんだよ…」

    「立て! お前がやらなくてどうするんだ!」

    「私たちには、もう絶望しか残ってない…」

    「くっ…」

    「こんな時…仲間が…仲間が居てくれれば…!」


    ハルトマンさんが、手伝って欲しそうな目で私を見ている。
    彼女の部屋の様子は、予想通りというか…
    バルクホルン大尉も途方にくれている様子だった。
    この現場を見てしまった以上、素通りはできそうにない。


175 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/30(日) 18:54:45.97 ID:2BKb57qw0

    「…あの…私も手伝います」

    「サーニャ? しかし、お前に手伝って貰うのは…」

    「いいの!? 超助かるー。 ありがと、さーにゃん!」

    「き、貴様という奴は…」


    睨まれても気にした様子もなく、
    ハルトマンさんは口笛など吹きながら、マイペースに片づけを再開する。
    大尉の表情が怒りから呆れ、最後に諦観へと変わっていった。


    「…すまんな。 たしかに、二人では今日中に片がつきそうにない。
     だがサーニャ、自分の身辺整理はいいのか?」

    「はい。 私は、あまり荷物が多くないから…
     特別な整理は必要ありません」

    「そうか…見ろ、ハルトマン!
     これが模範的な軍人というものだ! 貴様も少しは見習って…」

    「もー、お説教なんて聞いてる場合じゃないよー」

    「ぐっ…ぐぬぬぬ………」


    まだ何か言いたそうな口を無理に閉じると、大尉も手を動かし始めた。
    私もそれに加わる。


    「…ようやく床が見え始めた所だ。 足元に気をつけてくれ」

    「だいじょうぶだよ、危険物なんて置いてないから」

    「貴様のことだから、勲章もその辺に放置してありそうだからな」

    「あー、あれ。 全部ミーナに預けといた。
     その方が安全だっていうからさ」

    「………そうか」


    なんだか、賞状をお母さんに預ける子どもみたい…
    なんて、失礼な考えが一瞬頭によぎる。


176 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/30(日) 18:55:31.31 ID:2BKb57qw0

    「…? 時計が…どうして、こんなにあるんですか?」

    「ああ、それはロマーニャでトゥルーデに買ってもらったやつ。
     それは、原隊に居た頃にロスマンがくれたやつで、
     それは、501が結成された頃にミーナがくれたやつ。
     それは、ブリタニアでトゥルーデが…」

    「ハルトマンの寝坊癖を正すために、皆が贈るのだがな。
     最近になって、ようやく時計では力不足だと悟ってきた所だ」

    「…じゃあ、この箱は?」

    「前にクルピンスキーが送ってくれた、お菓子の箱だよ。
     おいしいアメとかチョコレートとか、いっぱい入ってたんだ」

    「中身を全部食べ終わったなら、箱はもう必要ないだろう! まったく…」

    「オルゴール…」

    「あ、それはウルスラが送ってくれたんだ。
     お手製で、私の好きな歌が入ってる…懐かしい曲だなー」

    「こら、さぼるな!」

    「この空き瓶は…」

    「ああ、それはね…」


177 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/30(日) 18:56:06.11 ID:2BKb57qw0


    こんな様子で、作業を続けること数時間。


    「終わったー!」

    「…うむ、こんなに早く終わるとはな」

    「これで心置きなく眠れるよ…Zzzzz」


    ハルトマンさんは、
    さっきまで膨大な数の本によって占領されていたベッドの上に横になる。


    「…これだからな。
     まあ、今日は訓練も休み…よしとしておこう」

    「それじゃ、私はこれで…」


    入ってきた時とは見違えるように整然とした部屋を出て行こうとすると、
    バルクホルン大尉が私を呼び止めて、小声で話しかけてくる。


    「本当に助かった。
     なんだかんだと言いながらも、お前が来てくれてからは、
     ハルトマンも真面目に掃除をしていたからな…ありがとう」

    「ほんとありがとー、さーにゃん…
     この借りはかならず…Zzzzz」


    起きているのか寝言なのか。
    どちらにしても二人に感謝されながら、部屋を後にした。

    バルクホルン大尉はゴミの山だと言っていたけど…
    ハルトマンさんは、部屋にあるもの1つ1つのことを細かく覚えていた。
    思い出を大事にしている表れ…なのかもしれない。


178 :今日はここまでです ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/30(日) 19:02:37.25 ID:2BKb57qw0


    ハルトマンさんの大掃除が終わって。
    時計を見ると、針が4時にかかろうとする頃だった。
    夕食までには、まだ時間がある。

    こうやって、基地の中を見て回れるのも、後少し。
    残された時間を、大切にしなきゃ。
    他のみんなの様子も、見に行ってみよう…


    誰に会いに行く?


    >>179


179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/30(日) 23:39:43.36 ID:pOOtzIJ/o

    宮藤で


181 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/31(月) 21:23:41.42 ID:LVFlTYTF0


    芳佳ちゃんはどうしてるんだろう?
    そういえば、昨日は顔を見なかった気がする。
    なんとなく気になった私は、会いに行くことにした。



    ………



    芳佳ちゃんの部屋のドアをノックしてみると、意外にもすぐに返事があった。
    彼女が自室にいるというのは、逆に珍しい気がする。


    「あ、サーニャちゃん。 どうしたの?」

    「特に用事ってわけじゃないんだけど…」

    「遊びに来てくれたの? じゃ、中に入って入って!」


    言いながら芳佳ちゃんは、私の背中を部屋の中に押し入れた。
    私は、自分の部屋にいると眠くなるんだけど…
    彼女は、どこに居ても変わらずに元気みたい。

    中の様子は、私の部屋と似たようなもので、私物がほとんど置いてなかった。
    彼女の持ち物らしいものは、机の上に広げられている数冊の本とノートくらい。
    本には植物の図説と、難しい数式が書かれている。


    「薬学の本?」

    「うん。 私の得意分野なんだ」

    「勉強中だったんだ…ごめんね」

    「あはは。 いいのいいの、私は受験生ってわけじゃないんだから」


    勉強の邪魔をしてしまったみたい…
    部屋を出ようかと思ったところに、芳佳ちゃんがイスを勧めてくれた。
    遠慮しながらも、私はそれに座る。


182 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/31(月) 21:24:47.25 ID:LVFlTYTF0

    「でも、芳佳ちゃん…魔力が戻ったのに、勉強続けてるの?」

    「元々、こっちには留学のために来たんだしね。
     おばあちゃんとも、ちゃんと勉強してくるって約束したし…それに」

    「それに?」

    「…もし、また魔法が使えなくなったら…
     その時、目の前に助けなきゃいけない人がいたとしたら…
     何もできないなんて、嫌だから」


    確かに魔法に頼り切っていたら、それを失った時に何もできなくなってしまう。
    実際、芳佳ちゃんは、魔力を喪失した時にも傷ついた人たちを助けている。
    それにしても、あれだけ強力な治癒魔法が使えるのに勉強も怠らないなんて…


    「宮藤、居るか?」


    ノックの音と声。 誰か来たみたい…
    芳佳ちゃんが、ドアを開いて訪問者を迎え入れる。


    「あ、坂本さん」

    「お前にいいものを持ってきたんだ」


    坂本少佐はそう言うと、小脇に抱えていた何かを芳佳ちゃんに手渡す。
    芳佳ちゃんは、予想外の重さによろけながらもそれを受け取った。


    「な、なんですかこれ?」

    「中を見てみろ。 きっと気に入るはずだ」


    言われた通りに机の上で包装を解き、中身を広げていくと、
    出てきたのは、分厚い本の数々。


    「うわぁ、これって…!」

    「ヘルウェティア医学校で使われている教材や、図鑑。
     先方に無理を言って、基地に届けてもらったんだ。
     お前がブリュッセルに発つ前に間に合って、よかった」

    「ありがとうございます!
     …あ、学校にお詫びの手紙出し忘れてた…」

    「うむ…私の方からも事情の説明はしてあるが…」

    「でも、やっぱり私からも挨拶しておかないと。
     ごめんサーニャちゃん! 私、これから学校に手紙書かなきゃ…」

    「ううん。 それじゃ、私はもう行くね」


183 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/31(月) 21:25:34.26 ID:LVFlTYTF0


    慌てて筆をしたためる準備を始めた芳佳ちゃんを残して、私は部屋を出る。
    すると、続けて出てきた坂本少佐に 『話がある』 と呼び止められ、
    その足で少佐の部屋に移動することになった。



    ………



    坂本少佐の部屋も、やっぱり私物らしい私物はほとんど置かれていなかった。
    ただ一つ、壁に立てかけられた一本の刀だけが、強い存在感を放っている。
    この刀は…


    「…烈風丸。 震電と一緒に流れ着いていた…
     二度と抜くつもりはないが、戒めのために置いてある」


    坂本少佐は、寂しげに語る。


    「話というのは、宮藤のことだ。
     実は昨日、あいつの魔力が急激に低下した」

    「えっ?」


    一昨日見た感じでは、まったくそんな風には見えなかったのに…


    「幸いなことに、色々と手を尽くしたところ、なんとか飛行が可能な程度には回復した。
     だが…今のあいつの魔法力は、極めて不安定になっているようだ」

    「大丈夫…なんですか?」

    「…わからん。 だが、あいつはそれでも飛ぶつもりらしい。
     飛べなくなった私の分まで自分が…とな」

    「芳佳ちゃん…」


184 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/31(月) 21:27:19.01 ID:LVFlTYTF0

    「…私はずっと、宮藤が一人前になった姿を見てみたいと思っていた。
     誰よりも高く飛び、皆を守れる真のウィッチになってほしい…と。
     そしてあいつは、私の期待に応えてくれた。
     だからこそ、私は空への未練を断ち切ることができたんだ」


    懺悔のように、少佐は言葉を重ねていく。


    「だが…一方で、宮藤を私のエゴに巻き込んでしまった…そんなことを考えることもある。
     戦いを嫌うあいつを、軍人に仕立て上げたのは私だ。
     一時とはいえ、あいつが魔力を失ったのも私が原因…
     先日は、私が取り付けたヘルウェティアへの留学の途中、あいつは命を落としかけた…
     そして今、あいつは私のために戦うと言っている。
     …私のせいで…」


    そこまで言うと、坂本少佐はうつむいて口をつぐんだ。
    少佐は、芳佳ちゃんに対して大きな責任を感じているようだった。
    まるで、自分のせいで彼女の人生を狂わせてしまったんじゃないか、と。
    でも…それは、違う。


    「芳佳ちゃんは…そんな弱い人じゃありません」

    「サーニャ…?」

    「芳佳ちゃんは、いつだって自分の意思で進む道を決めてきました。
     銃を取ったのも…501に入ったのも…飛び続けると決めたのも…
     誰かにそうしろって言われたからじゃない。
     芳佳ちゃん自身が、そうしたい…守りたいって思ったからのはずです。
     だから芳佳ちゃんは、何があっても後悔したりしません」


    世界中の人間が、カラスは白だと言ったとしても、
    彼女は断固として、カラスは黒だという意思を曲げないだろう。
    それが、宮藤芳佳という人間だと、私は思っている。
    彼女が飛ぶと言ったら、誰にもそれを止めることはできない。
    それは私が…いいえ、他の誰も持っていない、彼女の強さ。


    「…そうか…そうだな。
     確かにあいつは…最初に会った時から…
     たとえ私の命令だろうと、自分の意思に反することは決して聞き入れはしなかった。
     私は…あいつを、小さく見すぎていたのかもしれんな」


    少佐は何度も頷きながらそう呟くと、顔を上げて私の方を見る。


    「すまない、サーニャ。
     上官らしくもなく、気弱なことを言ってしまったようだ」

    「いいえ。 …仲間、ですから」

    「ふっ。 はっはっは! そうだな!」


    いつも通りの、豪快な笑い声。
    やっぱり、少佐にはこうやって堂々としていてほしい。


    「明日、私は一度扶桑に戻る。
     大和を国へ送り届けねばならんからな。
     だが、近いうちに必ず、501に戻ってくる。
     それまで、宮藤のこと…頼んだぞ」


    「大丈夫です。 私だけじゃなく、芳佳ちゃんには501のみんながついてるから…」


    私の答えに、坂本少佐は満足そうな表情を見せた。

    ふと、いつかのエイラの占いを思い出す。
    "恋人" の正位置…
    それは "絆" を象徴していたということを。


185 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/31(月) 21:28:16.06 ID:LVFlTYTF0


    少佐の部屋を後にすると、外はすでに日が落ちていて暗く、
    夕食の時間が近づいていることに気がついた。
    この基地で過ごす、最後の夜か…



    ………



    食堂にはすでに何人かの人が集まっていた。
    私も、その輪の中に加わってみる。
    えっと、席についているのは…?


    >>186(複数名)


186 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/31(月) 21:29:02.93 ID:LVFlTYTF0

    また忘れるとこだった。
    一時中断です。
    よいお年を!


187 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2012/12/31(月) 21:30:10.89 ID:LVFlTYTF0

    …ごめん、ほんとごめん。
    安価は>>188で

188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/01(火) 00:44:25.96 ID:4W4YlT7do

    あけおめ!
    シャーリーとルッキーニがいいです

189: ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2013/01/05(土) 01:34:49.73 ID:iG0lG9a30

    「よっ、サーニャ」

    「ふぁーにゃ、ひゃおー」

    「飲み込んでから喋れよ、ルッキーニ」


    口いっぱいにカルパッチョを頬張ったルッキーニちゃんと、
    シャーリーさんが手を振ってくれている。
    二人と一緒に夕食を食べることにした。


    「この基地で過ごすのも、今日までだな。
     短い間だったが、お別れとなると寂しいもんだ」

    「あたしも、ドナテロ、ミケランジェロ、ラファエロ、レオナルド…
     みんなとおわかれしてきたよ…」

    「虫の名前な」

    「ふっ…いっしょにつれてってやることもできるが…
     住みなれた故郷で生きることが、あいつらのシアワセなのさ…」


    目を細めて、遠くを見るルッキーニちゃん。
    その口元についたソースを、シャーリーさんがぬぐってあげている。


    「うにゃっ! シャーリー、くすぐったいー」

    「ほらほら、じっとしてろ。
     口の周りを汚してると、ニキビができるぞー」


    この二人と一緒だと、しんみりとした雰囲気にはならないな…


190 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2013/01/05(土) 01:36:17.79 ID:iG0lG9a30

    「さぁて…と。
     どうやら、あたしたちにはやることが出来ちまったようだな、ルッキーニ」

    「やるのかい? やっちまうのかい? シャーリー」


    お皿に残った最後の一口を飲み込むと、
    二人は何やら神妙な面持ちで立ち上がり、顔を見合わせては頷きあっている。
    そして、私に向かって敬礼してみせたかと思えば、足早に食堂を出て行った。
    …なんだったのかしら。



    ………



    所変わって、エイラの部屋。
    彼女の部屋は、普段よくわからない飾り付けがされている。
    最初は占いの道具だと思っていたんだけど、実はただの趣味らしい。
    昨日までは、ここにも不思議なアイテムが色々と置かれていたんだけど、
    エイラも基地を離れるにあたって荷物を整理したみたいで、すっかり片付けられていた。


    「昨日はできなかったから…一日ぶりの占いね」

    「そうだナ。 それに、この基地では最後の占いになるか」

    「うん…なんだか残念」

    「サーニャが望むなら、またいつだッて占ッてやるサ。
     じゃ、今日は誰にする?」

    「そうね…それじゃ」


191 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2013/01/05(土) 01:37:47.03 ID:iG0lG9a30

    「し~ましまのルッキーニとぉ!」

    「ぱ~ふぱふのシャーリーとぉ!」



    …………………。



    あまりのことに、私とエイラは呆然として言葉を失う。
    何の前触れもなく、勢いよく扉が開け放たれたかと思うと、
    その侵入者たちは、派手なポーズと共に名乗りを挙げた。


    「…なんなんだ、オマエら」


    彼女たちに向かって、エイラがやっとの思いで声を絞り出す。


    「あー、違う違う!
     あたしらの後に続いて答えるんだよ!」

    「テイク2はいりまーす」



    「し~ましまのルッキーニとぉ!」

    「ぱ~ふぱふのシャーリーとぉ!」

    「だ…ダナダナ~の、エイラと…」

    「…フ~ワフワのサーニャの」

    「しまフワぱふダナアワー!」


    有無を言わせないシャーリーさんたちの勢いに流されて、私たちも口上をやらされる。
    …なんだろう…これ…すごく恥ずかしい…


    「…で、なんなんだヨ、オマエら」

    「いやぁ、あたしら、基地を移るたびに二人でラジオ番組やってるんだけどさぁ。
     ここサン・トロン基地じゃ、まだやってなかったなと思ってさ」

    「今回は、エイラとサーニャのラジオとの "こらぼれーしょん" なのだ!」

    「ラジオ…? でも、機材がないと、放送は…」

    「大丈夫。 録音機材ならここにちゃんと用意してあるから」


    シャーリーさんは、巨大なテープレコーダーを取り出してみせる。
    …一体どこから?


    「ッてソレ、基地の備品じゃないのか!? 許可は取ッたのかヨ!」

    「アッハハッ。 とにかくこれで収録はできるってわけだ」


    どうも、無許可で持ち出したみたいだった。
    …問題にならないかしら…?


192 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2013/01/05(土) 01:39:32.48 ID:iG0lG9a30


    止めた方がいいかな、と思ったけれど、
    ルッキーニちゃんは私に口を挟む隙を与えてくれない。


    「シャーリーシャーリー!
     あたし、ゲストをつれてきたよ!」

    「お~、でかしたルッキーニ!
     で、誰を連れてきたんだ?」

    「そりじゃ、入ってきてもらいましょう。
     ゲストさん、カモーン!」


    呼びかけと共に、ドアが再び開いて、誰かが入ってくる。
    現れた人物は…


    >>193


193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/05(土) 01:55:36.68 ID:viDCFSwvo

    おめでとうございます
    ここはバルクホルンでひとつ


194 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2013/01/06(日) 02:09:03.88 ID:W94d6ORQ0

    「じゃっじゃじゃーん」

    「げえっ! バルクホルン!?」


    無邪気にはしゃぐルッキーニちゃんとは反対に、
    まるで死神を目の当たりにしたように青ざめるシャーリーさん。


    「ヒマそーにうろうろしてたから、きてもらったんだ。
     にゃ? どしたの? シャーリー」

    「ルッキーニ、お前よりにもよって…!」


    そんな彼女たちを、冷たい笑いを浮かべて見つめる、
    バルクホルン大尉の姿が、そこにあった。


    「な、なぁ…バルクホルン?
     一つ、聞きたいんだけど…さ。
     …いつから、そこに?」

    「安心しろ、シャーロット・E・イェーガー大尉。
     親切にもフランチェスカ・ルッキーニ少尉が案内してくれたのでな。
     一部始終全てを聞いていたとも」

    「Oh...Jesus...」

    「神に祈る前に…その機材を返却してこい!
     貴様らが営倉送りにされる前にな!」

    「うわぁぁ! ルッキーニのバカヤロー!」

    「うじゅぁー! なんでぇ!?」


    バルクホルン大尉の怒声が響くと、
    二人は弾かれたように部屋を出て行った。


195 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2013/01/06(日) 02:11:24.45 ID:W94d6ORQ0

    「…扶桑には、立つ鳥跡を濁さずという言葉があるそうだが…
     あいつらはまるで逆だ。 嘆かわしい…」

    「…あの、バルクホルン大尉…」

    「…サーニャにエイラか。
     お前たちに非がないことはわかっている。
     幸い、連中が何かしでかす前に止めることができたから、
     私から基地側によく説明すれば大きな問題にはなるまい」

    「そいつは、ありがたい。 迷惑かけるなぁ」

    「ふん、いつものことだ。
     今さら礼など…なっ!?」


    何食わぬ顔で、シャーリーさんたちが戻ってきていた。
    さっき出て行ったばかりなのに…


    「リベリアン、貴様どういうつもりだ!
     機材を帰してこいと言ったはずだぞ!」


    バルクホルン大尉は、
    頭の上に録音機らしき機械をかついだルッキーニちゃんを指差す。


    「よく見ろよ、バルクホルン。
     これは、あたしが作った簡易レコーダーだ。 私物だよ」

    「何…? …確かに、正規品に比べると、造りが雑なようだが」


    さらに、外装の隅の方に、
    ヘルメットを被ったウサギの意匠が加えてあった。
    シャーリーさんのパーソナルマーク。


    「そうなんだ。 趣味で作ったものだから、音質が悪くてなぁ。
     でも、こいつを使う分には問題ないだろ?」

    「…何がシャーリーをそこまで駆り立てるんだ…」


    勝ち誇ったような表情の二人を見て、エイラが呆れた顔になる。


196 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2013/01/06(日) 02:12:04.93 ID:W94d6ORQ0

    「前に収録した時に、
     『グダグダすぎる』『ラジオの体をなしてない』『何がなんだかわからない』
     って散々に言われてさぁ。
     エイラたちのラジオは人気あるから、あたしらも勉強させてもらおうと思ったんだよ」

    「そもそもあたしたち、ラジオってどうやって作るかしらないもんね」

    「ほ~、そうかそうか。
     そういうコトなら、仕方ないな。
     私たちが素晴らしいラジオの作り方を教えてやろう!」


    …すぐおだてに乗る、エイラの悪い癖が出た。
    私たちだって、誰かに教えられるほど慣れてないのに…


    「…仕方ない、許可しよう。
     だが、私も同席させてもらうぞ」

    「えぇ?なんでだよ」

    「お前らを野放しにしておくと、軍事機密を漏洩しかねないからな。
     それに、その録音機も事が終わり次第預からせてもらう。
     私物とはいえ、物品の性質上、私やミーナの許可なしに使うことは禁止だ」

    「ちぇー。 ま、いいや。
     その代わり、バルクホルンもゲストとして来たんだから、出演してもらうぞ」

    「む…まあ、よかろう」


    話がまとまってしまった。


197: ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2013/01/06(日) 02:15:30.80 ID:W94d6ORQ0



    ―しまフワぱふダナアワー with バルクホルン―



    「で、まずなにをすればいーの?」

    「そりゃあ…えーと、どうするんだっけ? サーニャ」

    「…ラジオは、聞いてくれる人がいないと成立しないわ。
     おたよりを募集して、リスナーの人と交流を深めるの」

    「そうだったそうだった。
     でも、最初の頃は、なかなかおたよりが来ないんだよナ」

    「そういう時はどうするんだ?」

    「おたよりがたくさん届いてることにして、
     自分たちで内容をでッち上げるんだ。
     そうやッて盛り上がッてるように見せかけとけばそのうち―」

    「…エイラ、少し黙ってて」

    「…はい」

    「最初の放送では、おたよりが届いてないのが当たり前だから、
     お友達とか、知り合いの人に頼んで、質問を考えてもらう…
     ラジオでやってほしいこととか、悩み相談でもいいかな。
     そうやって少しずつパーソナリティのことを知ってもらえば、おたよりも増えてくるわ」

    「さすが、サーニャは長期番組の経験者だけあるな」

    「それじゃ、あたしらが適当に人つかまえて質問頼んでくるよ」

    「レッツゴー!」

    「…どんな質問が届くことやら、不安だな」


    >>198以下
    【サーニャ】【エイラ】【シャーリー】【ルッキーニ】【バルクホルン】
    以外の誰かを指名、
    もしくは上記5名への質問



198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/06(日) 02:25:30.85 ID:6or3/QLJo

    ミーナ


199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/06(日) 02:45:04.67 ID:qk3X1fWP0

    エイラさん、オラーシャ系美少女の落とし方を教えてください


200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/06(日) 13:26:46.79 ID:yb3k3a4Wo

    シャーリー流石すぎるぜ!

201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/06(日) 22:22:12.27 ID:+gIUiooio

    静夏

202 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2013/01/07(月) 03:15:33.81 ID:Nw9S70E70

    「ただいまー!」

    「何人か、アタックしてきたぞー」

    「誰に頼んできたんだ?」

    「大尉、そういうのは本文と一緒に読み上げるんだゾ」

    「む、そうか」

    「そうね。 じゃあ、記念すべき一人目のおたよりだから…
     メインパーソナリティのシャーリーさんとルッキーニちゃんから」

    「よしきた!」


    「カールスラント空軍中佐、
     ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケさんからのおたよりだ!」


    『新しい基地で過ごすにあたって、必要な物はありますか?』


    「…だって」

    「サウナだ、サウナ! シャワーだけじゃ疲れがとれないヨ!」

    「お前ほんとにサウナ好きだなぁ。
     じゃ、あたしは風呂を希望しとこう。
     坂本少佐や服部が基地に来た時、あれば喜ぶだろうし」

    「あたしはあれほしい! じてんしゃ!」

    「自転車?」

    「ほんとはバイクがいいんだけど、あれってめんきょがいるんでしょ?
     じてんしゃなら、あたしでもシャーリーといっしょに走れるから!」

    「ハハハ、そうかそうか」

    「どれもこれも、軍人らしからぬ要望ばかりだな…」

    「そういうバルクホルンは、希望とかないのか?」

    「私は、衣食住さえ揃っていれば、他に望むものは無い」

    「相変わらず、面白みのないやつだなぁ」

    「…私も、特に必要なものは…」

    「サーニャは、基地にまたピアノを置いてもらったらどうだ?」

    「でも、高いし…場所をとるものだから」

    「…風呂やサウナに比べれば、ずいぶん可愛いものだと思うがな」

    「そーそー。 コンディションやモチベーションを保つのに必要なら、
     隊長はちゃんと考えてくれるから、遠慮すんなって」

    「いいのかな…」


203 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2013/01/07(月) 03:16:54.34 ID:Nw9S70E70


    「じゃ、次のおたよりだ。
     扶桑海軍兵学校所属、服部静夏軍曹から」


    『皆さんは、今までに一体何回軍規違反を犯したんですか?』


    「アイツ、真面目そうな顔して直球でキツイ質問ぶつけてくるなァ」

    「いやー、実際はかなりの長文なんだけどさ。
     内容が遠まわしすぎる上に修飾語が多すぎて読みにくかったから、
     あたしがわかりやすく要約しといたんだ」

    「誉れ高い501統合戦闘航空団の実態がこの有様では、
     服部の疑問も無理からぬ話ではあるがな。
     …しかし、こんな質問をラジオ電波に乗せるわけにはいかんぞ!」

    「えー、なんで?」

    「お前たち、自分が犯した軍規違反の数を覚えているのか?」

    「ハハハ! 数えたことないや」

    「自室禁固食らッた回数なら、答えられるゾ」

    「答えんでいい! 隊の恥を拡散公開するつもりか!」

    「なんだヨ、大尉だッて軍規違反したことあるだろ?
     ホラ、ジェットストライカーの時とか…」

    「ぐっ…あ、あれはだな…」

    「まあまあ、エイラ。
     バルクホルンの古傷をつついてやるなよ」

    「こんなかだと、ミーナちゅーさに怒らりてないの、
     サーニャくらいだね」

    「当たり前だろ! サーニャは正義なんだ!」

    「エイラは相変わらずだなぁ。
     そんなエイラに、質問が届いているぞ?」

    「ン? なんだ?」


204 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2013/01/07(月) 03:17:50.96 ID:Nw9S70E70

    「サン・トロン基地所属、匿名希望さんからのおたより」


    『エイラさん、オラーシャ系美少女の落とし方を教えてください』


    「なッ…!?」

    「いやぁ、あたしには、ちょっと質問の意味がわからないなぁ~。
     でも、エイラ宛てってことは、エイラにならわかるんだろうなぁ~」

    「あたしも、まだコドモだからわかんな~い。
     エイラせんせー、おしえてくださいよぅ~」

    「エイラ、教えろよぉ~。 上官命令だぞぉ~?」

    「エ・イ・ラ!」

    「エ・イ・ラ!」

    「…エイラ? 何の話…」

    「ウガァァァァァ!!!
     このおたよりを書いたヤツは誰だァァァァァ!!!!
     ヴァンターヨキ川の底に沈めてやるゥゥゥゥゥゥ!!!!!」

    「お、おい! 落ち着け、エイラ!
     事情はよくわからんが、何も泣くことはないだろう?」

    「オラーシャ系美少女の落とし方だッて!?
     そんなの、わかんないヨ! 私が知りたいくらいだヨ!
     誰か教えてくれヨォォォォォ!!!!!!!」

    「エ、エイラ…」

    「よしサーニャ、出番だ」

    「えっ?」

    「なにもいわず、そっとだきしめてやんな…
     それが、アンタのやくめだぜ」

    「…?」



    「ただ今、泣きじゃくるエイラ中尉の肩を、
     戸惑いながらもサーニャ中尉が抱いております」

    「エイラちゅーい、8センチメートルせのひくい、
     サーニャちゅーいのむねにカオをうめて、ないております」

    「サーニャ中尉、エイラ中尉の背中を優しく撫でています。
     段々と泣き声が小さくなってきて、スタジオにはか細いすすり泣きの声が響くのみ」

    「これ以上のことをおつたえするのはヤボというものですね」

    「その通りです。 実況はここで終了とさせていただきます」

    「…何をやってるんだ、こいつらは…」


205 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2013/01/07(月) 03:18:28.86 ID:Nw9S70E70

    「さーて、本日最後のおたより!」

    「何事もなかったかのように続けるなヨ!」

    「あ、もう立ち直ったのか」

    「ま、いいや。 あたしがよむね!
     サン・トロン基地のとくめーきぼーさんから」


    『シャーリー流石すぎるぜ!』


    「…どういう意味だ?」

    「このおたよりも、長くてむずかしーから、
     シャーリーみたいによーやくしてみたの」

    「アバウトすぎて、要約になってないゾ」

    「…これは、シャーリーさんへのファンレターみたい。
     ゲーテの詩を引用したりして、表現豊かに書かれているわ」

    「へっ? ファンレター? 私に?
     そ…そう。 なんか照れるなぁ。 ハハハ!」

    「いーなー、シャーリーばっかり。
     あたしもファンレターほしい!」

    「グラマラス・シャーリーは世界中の男に人気だからナ」

    「でも、ラジオを続けていけば、
     ルッキーニちゃんにもファンレターがたくさん届くと思う」

    「そっか。 よーし、がんばるぞ!」

    「その前に、ルッキーニ。
     おたよりくれたみんなにお礼を言っとかないと」

    「うん。 みんな、ありがとー!」

    「ありがとな! これで、今回のおたよりコーナーはおしまいだ!」


206 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2013/01/08(火) 19:37:04.46 ID:MT4Gm/Pk0

    「ラジオって、おたよりをよむだけでいーの?」

    「そういうラジオもあるけど…
     その番組ならではの、名物コーナーみたいなものがあるといいかも…」

    「ふーん。 サーニャの唄とか、エイラの占いみたいなやつか?」

    「うらないはわかんないけど、歌くらいならうたえるよ!」

    「私たちと同じことやッてもしょーがないだろ」

    「そうね…できれば、シャーリーさんたちの個性を活かしたものがいいと思う」

    「個性か…あたしの個性って言ったら、やっぱスピードだよな」

    「航空ウィッチ向けに、
     ストライカーのスピードランキングというのはどうだ?」

    「おー、いいなそれ!
     あたしの記録を破ったら、なんかプレゼントしてもいいぞ!」

    「…あの、シャーリーさんの記録って…」

    「非公式のものだと、音速を突破したことがあるから、時速1200km台かな?」

    「誰も破れないだろ、ソレ」

    「まぁ、あれは事故みたいなもんだったしなぁ…
     公式記録だと、今んとこレシプロエンジンでの最高時速が819kmだ。
     固有魔法使えばもっとスピード出せるけど、それだとフェアじゃないしな」

    「それでも、まだ速すぎるような…」

    「いや、目標は高い方がいい。
     この番組を通じて、各国のウィッチが腕を競い、
     それによって乗り手とストライカーの技術向上があれば、素晴らしいことではないか!」

    「おー、珍しく意見が合うじゃないか、バルクホルン!」

    「…マニアックなコーナーになりそうだナ」


207 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2013/01/08(火) 19:41:36.89 ID:MT4Gm/Pk0

    「ねー、あたしも自分のコーナーがほしいー」

    「シャーリーのコーナーだけだと、スピードマニア向けの番組になりそうだしナ」

    「ルッキーニちゃんらしいコーナーっていうと…」

    「あ、こういうのは?
     あたしが世界じゅうのウィッチのムネをたしかめてレビューす」

    「却下だ!」

    「むー。 じゃー、あたしがつかまえた、めずらしいムシをしょーかい」

    「ラジオだとよくわかんないだろ」

    「もー、じゃーあたしなにすればいーの?」

    「誰でも参加できるものだと…クイズとか…」

    「それなら、早口クイズとかいいんじゃないか?
     シャーリーのコーナーとも方向性が合うし」

    「あ、早口なら、あたしひとつしってるよ!」

    「ほう。 では、試しにやってみたらどうだ」


    「じゃ、いくよー!

     ジュジェムジュジェムウジョージョジュジヒヘッチャイジュジジュジョジョジュジョジャジュウンニャニュニュフニャニャニュニュ」


    「…?」

    「…?」

    「…全然ワカンネー…」

    「あたしにはわかったぞ。
     じゅげむ・じゅげむ・ごこうのすりきれ…だろ?」

    「シャーリーせいかーい!」

    「ジュゲム…? なんだ、それは?」

    「前に坂本少佐が教えてくれた、扶桑文化の落語ってやつさ。
     よく覚えてたなぁ、ルッキーニ」

    「えっへん!」

    「シャーリー以外、誰も聞き取れないんじゃないか…?」

    「扶桑人なら、わかると思うけどなぁ」

    「ほかの国の早口ことばも、しらべとくね!」

    「ハードルの高いラジオになりそうだナ…」


208 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2013/01/08(火) 19:43:11.43 ID:MT4Gm/Pk0

    「さて、そろそろ消灯時間だな。
     今日の収録は、この辺りで十分だろう」

    「えー、もうおわり?」

    「まぁまぁ、ルッキーニ。
     サーニャたちのおかげで、今回はずいぶんラジオらしい形になったじゃないか」

    「そだね。 ありがと、ふたりとも!」

    「いいえ、そんな大したことはしてないから…」

    「次からは、出演料もらうからナ」

    「…エイラ」

    「じょ、冗談だッて」

    「バルクホルンもありがとな!
     やっぱラジオにはツッコミ役が必要ってのがわかったよ」

    「できれば、人に突っ込まれるような発言は控えてほしいがな…」

    「…シャーリーさん、最後に出演者からのあいさつです」

    「おっと、そうか。
     この番組は、シャーロット・E・イェーガーと」

    「フランチェスカ・ルッキーニと!」

    「サーニャ・V・リトヴャクと」

    「エイラ・イルマタル・ユーティライネンと」

    「…ゲストの、ゲルトルート・バルクホルンでお送りした」


209 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2013/01/08(火) 19:44:24.54 ID:MT4Gm/Pk0

    「で、このラジオ、いつ放送されるんだ?」


    レコーダーの録音を止めたシャーリーさんが、嬉しそうに尋ねる。


    「まず、このテープを編集した後にミーナに聞いてもらう。
     その後に倫理審査などを通して、問題がなければ、
     軍のラジオ局で放送スケジュールが組まれるだろう」

    「なんか、めんどくさいね」


    公共の電波に番組を流すには、色々な制約がある。
    子供のように目を輝かせていたルッキーニちゃんたちは、
    おあずけを言い渡された犬のようにがっかりした表情になった。


    「それ以前に、さっきの収録では編集すべき部分が多すぎる!
     このままでは倫理審査以前に、確実にミーナに却下されるぞ!」

    「えー」

    「お前たちの番組だろう!
     まったく…私も手伝ってやるから、誰が聞いても恥ずかしくない内容に仕上げるんだ」


    なんだかんだと言いながらも、大尉は二人に付き合うつもりみたい。
    番組の収録にも協力的だったし…意外とこういうのが好きなのかもしれない。
    そういえば、彼女は501の記録係なんだった。


    「時間かかりそうだし、編集は新しい基地に着いてからかねぇ。
     今日のところは、明日に備えて寝ないとな。 んじゃ、おつかれー」

    「サーニャ、エイラ、おやすみー」

    「2人とも、邪魔したな」


    消灯時間が来る前に、3人は自分の部屋へと戻って行った。


    「結局、今夜も占いはできなかッたナ」

    「でも、最後の夜を賑やかに過ごせて、よかったじゃない」

    「最近は私たちもラジオの収録してなかッたしな。
     なんか懐かしい感じがしたカモ」

    「二人でラジオ、またやりたいね」

    「ウン」


210 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2013/01/08(火) 19:46:34.99 ID:MT4Gm/Pk0


    それから、私もエイラの部屋を出て、自室に戻ってきた。

    カーテンをそっと開き、しばらくの間、空を眺める。
    たとえどこに居ても、夜空を見上げれば、星は輝いている。
    モスクワでも…ウィーンでも…ブリタニアでも…
    ロマーニャでも…ペテルブルグでも…ガリアでも…
    ブリュッセルでも…それは同じ。
    だからきっと、大丈夫。

    私は星空をまぶたに焼き付けてから、ベッドの中にもぐり込んだ。


    『…今朝は…エイラとハイデマリーさんと…朝食を食べたっけ…』

    『…エイラが占いで変なこと言ってたけど…』

    『…ハイデマリーさんは…退役後、どうするのかな…』

    『…昼はハルトマンさんの部屋の片づけを手伝ったけど…』

    『…部屋にあるもの、誰かから貰ったものがほとんどだったな…』

    『…みんなに好かれて…ハルトマンさん自身も、みんなとの絆を大切にしてるんだ…』

    『…夜は、シャーリーさんとルッキーニちゃんと夕食を食べて…』

    『…そのまま一緒に、エイラやバルクホルン大尉と一緒にラジオの収録…』

    『…なんだか、すごいラジオだったけど…ちゃんと放送されるのかな…』


    『…一週間…短かったけど…色んな…思い出…が………』


    Zzzzz


    ・

    ・・・

    ・・・・・・・

    ・・・・・・・・・・・・

    ・・・・・・・・・・・・・・・・


211 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2013/01/10(木) 21:32:04.49 ID:4O1yUp6Y0

    ・・・・・・・・・・・・・・・・・

    ・・・・・・・・・・・

    ・・・・・・・

    ・・・

    ・


    パチン、と電気のスイッチを入れたように、スッと目が覚めた。
    寝起きの悪い私にしては珍しく、すっきりとした気分で朝を迎える。
    ようやく、夜型体質の癖が体から抜けてきたのかもしれない。
    今日になってようやく、というのが悲しいけれど。

    着替えて顔を洗い、身支度を整えた後、
    部屋を出る前に、
    今までお世話になった感謝をこめて、少し掃除をしておく。
    寝覚めがいいと、体も調子よく動いて気持ちがいい。

    それから私は、起床ラッパが鳴るのを待ってから、食堂に向かった。


212 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2013/01/10(木) 21:32:55.23 ID:4O1yUp6Y0

    「先日告知していた通り、本日をもって、
     私たち第501統合戦闘航空団は、ブリュッセル基地に所属変更となります。
     10:00に迎えの車が来ることになっているので、遅れずに集合してください」


    朝食の前に、全員の前でミーナ中佐が改めて説明をする。
    転属に慣れている501のみんなは、落ち着いた様子だった。
    ハルトマンさんも、今朝は珍しくちゃんと起きて話を聞いていた。
    昨日のうちに部屋が片付いたおかげで、よく眠れたのかも。
    私が見ているのに気がつくと、にっこりと明るい笑顔を向けてくれる。


    「昨日はありがとね、さーにゃん。
     余裕のある朝って、いいもんだねぇ」


    そう言って気持ち良さそうに背伸びをする。
    窓から差し込む朝の光をその背に受けて、髪の毛に天使の輪が浮かんだ。

    ハルトマンさんは、本当に不思議な人だと思う。
    軍服を脱いで、普通の服を着て歩いていたら、
    彼女が世界一のスーパーエースだなんて、誰も気づかないに違いない。
    話していても、やっぱりどこかとらえどころのない、風のような人で、
    私も、ハルトマンさんのことを、まだ深くは理解できていないのかもしれない。

    ハルトマンさんは、私が悩んでいるときに、いつもさりげなく相談に乗ってくれた。
    でも…逆に、彼女が悩んでいるところを見たことは、
    出会ってから今に至るまで、一度もなかった。
    いつか、私がハルトマンさんの悩みを聞いてあげられるように、なれるといいな。

    じっと見つめられているのを不思議に思ったのか、
    ハルトマンさんが首をかしげる。
    私は、なんでもないと微笑みで返した。

    ハルトマンさんは、誰よりも仲間のことを大切に考える人。
    私にも、そのことはわかっているから。
    今は、それで十分だと思った。


213 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2013/01/10(木) 21:34:05.40 ID:4O1yUp6Y0

    「今回は、あれがない、これがないと、出発前に慌てずに済んだな。
     毎回こうだとありがたいんだが…」

    「うーん、毎回さーにゃんに掃除手伝ってもらうのは、さすがの私も気がひけるなー」

    「散らかる前に、日頃から部屋を整理しろと言ってるんだ!」


    バルクホルン大尉は、今日もいつも通りに怒っている。
    ハルトマンさんも、いつも通りに聞こえない振りをしていた。
    見慣れた日常の光景。

    バルクホルン大尉は、ハルトマンさんに対して特に厳しいけど、
    それはきっと、ハルトマンさんを気にかけていることの表れなのかもしれない。
    心なしか、彼女を叱っている時が一番活き活きしているようにも見える。

    クリスさんが、まだ意識を取り戻す前…
    その頃の大尉のことを、私は怖い人だと思っていた。
    あの頃の大尉は、ネウロイと戦うことしか考えていなかったように見えたから。

    …規律に厳しいのは、今もそうだけど…
    料理を作ったり、シャーリーさんたちとラジオを収録したり。
    昔の大尉からは、考えられなかったことだった。

    ここ一週間は、戦い以外の話をする機会も多かったから。
    これからも、もっと色んな話ができたらいいな。


    「ほらほら、二人とも。
     もうみんな、朝食を終えて出て行ったわよ」


    ミーナ中佐の言う通り、食堂には私たち4人だけになっていた。
    テーブルのお皿も、すっかり綺麗になっている。


    「む、そうか。 我々も引き上げるとしよう」

    「もー、トゥルーデのお説教は長いんだから」


    ハルトマンさんとバルクホルン大尉は、
    お互いに文句を言い合いながらも、2人並んで食堂を出て行った。


214 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2013/01/10(木) 21:34:38.75 ID:4O1yUp6Y0

    「サーニャさんも、基地の人たちに挨拶してきたら?」

    「はい」


    私が立ち上がると、中佐は少し声のトーンを落として言葉を続けた。


    「…カールスラントは、激戦区だから…きっと今まで以上に厳しい戦いになるわ。
     ナイトウィッチのサーニャさんの負担も重くなるかもしれないけど…よろしくね」


    カールスラントの開放は、ミーナ中佐にとっても悲願。
    さらに坂本少佐がいないことで、表情には出さないけれど、
    今まで以上に隊長としての責任を感じているようだった。

    ミーナ中佐は、客観的に見ても飛びぬけて有能な人だから、
    そのせいで、なんでも一人で背負い込んでしまうところがある。
    その上で、大抵のことはなんとかしてしまうから、
    私たちもついつい頼りすぎてしまう。

    だけど、そんな隊長だって神様じゃない。 私たちと同じ人間だ。
    少しでも、彼女の抱えている重荷を一緒に背負ってあげたい。
    彼女の役に立ちたい、と思う。
    きっとそれは、私だけじゃなくて、501の全員が考えていること。


    「私たち、みんなでカールスラントを取り戻しましょう」


    それが、いつも隊員みんなのことを見守ってくれている、
    私たちの隊長にできる私たちの恩返し。


    「…ありがとう、サーニャさん」


217 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2013/01/12(土) 16:45:48.80 ID:W9stppPu0


    ミーナ中佐と別れて、先に食堂から出てきた。
    他のみんなは、基地の人たちに挨拶したり、出発の最終準備中みたい。
    私も、ここを発つまでの短い間に、基地を見て回ることにした。



    ………



    談話室。
    基地の中は、501のみんなが駆け回っていることもあって、
    にわかにざわついていたけれど、ここは落ち着いた空気が漂っている。
    部屋には、坂本少佐と服部さんの二人だけが、向かい合って座っていた。


    「あっ、リトヴャク中尉」

    「サーニャ。 どうしたんだ? こんな所に」

    「出発までに、お世話になった人たちに挨拶をしている所で…」

    「そうか。 …まあ、少し休んで行ったらどうだ?
     せっかくだ、サーニャにも扶桑のほうじ茶をたてよう」


    特に疲れてはいなかったけど、少佐の厚意を受けて、
    少し二人とも話していこうかな。
    少佐は扶桑に一度戻ると言っていたから、少しの間お別れになりそうだし…
    私は、服部さんに断ってから、その隣に座った。
    姿勢良く座っていた彼女の背筋が、更に伸びる。


218 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2013/01/12(土) 16:47:03.02 ID:W9stppPu0

    「…服部さん、そんなに気を遣わないで」

    「は…はっ!」


    この基地に来てから、服部さんとは最後まで話す機会が作れなかった。
    やっぱり、彼女とは少し距離があるようで、寂しい。


    「私やペリーヌからも、言っているんだがなあ。
     服部のこの生真面目さは、なかなか手ごわくて敵わん」


    坂本少佐が、苦笑しながらも私に琥珀色のお茶を出してくれる。
    口をつけてみると、香ばしくて飲みやすくて…
    確かに、疲れが取れそうな味だった。


    「お、恐れ入ります」

    「…やれやれ。
     どうも、兵学校では501のことを、少々大げさに伝聞されたようでな。
     我々のことを、戦鬼のように誤解しているらしい」

    「い、いいえ!
     私は、実際に501の方々の凄さをこの目で見ています!
     それに、リトヴャク中尉は、先日も中型を7機撃墜されたとか…
     大げさな伝説などではないと思います!」


    …実際には、私は一機も撃墜していなかったんだけど。
    やっぱり、どこか誤解されてる…


    「501の隊員が、世界でもトップクラスの空戦技術を持っているのは確かだがな。
     私が言っているのは、変に萎縮することが礼儀ではない、ということだ」

    「は、はい…」

    「あの、服部さん。
     私のことは、サーニャって呼んでください。
     みんな、そう呼んでくれてるし…扶桑の人には、リトヴャクだと発音しにくいと思うから」

    「えっ!? で、ですが…」

    「服部、本人がこう言っているんだ。 断る方が無礼というものだぞ」

    「…わかりました、サーニャ中尉。
     私のことも、服部でも静夏でも、好きにお呼びください」

    「じゃあ…静夏ちゃん」

    「っ…」

    「はっはっは! まだまだだが、少しは固さがとれたぞ、服部。
     必ずしも呼び方で信頼関係が変わるというわけではないが、な」


    確かに。
    ルッキーニちゃんなんかは、響きが可愛いからだと思うけど、
    遠慮しているわけでもなく、みんなルッキーニって呼ぶし。
    でも、やっぱり私はサーニャって呼ばれるのが一番自然に感じる。
    私の本名は "アレクサンドラ" だけど…
    お父様もお母様も、小さい頃からずっとサーニャって呼んでくれていたから。


219 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2013/01/12(土) 16:47:37.49 ID:W9stppPu0

    「サーニャ、もう一杯飲んでいくか?」


    お茶碗が空になっているのを見て、少佐がおかわりを勧めてくれる。
    だけど、時計の針は無常にも進んでいて、
    思っていた以上に話し込んでしまっていたことを示していた。


    「ありがとうございます。 でも、そろそろ行かなきゃ」

    「そうか、挨拶回りの途中だったな。
     引き止めたようで、すまなかった」

    「いえ…坂本少佐、ごちそうさまでした」

    「我々は、一度扶桑に戻ることになるから、少しの間お別れだ」

    「我々…ってことは、静夏ちゃんも?」

    「はい。 宮藤さんの随行任務は変則的に完了していたので、
     本来は、すぐに戻らなくてはいけなかったんですが…」


    やっとお話できたのに、これでお別れなんて…


    「なあに、きっとすぐにまた会えるさ。
     服部とも、私ともな」


    しんみりとした空気を吹き飛ばすように、坂本少佐が明るく言い放つ。
    彼女の言葉には、いつも言葉を越えた説得力がある。

    飛べなくなっても。 ウィッチじゃなくなっても。
    坂本少佐は、501にとって、いつまでも頼りになる存在だった。

    ここで別れても…
    私たちが、絶体絶命のピンチに陥った時。
    坂本少佐が、いつもの笑い声と共に、颯爽と助けに来てくれる。
    エイラじゃないけど、そんな未来が、はっきりと見えた気がする。

    だから、私は二人と笑ってお別れすることにした。


220 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2013/01/13(日) 23:35:42.69 ID:a99nOtGg0


    それから、ハンガーに向けて足を運ぶ。
    短い間だったけど、ディジョン基地まで長距離飛行をしたり、
    ストライカーの調整でとてもお世話になったから、お礼を言いに行かなきゃ。



    ………



    ハンガーには、なにやら人だかりができていた。
    なんだろうと思って近づいてみると、その中心には見慣れた顔がふたつ。


    「よぉ、サーニャ。 どうしたんだ?」

    「…えっと…お世話になった人たちに、お礼を…」


    シャーリーさんが私に声をかけると、彼女を囲んでいた整備兵が一斉に私の方を向く。
    みんな温和な表情をしていたけど、数が数なので、ちょっと怖い。


    「サーニャ、こっちこっち!」


    ルッキーニちゃんが人垣を割って、私を中に引っ張り込んだ。
    背の高い男の人たちに囲まれると、やっぱり落ち着かない気持ちになる。


    「あの、一体…」

    「いやぁ、丁度よかった。
     あたしらも、色々と迷惑をかけたお詫びに来たとこなんだよ」


    …私は、お詫びじゃなくてお礼に来たんだけど…


    「で、昨日のラジオの話になったんだけどさ。
     こいつらが聞きたいっていうから、編集まだだけど、テープを持ってきたんだよ」

    「サーニャもいっしょにきこー!」


    ミーナ中佐に許可は取ったのかしら…
    まあ、昨日の内容なら、大丈夫…かな?
    バルクホルン大尉の協力もあって、そこまで問題発言はなかったと思うし…


221 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2013/01/13(日) 23:37:33.65 ID:a99nOtGg0

    「ちょっと音小さいけど、ボリューム最大にすればなんとかなるだろ」

    「ぷれーばっく!」


    ルッキーニちゃんが再生ボタンを押すと、
    『しまフワぱふダナアワー』が流れ出した。
    周囲から拍手が上がり、口笛が響く。

    …ラジオの収録は慣れてるけど、
    こうやって目の前でリスナーの反応を見る機会は、あまりなかった。
    なんだか、そわそわして落ち着かない気持ち…

    でも、みんな一様に聞き入って、番組を楽しんでくれているみたい。
    私たちが何か言うたびに、笑ったり、笑ったり、笑ったり、笑ったりして、反応してくれる。
    …思い返してみると、番組の内容には真面目な要素がほとんどなかったような…


    『ヒック...ウゥ...サーニャァ...』


    ふいにスピーカーから聞こえてくる、エイラのすすり泣きの声。
    …これは確か、3番目のおたよりで、エイラが突然泣き出してしまった時のもの…
    マイクが、声を拾っていたらしい。
    …と、さっきまでワイワイと賑やかだったハンガーの中が、唐突に静まり返る。
    さらに、あたりを見回すと、視線が私に集中していた。
    シャーリーさんとルッキーニちゃんも、ニヤニヤしながら私を見ている。


    「…ほう」「はぁ…」「なるほど…」「…ふぅ」「よし…」

    「…?」

    「な?」


    困惑する私を尻目に、シャーリーさんがみんなに向かって満面の笑顔で親指を立てる。
    すると、今まででとは比較にならないほどの、割れんばかりの拍手と歓声があがった。


    「…あの…シャーリーさん…一体何が…」

    「サーニャ、キミは最高の仕事をした。 そういうことさ」

    「ぐっじょーぶ!」


    …どういうことか、さっぱり意味はわからなかったけど、
    シャーリーさんたちは、それ以上何も語ることはなかった。


222 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2013/01/13(日) 23:38:28.42 ID:a99nOtGg0


    番組のテスト公開が盛況に終わって、
    シャーリーさんとルッキーニちゃんはその反響に興奮していた。


    「いやあ、大好評だったなぁ!
     こりゃ、レギュラー番組化も夢じゃないぞ!」


    シャーリーさん…
    彼女は、基本的に陽気で社交的な性格だけど、
    シビアな物の考え方もできるし、その上で一歩退いた位置から仲間との協調も考えられる。
    私と、2つしか違わないというのが信じられないくらい、とても大人な人だと思う。

    だけど、ルッキーニちゃんと一緒の時は、そのクールさが薄れてしまうらしい。
    最初の頃は、彼女に合わせてあげているのかと思ったけど…
    二人ではしゃいでいるあの姿は、どう見ても作り物には見えなかった。


    「でも、あたしの早口、だれもあててくれなかったなー」


    ルッキーニちゃん…
    自由奔放で、時々問題を起こすこともあるけど、
    誰に対しても自然体で接することのできる、素敵な才能の持ち主。

    誰にでも、普段は人に見せない裏の顔があるものだけど…
    彼女に限っては、裏も表もありはしない。
    いつだって思ったことをそのまま口にし、行動に移すことができる。
    だからこそ、彼女は誰からも愛される存在になっているんだと思う。

    501のムードメーカーの二人。
    彼女たちがいれば、私たちははどんな時、どんな場所だって、
    明るさを失わずにいられるような気がする。


223 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2013/01/16(水) 01:18:19.87 ID:cCUd03Ja0

    「シャーリー、今何時?」

    「んー、と…
     出発まで、あと1時間くらいだな」


    もうそんな時間になってたんだ…


    「あの、私…」

    「ん? もしかして、他にも行く場所があるのか?」


    察しのいいシャーリーさんは、
    私が説明するまでもなく事情をくんでくれる。


    「そっか。 じゃ、急いで行ってきなよ」

    「またあとでね、サーニャ!」


    基地に滞在している間、お世話になった人は他にもいる。
    もうあんまり時間がない…
    私はシャーリーさんたちに手を振ると、早足でその場を後にした。



    ………



    兵舎に立ち寄った帰り。
    並んで歩いていた芳佳ちゃん、リーネさん、ペリーヌさんと鉢合わせた。
    私と同じように、基地を見て回っている所だったみたい。


    「…花の種を?」

    「うん。 ペリーヌさんが、シャトーから持ってきてたから…
     この基地にも、花を植えたらどうかって、みんなに渡してきたの」

    「まあ、サン・トロン基地の回りには、緑地帯もありますし?
     せっかくのリーネさんのアイディアですから」


    そういえばロマーニャ基地にいた時にも、
    二人は、立派な花壇を作っていたっけ。

    それに、リーネさんは…
    ネウロイによって焼き払われたガリアを空から見て、
    心を痛めていたのかもしれない。

    リーネさん。
    彼女は、とても穏やかで、家庭的で…
    私が言うのもなんだけど…戦いには不向きな性格をしていると思う。

    そんな彼女が軍に入ったのは、
    ブリタニア撤退戦で故郷を追われ、傷ついた人々の姿を見て、
    そんな人たちを守りたいと思ったからだって…前に話してくれたことがある。

    だからこそ、彼女はペリーヌさんを放っておけず、
    ガリアの復興にも進んで協力しているんだって。

    そういえば、リーネさんとは、最近顔を合わせる機会が多かったけど…
    二人きりで話したことはなかった気がする。
    人付き合いのいい彼女は、いつも誰かと一緒にいるから…
    でも、話しやすい人だし、そのうち機会を作ってお話してみたいな。

 
224 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2013/01/16(水) 01:20:01.60 ID:cCUd03Ja0

    「でも、ほんとによかったの?
     私たちとブリュッセルに来ても」

    「あら、宮藤さん。
     私が一緒に行くのが、そんなにご不満かしら?」

    「えええっ!? そんなこと言ってるつもりじゃ…」

    「冗談ですわ。
     …私も、今回のことは色々と考えて決めたことです」


    疑問に皮肉で返され、慌てる芳佳ちゃん。
    だけど、私もそれは不思議に感じていた。
    昇進を固辞してまでガリアの復興にこだわっていたペリーヌさん。
    そんな彼女が、今回のネウロイの攻撃を目の当たりにして、
    何のためらいもなくガリアを離れるなんてできるはずがない。


    「確かに、いつまたガリアが危険に晒されるか、心配はあります。
     でもね…私はこれでも、501の皆さんには、感謝しているんですのよ。
     自分の国が開放されたからと言って、助けられた恩も忘れて他国の危機には目を背ける。
     そんなことをすれば、クロステルマン家の…いえ、ガリア国民の名折れというものですわ」

    「ペリーヌさん…」


    気丈に振舞ってはいるけど…
    悩みぬいた末に出した答えに違いなかった。
    彼女の境遇と、背負う物の重さを知っている私たちは、何も言えなくなる。


    「…それに、坂本少佐が第一線を退かれた今。
     その大きな穴を埋めるには、あなた方だけでは役者不足というものです」

    「ふふ、そうですね。 501には、ペリーヌさんがいないと」


    ペリーヌさんが、照れたように言って歩き出すと、
    リーネさんが微笑んで、その背中を追いかける。

    彼女のことが、少しわかったような気がした。
    故郷を人一倍大切にする彼女だけど…
    同じくらいに、501のことも大切にしているんだって。

    ペリーヌさんとは、なかなかお話できなかったけれど、
    次からはもう少し、上手に話せそう…
    そう思った。


225 : ◆DGmY9eMi.E [sage saga]:2013/01/16(水) 01:20:38.34 ID:cCUd03Ja0


    ペリーヌさんたちの後を追いかけようとした私は、
    芳佳ちゃんがついてきていないことに気がついて振り向いた。
    彼女は、立ち止まって自分の両手を見つめている。


    「芳佳ちゃん?」

    私が声をかけると、ふっと我に返り、
    きょろきょろ首と目を動かす。

    「あ、あれ?
     リーネちゃんとペリーヌさん…先に行っちゃったの?」

    ペリーヌさんの話に思うところがあったのか、どこか上の空だった。

    「…どうかした?」

    「う、ううん。
     ただ…ブリュッセルには、坂本さん居ないんだなって…」


    芳佳ちゃん…
    今、魔力が安定していないって、坂本少佐が言っていた。
    また、突然飛べなくなったら…魔力を失ったら…
    やっぱり、そんな不安を抱えているのかな。
    私が、彼女にしてあげられることなんて、無いかもしれないけど…


    「芳佳ちゃん、前にした約束、覚えてる?」

    「…約束…?」

    「オラーシャの料理、教えてあげるって。
     新しい基地に着いたら、一緒に作ろう?
     それで、リーネさんやペリーヌさん。
     シャーリーさん、ルッキーニちゃん…
     ミーナ中佐、バルクホルン大尉、ハルトマンさん、エイラ。
     みんなに食べてもらおう?
     …いつか、遅れてやってきた、坂本少佐にも」

    「サーニャちゃん…」


    <<芳佳ちゃーん! どうしたのー?>>

    <<サーニャさんも! 集合の時間に遅れますわよ!>>


    私たちを心配した二人が、行った道を引き返して戻ってくる。

    芳佳ちゃんには、501のみんながついてるから。
    だから、きっと大丈夫。


    「行こう、芳佳ちゃん」

    「…うん。 ありがとう、サーニャちゃん」


227 : ◆DGmY9eMi.E :2013/01/18(金) 22:36:10.99 ID:2/kKnoux0


    基地の表口には、既に迎えのトラックが到着していて、
    みんなもほとんど集まって手荷物を積み上げているところだった。
    ミーナ中佐が確認作業を済ませ、最後の手続きを進めている。

    いよいよ出発…
    私は、改めてサン・トロン基地を振り返る。
    見上げても、てっぺんが見えないほど、高い高い防壁。
    そこには、至るところに無骨な速射砲がいくつも空を睨みつけていて、
    外部からの侵入を一切許さない、威圧的な表情を見せている。
    …最初に来た時は、あまりにも物々しい様相で、少し怖かったっけ。
    今では、もう顔なじみになってしまったけれど。


    「…サーニャさん!」


    呼ぶ声に、見上げていた視線を下げると、
    そこには、強くなり始めた朝の日差しに照らし出される、月のような影。


    「ハイデマリーさん」

    「…お見送りに…来ちゃいました」


    時計は、ちょうど10時を指している。
    ナイトウィッチは、普通なら熟睡しているはずの時間だった。
    無理をして、来てくれたんだろう。
    私が微笑むと、ハイデマリーさんは少し頬を赤くした。


    それから、彼女は何を言うでもなく、ただじっと私のことを見つめていた。
    私の方からも、口にする言葉はない。
    お互いに、何を言いたいのかはわかっていたし、
    それを声に出すと、余計に寂しくなりそうだったから。


    「……………」

    「……………」


    見つめあう私たち。
    そこに音もなく、たとえていうならひょっこりと、
    誰かが顔を割り込ませてくる。


228 : ◆DGmY9eMi.E :2013/01/18(金) 22:37:46.15 ID:2/kKnoux0

    「…何をお見合いしとるんじゃ、おぬしら」


    時代がかった古めかしい口調に、まぶしいほどの鮮やかなブロンド。
    忘れようもない。 彼女は…


    「ウィトゲンシュタイン少佐…なぜここに?」

    「先日のネウロイとの交戦の件で、ロザリー少佐に叱られたのでな。
     世話をかけたサン・トロン基地に、こうやってわらわ自ら挨拶に参ったのよ。
     そこで、 〝たまたま” 501の連中がここを離れると聞いたので、
     〝ついでに” 見送りでもしてやろうかと思ったのじゃ」


    ミーナ中佐が頭を抱えているってことは、やっぱり今回も独断での訪問らしい。
    でも、少し話しただけだけど…
    彼女は、悪意や裏を含んで行動する人じゃないって確信している。
    きっと純粋に私たちを見送るために来てくれたんだって。
    そう思うと、少しうれしかった。


    「…ありがとうございます、ウィトゲンシュタイン少佐」

    「…うむ、サーニャよ。
     別れる前に、おぬしに一つ、言っておきたいことがある」

    「…?」

    「その、ウィトゲンシュタイン少佐という呼び方はよせ。
     …ハインリーケでよい。
     今言っておかぬと、永遠にその堅苦しい呼び方をされそうなのでな」
     
    「…わかりました、ハインリーケさん」

    「おぬしもじゃ、ハイデマリー!
     同じ軍、同じ階級で、わらわだけが名前で呼びつけておるなど、えらく感じが悪いではないか!」

    「えっ!? は、はい…
     わかりました…ハインリーケ…少佐」

    「少佐もいらん!」

    「…ハインリーケ…さん…」

    「うむ!」


    満足そうな表情をするハインリーケさんに、
    困った表情のハイデマリーさん。
    二人のやりとりを見ていると、自然と私の口から笑い声がこぼれた。


    「…サーニャさん?」

    「何を笑っておるのじゃ。 おかしな奴じゃの」


    不思議そうな顔をする二人を見て、古い記憶がよみがえる。
    あれは、いつのことだっけ…


    『―――その、ユーティライネン少尉ッて呼び方、やめろよナ!
     階級下なのに、私の方だけが呼び捨てにしてたら、おかしいだろ!』

    『え…えっと…エイラ、少尉…?』

    『モー! 少尉もイラナイ!』

    『う、うん………エイラ…』

    『ウン! それでイイ!』


229 : ◆DGmY9eMi.E :2013/01/18(金) 22:38:14.24 ID:2/kKnoux0

    「サーニャさん、そろそろいいかしら?」


    短い夢から覚めたように。
    ミーナ中佐の声で、我に返る。
    もう、私以外はみんなトラックに乗り込んでしまったようだった。


    「すみません、引き留めてしまったみたいですね」

    「ガリアの空は、任せておけ。
     …その代わり、おぬしらが不甲斐ないようなら、我々もそちらに飛んでいくからな」


    ハインリーケさんの言葉に頷くと、私もトラックに乗り込む。


    「サーニャさん!
     …また…また、会いましょう!」


    窓から顔を出すと、ハイデマリーさんたちのほかにも、
    坂本少佐や静夏ちゃん、サン・トロン基地の人たちが見送ってくれていた。
    私は、彼女たちに向かって大きく手を振る。

    私だけじゃなく、トラックに乗っていたみんなが、窓から顔を出し、手を振っていた。
    エンジンがかかり、その姿が少しずつ、どんどん遠ざかっていく。
    巨大なサン・トロン基地が、ぐんぐん小さくなっていく。
    私たちは、基地が完全に見えなくなるまで、それをずっと見つめていた。


230 : ◆DGmY9eMi.E :2013/01/20(日) 01:20:44.34 ID:5Vas7Jar0


    基地を離れ、でこぼこ道を行く車の中には、
    しばらくガタゴトいう音だけが静かに響いていた。

    でも、それも束の間のことで、
    やがて退屈したルッキーニちゃんが窓から抜け出そうとしてバルクホルン大尉に怒られていたり、
    シャーリーさんとトランプをしていたリーネさんが車酔いしてしまったり、
    ハルトマンさんがミーナ中佐の膝で眠り始めたり。
    みんな、すぐに切り替えて普段通りの顔を取り戻していた。

    私は、ペリーヌさんにちょっかいを出していたエイラをたしなめて、その隣に座る。


    「ツンツンメガネも少しは大人になったかと思ッたケド、まだまだだナ」

    「もう… ?良い垣根は良い隣人を作る? …リベリオンの言葉よ」

    「それよりサーニャ。 この1週間、どうだッた?」

    「うん…長いような、短いような、不思議な1週間だったわ」


    いろんなことがあって、普段よりも、1日1日がずっと長かった気がする。
    その中で、たくさんの人と話したけど、なかなかみんなとは話せなくて…
    そう考えると、やっぱりこの7日間は、あっという間だったんだと思う。

    サン・トロン基地でしかできないこともあった。
    ハイデマリーさんとは、いっぱいお話できたし…彼女を通して、新しいお友達もできた。
    芳佳ちゃんたちと、ほかの基地の慰問に出かけたのも、大切な思い出。

    でも…
    誰かに料理を作ってあげたり、悩み事を聞いてもらったり。
    逆に相談されたり、何かを手伝ったり、将来の夢を話し合ったり…
    それはきっと ?普段できないこと? なんかじゃなかった。

    私は、ナイトウィッチだから。
    いつも、みんなと違う生活をしているから、みんなと仲良くなれない。
    …そんな風に考えて、どこか自分から、距離を作ってしまっていたのかもしれない。


    「エイラは、神様って、いると思う?」

    「エッ? …ウーン、あんまり考えたことないや」

    「私も」

    「なんだよソレ」

    「うん…でもね、あの基地にいる間…
     どこからか、暖かい声が聞こえた気がしたの」


    迷った時、誰かに声をかけるのをためらった時。
    私を励まして、導いてくれた、優しい声があったような気がする。


    「イタズラ好きのトントでも、隠れてたのかもナ」

    「ふふ、そうかも」


    今は、もう聞こえなくなってしまったけど…
    その声に背中を押してもらわなくても、私はきっと大丈夫。


231 : ◆DGmY9eMi.E :2013/01/20(日) 01:21:15.11 ID:5Vas7Jar0


    エイラが、何気なくごそごそとポーチを探り、タロットを取り出す。
    彼女にとっては、これは癖のようなものだ。


    「何を占うの?」

    「ン…昨日、一昨日と、タロット触ッてなかったから…なんとなく。
     そうだな、カールスラントを取り戻せるかどうか、占ッてみようか」

    『エイッ!』 と、あまりやる気の感じられない気合と共に、エイラはカードを引く。
    その手に握られていたのは…

    「やっぱりなァ…曖昧な "運命"
     あんまり先のコトを占おうとすると、いつもコレになるんだ」


    未来はあらかじめ決まっている、と言った人がいる。
    すべては運命によって定められていて、誰にもそれを変えることはできない、と。
    …だけど、エイラにだって、遠い未来のことはわからない。
    他の誰にだって、わからないだろう。
    それなら、定められた運命なんて、どこにもありはしないんじゃないかって、私は思う。
    つまりは…


    「私たち次第、ってことかも」

    「そうかもナ」


    エイラは、嘆息してカードを片付け始めた。
    私は、その横顔をぼんやりと見つめる。
    いつだって、私のそばにいてくれたエイラの横顔。


    「ねえ、エイラ」

    「ン?」

    「これからも、ずっと私と一緒にいてくれる?」


    自分でもよくわからないうちに、そんな言葉がこぼれていた。

    大切な仲間と一緒に過ごす時間。
    それをどれだけ愛おしんでいても、いずれは過ぎて行く。

    遠ざかっていくハイデマリーさんやハインリーケさん、
    坂本少佐、静夏ちゃんの顔が、脳裏をよぎる。

    ちょっぴりだけ、不安になったのかな。


    「モ、モ、モ、モチロンだ!
     サーニャが望むなら、私は10年先だッて、100年先だッて、1000年先だッて!
     私はサーニャと一緒にいる!」


    エイラは、真っ赤になりながら、大声で叫ぶ。

    遠い未来のことなんて、わからない。
    だけど、タロットカードが、約束された運命を示してくれなくても。
    私には、エイラのその言葉があれば、十分だった。


232 : ◆DGmY9eMi.E :2013/01/20(日) 01:21:53.02 ID:5Vas7Jar0

    「さすがに1000年後までは生きていられんだろう」

    「墓の中まで一緒、ってことじゃないのか?」

    「うっわぁ」

    「お、オマエラー!」


    シャーリーさんとハルトマンさんに突かれて、
    エイラは両腕を振り回すものの、二人に華麗にかわされる。


    「ちょっと、エイラさん! 車の中で暴れないで…フラウとシャーリーさんも!」

    「まぁまぁ、ミーナ。 一緒にトランプでもやろーよ!」

    「…エイラ。 落ち着いて…私たちも、混ぜてもらいましょう?」

    「ぐぬぬぬ…こーなッたら、トランプでボコボコにしてやるかんナ!」

    「エイラさん、ゲームで未来予知は反則でしてよ!」

    「リーネも、もっかいやろー!」

    「…私は、ダメ…助けて、芳佳ちゃん…」

    「り、リーネちゃん…治癒魔法でも、さすがに車酔いは治せないよ…」


    芳佳ちゃん、リーネさん、シャーリーさん、ルッキーニちゃん。
    ハルトマンさん、バルクホルン大尉、ミーナ中佐、ペリーヌさん。

    彼女たちにも、彼女たちの人生がある。
    いつか、別れの時が来るのかもしれない。
    でも…だからこそ、今のこの時間を大切にしなきゃ。



    傾き始めた太陽の隣に、気の早い月がもう顔を出している。
    そんな明るい空の下、穏やかな草原を貫く一本の道を、一台の大型トラックが走り抜けていった。
    やたらと賑やかで、楽しげな声を響かせながら。



    【おわり】



233 : ◆DGmY9eMi.E :2013/01/20(日) 01:37:00.68 ID:5Vas7Jar0

    というわけで、終了です。
    ここでSS書いたの初めてだったんで、投稿関係でも色々と失敗してたし、
    本文でも、自分で目を疑いたくなるようなミスが散見されてたけど、
    それでもレスしてくれた人。
    安価踏んでくれた人。
    そして読んでくれた人。
    本当にありがとう。

    あと、余計なことだとは思うけど、念のため補足。
    このSSで名前が出たウィッチは、全員公式に設定が存在します。
    …が、性格とか口調とか、はっきりしない人が多かったんで、
    特にセダン基地、ディジョン基地の人たちは名前が同じだけの別人になってると思います…
    ファンの人たち、申し訳ない。
    …まあ、501のウィッチたちもほぼ私見で書いてるから同じか。


234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/20(日) 01:51:02.71 ID:1hqWDhz1o

    うおおおおお乙!
    サーニャが目的を達せて良かった

    >>234
    安価踏んでくれた人たちのおかげで、割とまんべんなく絡めた…かな?
    ペリーヌ、静夏ちゃん辺りともうちょっと仲良くさせてあげたかったのが心残り…



235 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/20(日) 05:42:45.23 ID:icF2tAPu0

    乙です 新基地編を書いてくれても良いのよ というか書くと良いよ


236 :名無しNIPPER [sage]:2013/01/20(日) 14:13:00.56 ID:2LzAsJnSO

    乙です 一気に読ませてもらいました。 凄く面白かったです。 続きも待ってます


    >>235.236
    続きになるかどうかはともかく、そのうちまたストライクウィッチーズ関係で書きたいと思ってます。
    でもサーニャ書くの難しいから、別のキャラになるかも…
    俺の乏しい語彙の中から、サーニャが使いそうにない汚い表現を除いていくと、ボキャブラリーが悲惨なことになるんだよ!



237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/20(日) 16:41:59.27 ID:VHpkTnsUo

    面白かった
    昔書いたSSあれば教えてください


    >>237
    昔書いてたのは、別作品のSSだったし、
    そもそもだいぶ前なんでどっか行っちゃったんだ…ごめん。


238 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/20(日) 17:57:17.46 ID:/hd87upbo

    乙、面白かった


    >>238
    ありがとう!
    自己満足で書いたSSだけど、感想もらうと、やっぱ読んでもらってこそ書く意味があるなぁと感じた。

    サーニャっていうと、ほとんどの場合エイラとセットであることを求められてると思う。
    俺も好きなコンビだし。
    でも、サーニャもたびたび他の隊員と話したいって言ってる割にそういう話少ないんで、
    ニッチだと思いつつもこのSSを書きました。
    つたない文章だったけど、読んでくれた人たち、もう一度ありがとう。
    いつかまたどこかで!




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この記事へのコメント

-名無しの三等兵 - 2013年03月29日 01:52:49

姫様あああああああああああ

-名無しの三等兵 - 2013年03月29日 03:26:47

久々にまじめにSS読んだ
面白かった、でもなく感動した、でもなく・・・
なんだか言葉に表しにくい爽やかさを感じる、いい文章だ

-名無しの三等兵 - 2013年03月29日 07:54:26

ドラマCD化希望

-名無しの三等兵 - 2013年03月29日 10:04:10

素晴らしい
キャラ崩壊しないでここまで書けるのは凄い

-名無しの三等兵 - 2013年03月29日 11:57:10

素晴らしいの一言に尽きる

-名無しの三等兵 - 2013年03月29日 14:25:51

テーブルトークRPG的で面白かった

-名無しの三等兵 - 2013年03月30日 18:47:01

すごくすごいです!
とても楽しかったです、感謝!!

-名無しの三等兵 - 2013年04月01日 07:02:42

素敵だなぁ

-名無しの三等兵 - 2013年04月07日 04:32:42

長かったけどこんな時間にも関わらず一気に読破してしまった

-名無しの三等兵 - 2013年04月09日 19:21:33

読み応えがあって良かった。これからも書き続けてほしいね。

とりあえず、小説で宮藤はサーニャにボルシチ作ってもらってた

-名無しの三等兵 - 2013年04月29日 02:29:56

素晴らしい
SSでこれだけのボリュームが読めるとは思わなかった
作者に敬礼(^-^ゞ

-名無しの三等兵 - 2013年05月27日 20:57:17

すごく読んでいて楽しかったです。
ありがとう!

-名無しの三等兵 - 2014年04月16日 05:23:42

これはすごいわ
安価スレも完成度を高めるとゲームブックやTRPGのようになるんだな

-名無しの三等兵 - 2014年10月03日 12:37:48

すげーものを読ませてもらった。感謝!

-名無しの三等兵 - 2014年11月01日 22:54:19

傑作なんダナ

-名無しの三等兵 - 2015年06月24日 01:02:21

愛があるなー!
素晴らしいものを見た。

なんぼう先生より空戦描写うまいジャナイカァ

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